第295話 第三学年一学期10 ハギ視点
「それじゃあ、お姉ちゃんが巡回経路を案内してあげるわね♪」
とても楽しそうなエルヴェさんと肩を並べて私たちは巡回路を行く……手を繋ぎながら。それも私だけ。
ヒヨリちゃんは繋いでいない。救援を求めても苦笑を返されるのみ。味方がいなくて辛い。
これ絶対子ども扱いされてるよね……エルフとかドワーフとかの半妖精さんって子供大好きって聞くし。
そりゃあ背はちっこいし時折間違われるけどさ……と内心でぼやいている間もエルヴェさんの説明は続く。
「巡回路は別段決まっているわけじゃないけど、絶対に回らないといけない場所はいくつかあるから、そこに行きましょう」
「行く順番は決まってないんですか?」
「いい質問ね~。そういうのは特にないわ。だから」
「「?」」
商会のエントランスで突然エルヴェさんはヒヨリちゃんの手も取る。そして魔力が動く気配。
「うわぁ!」
「ふふふ。いい反応ね~」
「……」
体が重力に逆らって浮き、二階の通路に着地する。
さっきのって……精霊魔法かな? 風属性の。
「──こうして、近道する子もいるわ」
あんまりやらないでね? と私の顔を覗き込んでウインクをするエルヴェさん。やりたくても出来ないと思うなぁ。壊したらヤバそうな物多いし。
それから二階の隅にある外階段に続く非常用の出入り口に行き、そこから外へ。先程の外階段の出入り口が回しないといけない場所と後から教わった。もう地図見ればよくないかな? そして私はずっと手を繋がれてるんだけどどうして?
外は裏口や草木の生い茂っている場所は慎重に巡回することを教わって、いつの間にか辺りが暗くなっていた。
「あら、もうそろそろお開きの時間ねぇ」
じゃあそろそろ待機室に戻りましょうか。とエルヴェさんは私の手を引いて待機室に向かう。
だからどうしてなのさ! ヒヨリちゃんも笑ってるし。
「あ、エルヴェさんとハギさん、ヒヨリさん。丁度よかった」
その道中、アドレルさんと遭遇。その手には二枚のカード。
それぞれが私とヒヨリちゃんの前に差し出された。
「これが警備員であることを証明するカードです。紛失しても再発行は出来ますが。有料なので気を付けてください」
「「はい」」
「あと、もう一つやらなければいけない事があるので、待機室に行きましょうか」
エルヴェさん、アドレルさんと共に待機室に入ると、先程はいなかった他の警備員さんがいたので挨拶。何故か私だけ頭を撫でられた。解せぬ。
私とヒヨリちゃんがアドレルさんに促されて適当な席に座ると、目の前に紙が置かれた。
内容は──見る前にアドレルさんが話し始めた。
「今日エルヴェさんと回ってもらった巡回経路は口外禁止です。流石にないとは思いますが、防犯上の観点から、規則として『契約魔法』でそれに関する旨を承諾してもらうことになっています」
「紙に魔力を流してね。それで契約は完了よ」
しっかりしてるんだなぁ。と思いながら書かれた言葉を読み込む。
不審な点はないので魔力を流す。
この契約が終わった解散になった。何故か皆私を送ろうとしたのは……これここに来る間はずっとされるのかな。
ちなみにアドレルさんにも手を繋がれた。凄い嬉しそうだったけど、完璧に子ども扱いされてると確信した。それも幼児。
私は学生だぁぁ!
エルヴェに私の推しの姿が重なる不思議……ド○テアさん。