第293話 第三学年一学期8
「ほー、暴れたのな」
「全然暴れてなくない? 魔法も使えなかったし、正直まだ怒ってるし」
「少なくとも魔力は暴走してるぞ」
まあ言葉遊びと言われればそれまでだが。
学園から帰って来たハギはすぐに俺とライアに今日の決闘のことを話してくれた。木剣対魔剣……まあ相手さんも何とも大人気ないこって。
ハギはその返事でいいのか「それもそっか」と納得した様子で次の話題を俺に振った。
「それで、あの魔剣の銘とかわかる?」
「予知系の能力を持つ魔剣か? あるとは思うぞ?」
「名前は?」
「知るもんか。俺は魔剣名鑑じゃねーの」
つーか武器なんて世にごまんと溢れてるからな。剣はその中でも使用者が多いし、魔剣は出土することもあれば造られることもある。全てを把握するのは無理に等しいだろう。まあ魔剣や聖剣は模倣された武器なので、何を元ネタにしてるか割れればタネも割れるのだが。
「ですがよくやりましたね。流石は私とマスターの弟子です」
「だな。そんで、傭兵としての仕事は? 誰と組むんだ?」
「ヒヨリちゃん! 明日から一緒に護衛任務を受けるの」
「どこの?」
「えーっと、パルヴァ商会だったと思う」
「ほー、頑張ってな」
「うん!」
ハギは楽しみなのか明るい笑顔で返事をした。
にしてもパルヴァ商会か……すげぇな。人族領最大と名高い商会の護衛とか。学生にやらせていいのかはさておき、働ききったら胸張って自慢できるレベルの場所じゃん。
「パルヴァ商会ですか……でしたら、護衛のついでに少し買い物を頼んでもいいですか?」
「うん。何買うの?」
「それはですね……」
ライアは喋りながらメモを書いていく。その表情は笑み。しかし三日月のような笑みだ。買うものが洗剤だったりシャンプーだったりするのでたぶんハギ関連だと思われる。
……関わらないようにしないとな。
「ケイは何かいる物ある?」
「これと言ってないな……あったら言うわ」
「わかったー」
じゃあ着替えて来るねーとハギは応接間を出た。ライアはその後ろ姿を笑みを浮かべたまま眺めている。
「……何企んでんだ?」
「ハギが美容に興味ないので無理矢理持ってもらおうかと」
「金しかださんぞ」
「ハギのモチベーション維持のための感想もお願いします」
「言われなくてもやるよ」
やれる間はな。
それにしてもだ。成長したな。ハギ。
「これなら、そろそろ吸血鬼としてのスキルを習得させられるか?」
「いい頃合いかと」
ライアは同意を返してくる。
まあ、教え始めるにしても週末からかね。ライアは俺の意を汲んで車椅子を押して応接間を出た。
魔剣の元ネタ、あります。即興で考えたモノですが (お陰で後の話の方向が確定しましたよ。やったね)。
次回予告としましてはパルヴァ商会でハギと日由が護衛やります。そして今章限りかもしれない姉を名乗る者が出る予定。どれくらい出るかは未定。全ては次の次の次くらいの話でライアがどう反応するか次第。