第31話 魔導の叡智を持つ者
「さて、それじゃあ。何魔法からやっていく?」
俺は属性魔法の魔力を練りながら、ハギの意見を聞く。
ちなみに人類の持つ魔力はそれぞれに『属性』が決まっており、俺の場合は『闇属性』の魔法が得意だ。
まあそれ意外の魔法も使えるけど。
「え? ん~そうだなぁ……」
「決められないなら俺の得意魔法だけどんどんやっていくけど。その後はハギの得意魔法ってことで」
「それじゃあ、それで」
「オーケー、それじゃあ始めよう」
俺は自分の一番得意な魔法――闇属性魔法を使う。
ちなみに、俺が最も得意なのは、闇属性魔法の古代魔法、『呪術魔法』が得意だ。
「いくぞ【動くな】」
俺は闇属性魔法の『奥義』と言っても過言ではない魔法を猪 (的なやつ)使う。
ちなみに、この猪 (みたいなやつ)は、そこら辺で捕ってきたものだ。
近代の闇属性魔法は、『召喚魔法』といわれている。
しかし、『召喚魔法』は『闇属性魔法』からの派生魔法だ。
まあ、『闇属性魔法』が使えれば基礎の『従魔召喚』は出来るからな。そこで『闇属性魔法』と間違えられているんだろう。
ま、関係ない話はさておき。
俺が使った魔法は、名を付けるとすれば『呪言』だ。
この魔法は、『言葉』を聞いた者、物をその言葉通りにする魔法。
例えば俺が『眠れ』と猪に言えば猪は眠る。
強力な分、魔力を精密操作出来ないと味方も『呪言』の餌食になる。
まあ、俺はソロなんで。そもそも『呪言』使うほどピンチになったことねぇし。
…………どれだけいっても『呪い』ってよりは『毒』って感じだな。
「ふぅ~、これが『闇属性魔法』の『真髄』だ」
「何………? 今のは………」
ハギもぽかーんとしている。
まあ、そうもなりますよね。猪 (的なやつ)が急に止まってしまったのだから。
……ま、まあ、今のハギなら簡単に出来る……よ?
「まあ、さっきのは俺の得意な魔法だ。………『闇魔法』は使えるようになったろ?」
「うん。できるけど……絶対にいざというときにしか使わない」
あ、ヤベ、ちょっとやりすぎた。
決心しているハギをみて、俺はそう思った。
………フォローしないと。
「あれは本当に極端な使い方だから、普通に覚えておけ。全て教えるから」
一応フォロー(?)をした俺は『闇属性魔法』の派生魔法や『闇魔法』の上位魔法等を教えた。
ちなみに『呪言』は闇属性最上位魔法に位置する古代魔法だったりする。
「さて、次はハギの得意魔法なんだが……大丈夫か?」
「全然大丈夫じゃないよ……」
「それじゃあ、少し休憩にするか」
俺は『異空間収納』からティーセットを取りだし、カップに紅茶を注ぐ。
それをテーブル (これも『異空間収納』から取り出した)のハギのところへ置き俺は一口紅茶を飲んだ。
一応、超希少茶葉 (家の異空間内で育てている)を使った紅茶だ。
結構うまい。
「………何これ、おいしい」
「まあな、これも家の中で育てたものだぞ」
「……ここの家、十分自給自足できるよね」
「……確かに」
どうしてこんな便利にしちゃったの? 過去の俺。
まあ、感謝してますけど。
「ふぅ、なんかもう面倒だから全魔法の魔力を付与した『魔力石』やるからそれで鍛練してくれ」
「ええ!? それじゃあ私の得意魔法は?」
「それはやるが……それ以外結構面倒くさくてな」
「ふーん…」
「な、なんだよ」
なんか、ハギが呆れたような目をこちらに向ける。
紅茶飲んだら、なんかもういっか、って感じになってな。
「それじゃあ、私が『魔導の叡智』習得したら、なにか1つお願い聞いて?」
「ん? できる範囲でならいいぞ」
「やった。それじゃあがんばる!」
「お~、それじゃあ、ハギの得意な――っていうか、吸血鬼の得意な液体操作系の魔法を教えるぞ。最初は危険な奴から」
俺はもう一匹猪? を呼ぶ。
もちろん、生きている奴だぜ?
「そんじゃあやるぞ………『水神』」
途端、周囲に魔力の暴風が吹く。
そして魔力が水となり、猪をも飲み込む蛇となる。
………ま、蛇なのは俺の個人的想像ね。ほら、蛇も水もなんでも飲み込むじゃん?
魔法はすぐに終わり、猪のいた場所には何もない。
猪の肉の一欠片も、大地もない。
「よし……まあ、これ使える奴なんてこの世界にいないしハギ、お前も使えないだろ」
「うん……って言うか、使いたくないね。えげつないし………魔力凄い消費してるし」
流石だ。まさか魔力の消費量がわかるなんて。
まあ、この魔法は俺以外の人間使えないけど。
それになぁ………最終的にああなったのは、俺の想像故なんだ。
まさに一番大事なのは想像力。そして知識は二番目に大事。
「それじゃ、普通の魔法いくぞ」
「………なんかケイの魔法は普通も何も無いと思うけど………」
………少々正論かもしれない。
だけど、次は普通の魔法だよ?
「………まあいい、行くぞ『ウォーターカッター』」
俺は復元した大地に普通の水の刃を飛ばす。
『ウォーターカッター』の当たった地面は、綺麗に真っ二つになった。
「まあ、こんな感じだ」
「…………私、『叡智』スキル習得止めようかな」
そんな事言うな。頑張れ、若者よ。
――そんな弱音を吐いた数日後、ハギが『魔導の叡智』を習得した。