第286話 第三学年一学期 ハギ視点
「行ってきまーす!」
およそ二週間ぶりに制服に袖を通して、同じく二週間ぶりに登校する。
だけどいつもとは違って、私の近くには車椅子はない。
「行ってらー」
「行ってらっしゃい」
ケイはそれが日常であるかのように、寝間着姿でライアお姉ちゃんの隣で私を見送る。
違和感しかないけど……うじうじしてても仕方ないと、学校に向かう。
「おはようハギさん」
「おはようタクヤさん。ツユちゃん、ヒヨリちゃん」
「おはようハギちゃん」
「おはよー……何か違和感あるね」
途中、ケイと同郷のタクヤさん達と合流する。
ケイがいないことに違和感はあるようで、ヒヨリちゃんは早速そんなことを言った。
「啓がいないからなぁ……」
「卒業……したんですよね」
「まあ、魔法が使えないのに通っても、ってところはあるだろうしね……」
「……」
どこか暗い、はっきりと言うなら御通夜ムードのまま、私たちは歩を進める。
今になって気づいたけど、いつも率先して喋って、場を和ませていたのはタクヤさんとケイだった。いつもしょうもない、またやってるよ位にしか思わなかった雑談だけど、こうしてなくなると大切だったんだなぁと気付いた。
「それにしても遂に三年か……後一年もしたら卒業だってよ」
「結構濃い生活だったわねぇ」
「話振った俺が言うのもあれだけど、まだ後一年あるからな? 振り返るにゃ少し早いからな?」
「濃くしてたのってケイかタクヤさんだったような……」
「ねー。今年は何をしてくれるのかしら……って、確か啓さんが拓哉の制御をしてたよね?」
「あ……」
「ま、まあ、今年からは啓さんが抜けた分、もしかしたらサーシャさんが入るかもしれないから……」
ツユちゃんがフォロー? をするように、新しいクラスメイトに期待をする。
そうだよね。ケイが抜けたわけだし、Bクラスから補充がされるんだよね……後は成績によって入れ替え。
入れ替えに関しては、成績もいい方だから大丈夫だと思うけど、本当に来てくれないかなぁ。
「でもサーシャさんが来たら、タクヤさんがケイの役目に回りそうだよね」
「「あー」」
「『あー』ってそこ同意すんなよ!? てかハギさんも滅多なこと言わないでくれ!?」
現実になったらどうすんの!? とタクヤさん自身も滅多なことを言っているような気がしたけど、気にしないことにして私達は三年生のAクラスの教室に入る。
クラス分けに関しては変更がある人にだけ事前に通達があるらしいから、今のところ私達には関係ないだろう。
「――げ」
「え? ……あ」
「んー? おお」
「噂をすれば……だっけ?」
三人の目線の先の人物――サーシャさんを見て、ふとケイから習った諺を思い出した。
何書こうか迷った挙句、新学期をスタートさせた。
サブタイ見て主人公通ってないやん。とか言うたらあきまへんえ?