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100回目の転生で精霊になりました  作者: 束白心吏
第四章 精霊達の青春………?
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第268話 第二学年三学期6

 この世界にだって時計はある。

 地球にあるような長針、短針、秒針のある時計は普及こそしていないものの、大きな街であれば所々に設置してあり、希少ではあるが腕時計とて存在する。

 そして時計の技術はこちらで独自な進化を遂げており、装着者の魔力を常にほんの少しだけ徴収できれば無限に稼働する時計なんてものもある。無論、地球で言うところの『自動巻き』のような時計もある。複雑機構も一部ないものがあったりするがある。どれも高いけどな。

 そういった時計だが、俺自身が興味ないこともあってか持っている数は少ない。持っているものも時間を合わせるのが面倒だからと、転生してからは一切手をつけていない。

 そもそも時間にはルーズな世界だ。俺も結構ルーズな人間だし、まず気にしないのが着けない理由だ。

 そんな時計を贈る、贈られることは滅多にない。それこそ貴族であれば話は別であろうが、侯爵以上でなければそれも出来ない。故に庶民の間では『時計を贈ることは人生をその人に捧げるのと同義』何て言葉もある。

 だから──


「ケイ。これ、今年のバレンタイン!」

「お、おお……ありがとな」


 ──バレンタインの朝、ガラスケースなんて貴重な物の中に木製のベルト台座にかけられた腕時計を貰ったとき、俺はハギの金銭感覚とセンスに関心した。

 いいと思う。バレンタインに贈る物のセンスとしては最高なんじゃないかと思う。そう評するに値する。自動巻き時計ってところも評価高い。

 けど懸念があるとすれば……時計って高いのよ。余裕で金貨100枚とか吹っ飛ぶの。まあ安けりゃ3枚くらいで買えるかもしれないがな? そして見るにこれは新品……それも絶対に高いやつ。値段聞いたらクーリングオフしたくなるレベルだと思うから聞かないけど、確実に金貨100枚は超えてるやつだとわかる。

 何も考えないようにしながら、俺は応接間の出入り口の真上に掛けられている魔法で常に正確な時間を教えてくれている時計をみながら時刻を調整し、装着する。


「あ、動いた」

「自動巻きだからなぁ……そりゃ着けてりゃ勝手に動き出すだろ」

「ケイがまだ生きてる証拠だね!」

「……」


 あんま嬉しそうに言われると、ちょっと反応に困るな。てかまだ一年は余裕で生きるつもりだし不吉なこと言わないでくれないか?

 こんな高い贈り物をされて、そんなこと言われたら……さすがに勘違いしちまう。


「酷い言いようだなぁ……」

「けど、先が短いのも事実でしょ」

「否定できねぇ……から、さ」


 俺はハギと正面から向き合う。

 正直、逃げていたことに何ら事前の準備もなく向き合うのは苦しい。しかしながらこれだけは、言わなければならないと思った。


「この時計は、お前の『予約』ってことでいいのか? 俺の死を看取るまでは共にいるという……それとも、俺と残りの時間を共に在りたいという『告白』か?」

「……!」


 ハギの表情に驚きが浮かぶ。

 時計を贈るということはプロポーズと同義でさえある。誰が言い始めたかは知らないが、それがこの世の風潮であるのだ。

 故にハギの贈り物には『死を看取る』や『貴方と時間を共にしたい』という意味が含まれる……まあ前者の意味は死ぬ寸前の親しい人に贈る際の言葉にしない約束なのだが。


「うん。私はケイと同じ時間を過ごしたい。出来るなら、ケイのこれからの時間を全て欲しい……そして、私のこれからの時間を貰ってほしいな」

「……」


 正直、唖然とした。まさかここまでハギが俺に好意を抱いているとは思ってもみなかった。てか接し方も師弟や友人、それに似ていて、まさか()()()()()()を抱いてくれているとは夢にも思わなかったのだ。

 俺が無言であることで心配になったのか、ハギは赤い瞳を潤ませ、少し頬を赤くして俺を見る。


「へ、返答聞かせてもらってもいいかな……」

「──」


 不覚にも、ハギの言動にドキリと一つ心臓が大きくはねた。

 下世話な話になるが、ハギは客観的に見ても美少女だ。クラスでも結構人気だし、何より将来性が高い。勇者である拓哉達といるからこそ若干『高嶺の花』な位置に入りかけているが、逆を言えば『高嶺の花』に慣れるくらいの顔面偏差値はしているのだ。

 そんな美少女であるハギの半泣き顔……正直言えば性癖に刺さる。そして同時に良心を抉る。ここで答えを出さないと傷つけるだろうと不思議と確信を持てる。


「……先、短いぞ」

「! 別に大丈夫だよ」

「…………今のままのが、別れた時のダメージは小さいぞ」

「それでも、ケイと付き合わないでいて後悔するよりはマシだと思うんだ」

「………………負けたよ」


 ハギを突き放すような直接的な言葉は言えなかった。

 俺の様子にハギは目を輝かせる。言わなくてもわかっているだろうに……。


「俺の残りの時間全て……ハギの為に捧げさせてくれ」

「……はいっ!」


 差し出した右手をハギは嬉しそうに返事をして取った。そしてそのまま抱き着いてくる。

 あー、車椅子が衝撃でどんどん後ろに下がっていってる。壁にぶつかるとかやめてくれよ……なんて思考しても、女性特有――なのか変に意識してしまっているのかはわからない――の柑橘系の香りが鼻孔をくすぐり無駄にドギマギさせてくる。


「やったー! やっとケイと恋人関係になれたー……」

「……そんな喜ぶことか?」

「喜ぶよ! 何年片想いしてたと思ってるのさ」

「3年くらいとか?」

「……」


 ハギが無言になる。顔が近くにあるので、頬も膨れているのもよく見えて面白い。

 違うか? まあ自惚れすぎだよな。じゃあ……


「……2年前?」

「……」

「1年」

「……」

「まさか……1カ月前?」

「そんな短くないよもっと長いよ!?」


 そうかー……じゃあネタ枠だけど。


「前世からとか?」

「!!」


 ハギの表情に明確な変化があった。目を大きく見開き口元を綻ばせたのだ。


「正解!」

「マジか……」


 全く気付かなかった。いやしかし、そう言われると心当たりがあるような気がしなくもない。


「ちなみにパパが私とケイを結婚させたのも私がお願いしたからなんだよね」

「マジか……」


 もうマジかしか言えねぇ……え、俺あれ政略結婚的な何かかと思ってたわ。

 ハギは更に続ける。


「あの時も嬉しかったけど無理矢理感強かったから、こうして『自分の意思で』ケイと付き合えるのって凄く嬉しい!」

「……さよけ」


 俺は嬉しそうに胸元に顔を埋めるハギの黒髪を撫でながら、自身の対人関係スキルの無さに驚きを通り越して呆れた。


 ──そんな訳で、俺達は付き合うことになった。

 自分でもなんでこんな急展開になったのかわからないけど自分の中の何かが「こうしろ(強制)」と言ったのでこうなりました。遅れてすんません。

 とりあえずな言い訳

 ・コンバンワしてた

 ・小説読んでた

 ・ゲームやってた

 アーテリーギ○、運営がアレだから文句はないですけどブラックサー○ナイトと設定似てますね。

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