第261話 第二学年冬季休暇9
試行錯誤すること数回。ハギは『錬成魔法』を物凄い勢いで成長させていく。それは鍛冶の得意なドワーフでさえ舌を巻くような速さで。
「――おいケイ。ありゃ、新種のドワーフか? 正直『神子』と呼んでても違和感覚えねえぞオイ」
「前世から『魔法』に対してすごい才能を持っていた天才だよ。正真正銘のな」
横で見ているギロティにそう返しながら、俺はほぼ完成したといって言いくらいの錬成武器を見る。
……寧ろ買った武器のが品質的には下じゃないかと思うくらいには完成してるんだよな。
「ケイ! これはどお?」
「……打ち込んでこい」
俺の言葉を待ってましたと言わんばかりにハギは勢いよく突っ込んでくる。これ、俺が病人ってこと忘れてないか? まあ意識されるよりかはマシだけれど。
「あ、壊れなかった。成功だね!」
「おう。お疲れさん」
「疲れてないけどね」
若者特有のタフさを見せつけるようにそう笑顔で言ったハギは再び『錬成』を再開する。
今度は見本も取り出さず、槍を作ろうとしているらしい。握る部分を目を瞑ってすごい速度で作っていく。
「……おいケイ」
「なんだ?」
普段より重たい口調のギロティに思わず視線を向けると、ギロティは険しい目線でハギを見ていた。
「ありゃ、なんだ」
「弟子だよ」
「んなこたぁわかってる。あの成長速度だよ。ありゃあ俺、何を見せられているんだ?」
視線の先では、ハギが本物の槍と創った槍を魔力を流して解析し、満足する作りだったのか、剣と槍をいくつも創っていた。
早い。いくらなんでも――それこそ俺の目から見ても――早すぎる。前世から先天的センスとか、これまで鍛えられてきた発想力が実を結んだのかもしれないが、それらを抜きにしても早い。
たぶん、俺が見てきた中でも、一番。
「浪漫への挑戦――だな」
「……才能の無駄遣いってやつか」
「そうとも言う……けど、お前の言いたいこともわかるよ」
俺は振り回されながらも創った剣を空中に浮かせて遊んでいるハギを見ながら言う。
まだまだ二本しか創れず、操作も拙いが……初日でこれだけできれば、ハギが思い浮かべた――というか俺と拓哉で浪漫があると熱く語った――戦術。f〇teの王の財〇を再現できるのではないかと予想している。
ちなみにその話、ライアにもしたことあるんだけど『非効率的ですね』と一蹴されてる。隣で聞いていたハギが目を輝かしたからか、ため息をついて一言『この師匠にしてこの弟子あり』と小声で呆れていた。
「お前の中では何位くらいなんだ?」
「最上位。魔法だけを見れば過去最高だな」
「……あの『賢者』や伝承で語られる『聖女』を超えるのか」
「そりゃな。まず素質からしてハギのが圧倒的に上だからな。それでいて怠ける気配がない」
「人間の弱点を全て克服してるじゃねぇか」
「ハギは人間じゃないからな」
「それもそう――って、そういやハギの嬢ちゃんの種族ってのは何なんだ?」
「本人に聞け」
俺はハギの師匠ではあるが、プライバシーを勝手に開示していい訳じゃないからな。
ギロティは俺からは聞き出せないと悟って、それでも知りたいという好奇心に負けたのか模擬線上に入る。ドワーフで鍛冶師としての腕も確かなギロティだ。色々参考になる意見をしてやれるだろう……たぶん。理論派だし。
「……今日、夕飯には帰れるかね?」
ちょっと心配になってきたが、まあハギも楽しそうだし、そうそう出来ない体験をしているのだからゆっくりさせようと、俺は思考を放棄した。
※試験的にPCで執筆&投稿してるので違和感などがあるかと思いますがご了承ください。
スマホで読んでpcで書く&投稿。来年から (勉強に)使う予定の運用も兼ねているんですけど、思いのほか態勢で四苦八苦させられました。胡坐だと書くのは楽だけど腰が痛くなって正座だと小一時間はそのままだから足がしびれて……胡坐で背筋伸ばせばいいだけじゃね? これを機に鍛えますか。
冗談はさておき。これからは執筆をpc。修正と投稿をスマホといった感じで使っていきたいとは思ってます。今回はpcで投稿までしてしまいましたが、割とマジで限界……書く速度は断然pcなんですけど、アクセスもたぶんスマホが多かったので一回スマホ版で確認してから更新することに次回からはします。まあスマホでも書きますけど。