第284話 第二学年三学期22
春は出会いと別れの季節。
いや、時系列的に言えば別れと出会いの順番ではあるが、どうも語呂の良さというもので『出会いと別れ』と表現するのがこっちの世界でも主流になってしまった。地球のは知らん。
「卒業式かぁ……」
「来年はハギも卒業生側か……」
「だねぇ……」
ハギに押されて、学園から校門までの道をゆっくりと進む。
ふと景色に目を向ければ、学園内に一本だけ咲いている桜の木の花が五分咲きくらいを迎えていた。
天気もいいし、こんな日に卒業できる生徒は中々に爽快な気分だろう。
「──で、なんでケイは卒業生側にいたの?」
「そりゃお前、卒業するからだろ」
──俺もまた、学園を卒業することになった側なわけだが。
経緯を話そう。
色々あって女神様に大半の魔力とスキルを封印された俺は、満足に魔法を使うことが出来なくなった。これでは学園にいる必要もないだろう。というかいるだけ無駄だろう。ならば卒業して余生を謳歌するか──というわけではなく、普通に卒業を勧められた。
曰く、『残り少ない人生だ。学園ではなく家族と過ごしたらどうか』と。
俺は『魔素飽和症』患者ということで通っているから、この判断は生徒に寄り添った素晴らしい判断だと思う。しかし俺の家は俺が主人として契約しているし、家族も――今のところ法律で定められた『家族』はハギくらい。それも師弟制度っていうアレなので家系図には乗らないような家族なのだが……それはさておき。
一通りの説明をすると、後方から鋭い視線が突き刺さる感覚がした。
「いや、何故」
「そりゃお前……魔法を使えない奴がこの学校通ってても意味ないじゃん?」
「確かに」
そこは否定してくれよ……まあ俺も聞かれたら否定しないからいいけど。
「でもどうして卒業? 普通そこは退学なんじゃないの?」
「卒業は卒業でも高等学校卒業資格だからな。普通の」
「他にも卒業資格ってあるの?」
「魔法学校にゃ『魔法学校卒業資格』ってのがある。これを持ってる人は国から魔法師と認められてるぞ」
「へぇ……」
興味なさげだなぁ。取るの大変なのに。まあその苦労は来年度から経験してもらおう。俺は関係なし。
丁度会話が途切れたところで、俺とハギは校門を出た。
俺はハギに頼んで腹を学校の方角へと向ける。
「もう二度とこの敷居を跨がないと考えるとちょっと嬉しさがこみあげてくるな」
「それケイが学校嫌いなだけだよね?」
「そうとも言う」
そんな軽口もこれくらいにして、俺は心身を引き締めて、校舎に向かって頭を深々と下げた。
「二年間お世話になりました!」
丁度卒業の時期と被った件。この異世界には杉花粉なる畜生がないの羨ましいなぁ……後はヒロイン卒業させるだけ。
あ、私も高校卒業してきました。来年度から貧乏大学生。民俗学頑張ります。
没設定公開 (大雑把) 卒業後の啓、教師として勧誘される。──もとの粗筋にあったけど何か病気出てきたので没になった設定。まあ大筋は変わらないから大丈夫。ガバガバ設定は無駄に対応力ありますね。