第27話 精霊、○○になる。2
「わー、知らない天井だー(棒)」
あれ? ……確か俺は書庫で寝落ちしてしまったはずなのだが…………なぜかどっかで見たことのある景色の場所にいた。
『……やっと目覚めたわね』
「…………」
うんごめん。知っている知ってた知っていた。それにもう聞き慣れた聞きたくない声がしたので、俺は声の聞こえた方向と正反対の方向へ走った。
『あ!? ちょっと! 待ちなさいよ!』
……どうやら、悪夢を見ているようです。
早く夢から覚めてくれませんかねぇ?
■■■■
よ~く知ってる見慣れた場所を走ること数秒、女神 (自称)の魔法に捕まりました。
やっぱ神様に逆らうのは良くない。うん。それが例え悪魔的な性格をしていても――
「うわっ、危ね!」
棍棒が投げられてきた。
それも脚狙ってきたよ。えげつねぇ。
俺は少し顔を上げる。
そこには怖い顔した女神様が直々に君臨なさっておいでだった。
『さ~て、なんで呼ばれたかわかるかな?』
女神 (自称)は、背中からドス黒いオーラを放ちながら話しかけてきた。
そして両手に装備されている禍々しくて刺々しいその武器がそのオーラをまた……ね?
「さ、さぁ? な、何の事だかワ、ワカラナイデスネェ」
渾身の作り笑顔をしながら、俺は何のことだか分からないと告げる。
……女神 (自称)の顔が天使のような笑みを作っていた。しかし、武器も一緒に構えたから一切見惚れることはないけどな。
『あっそ、じゃあ………』
「え? ちょっ! それ、ヤバい奴!」
俺の疑問を無視して、女神 (自称)は鈍器を持って、大きく振りかぶる。確実に俺を殺そうとしている。
…………っていうか、この神『女神』じゃなくね? もう悪魔でよくね? 紛らわしい。
「ちょ! あ、あの! 本当にそれはヤメテ! 死んじゃうから!」
『ああ? 夢の中だ。死にゃあせんよ………ただ起きた時に体がバラバラになっているだけさ』
「殺害宣告!?」
ああ、女神(自称)の口調が、どんどんおかしくなっていく。……俺、本当になにかしたか?
ってか、夢の中なんだ。この世界。
でも逃げますよ? 確証はないんだし。
「え~と………何か創っちゃいけない魔法創っちゃいました?」
『ああ、それだったらこんな所に呼び出しゃあしねぇよ。消すよ』
その言葉と一緒に、鈍器による一撃が来た。
うわ! 雷纏わせていやがった。この神雷は司ってないでしょ!? なんで使えるんだよ! あ、創造の神様だからか。納得。
「うお! ………あ、危ねぇ……」
『チッ……避けやがって………次は外さねぇ…』
な、なんか、女神(自称)が、物騒な事言っているのですが!? っていうかどんどん凶暴化してますよね?
「え? ち、違う!? そ、それじゃあ……『精霊』なのに、人間の『身体』を入手しちゃった事ですか?」
その言葉を言った瞬間、女神サマの動きが止まった。
……あ、あれ? 正解したのかな? 俺、生きてる?
『………ああ、そうだよ。お前さんが自分の『死体』に憑依した事で、通常の『精霊』じゃなくなったのさ』
「え? それは一体……どういう事ですか?」
意味が分からない。
俺が『精霊』じゃあないって?
『つまり、あんたは『精霊』から『何かのような化け物』になりそうになっているの』
「は? どういう事だ? 『精霊』の中にも、人間の身体に憑依する事もあるだろ?」
文献には、『精霊』は人間の死体等に憑依し――等と書いてある物もあり、それなら俺、自分の死体に憑依しよう。って事になって憑依しただけなのに『何かような化け物』? 一体どうすれば……。
『確かに、人間に憑依する精霊もいるわ。でも、アンタの憑依した死体は元々は自分の物だったでしょ。それが原因で、『精霊』としての魔力と『人間』としての魔力が混ざりあって、変質――『化け物』みたいな魔力になったのよ』
「それじゃあ、『ステータス』がおかしくなったのも?」
『ええ、あなたが『化け物』に近い存在になってしまったせいでおかしくなったのでしょう』
へ~、そうなんだー。
まあ基本的に身体をもっている精霊なんて怨念とか執念とかを溜めに溜めた『悪霊』だけだからな。
俺は怨念ないしセーフには……なるかな?
「それじゃあ、俺はこれからどうなるんだ? もしかして……死、とか?」
俺は俺がこれからどうにされるのかだけが気になっている。
何事もなくお疲れさま早く帰れはない。絶対に。
『死にゃあしないわよ。ただ、その『精霊』の『霊体』と『人間』の『霊体』を完全に『混ぜる』わ』
「混ぜる?」
『そう、今のアンタの状態は、『精霊』としての『霊体』と『人間』としての『霊体』が分かれて1つの身体に入っている状態なの。
このままだと、いつかアンタはこの世界と一緒に消えてしまう。
そうならない用にする為にここにアンタを呼んだの』
「へぇ~。あんた、やっぱ優しいな」
『優しいんじゃないわ。アンタに『幸せ』になってほしいだけ』
この女神はいつもそうだった。
根は優しいくせに、いつもそれを隠している。
最初会った時も――。
あ、あれ?
「そういえばさ。俺の記憶が曖昧なのはなんで?」
よく思い出せない。
初めて女神と会った時が……。
思い出そうとすると、頭が揺れる感覚に陥る。
『それはね、アンタの脳が壊れないように、私が思いだせないようにしてるだけ。
あとは保存ね。貴方の記憶は『記憶倉庫』っていう別次元の空間に多結晶体として数個に分けて保存してあるわ。
アンタの力だったらそこへ行かなくても、うまく思い出せるはずよ』
「ふ~ん。それじゃあ、その『霊体』? を混ぜられたらどうなるんだ?」
『う~ん。そうねぇ……まあ『神』にでもなりなさい。説明面倒だからあとで『神』についての『情報』でも直接送るわ。それでいい?』
「うん。俺も面倒なのは聞きたくない。それと、もうひとつ」
『ん? 何? 面倒な事じゃなければ何でもいいわよ』
……なんか、変な所似てるよなぁ。等と思いながら、俺は最後の質問を言った。
「俺の血、ハギが吸っても大丈夫?」
今の俺の最大の疑問だった。