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100回目の転生で精霊になりました  作者: 束白心吏
第四章 精霊達の青春………?
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第251話 第二学年二学期 ハロウィン

 子供たちが小道具を用いて人外に化け、町中の家からお菓子を奪う風習が、地球のアメリカや日本におけるハロウィンである。本来はケルト人の文化で1年の終わりの日──秋の終わりの日で冬の始まりの日──で、死者の霊が家族を訪ねてくる日らしい。他には魔女や妖精なども現れるらしいが、俺は詳しく知らない。

 しかし本来は仮装するのではなく、仮面をつけて魔女や悪魔といったモノから逃れるものであるということだけは、拓哉から毎年聞かされていたので覚えてしまった。

 そんなハロウィンだが、冬を迎えるお祭りとして、この世界にもある。ただ内容は地球のモノとは大きく異なっており、『冬を乗り切る』ための祭りとなっており、ハロウィンというより季節外れの夏祭りという方が表現的には合っているのだろう。

 まあつまるところ──


「だから、年中仮装パーティーしてる奴らは仮装も何もなくね?」

「俺の『勇者(これ)』職業ですけど!?」

「私吸血鬼だし?」

「……いや仮面で妥協しろよ」


 わざわざ自室から応接間へと連れ出された俺の目の前には、耳を尖らせてエルフの仮装をしているらしい拓哉と、わざわざ本物の耳を隠してまでイヌミミというカチューシャを付けてさらに装着者の魔力の高まりで動く無駄に高性能な犬の尻尾型魔道具を着けたハギがいる。簡潔に言えばコスプレを見せつけてられているのだ。

 そもそもハロウィンという言葉自体この世界にはない。地球でハロウィンと呼ばれる日に相当する今日は『秋終初冬』と呼ばれる。

 ……まあ、個人的に『収集諸島』と呼んでたりするが。


「確かに『仮装した子供にお菓子を配る』行事ではあるが、ぶっちゃけお前ら年齢考えろよ」

「「ぐふっ……」」

「うわぁ……」


 倒れ伏す二人に若干引き気味なのは、意外にも秋終初冬に乗り気でない園部である。


「な、なんだ日由……言いたいことがあるなら言ってくれ」

「いやー、いい歳してまだ子供気分なのか、と」

「がはっ!」


 まさかの死体撃ちしたよ……最近の子マジで怖いな。

 なお五十嵐もいるが彼女は苦笑するだけて何か言うつもりはなさそうだ。ライアはライアでハギの写真を大量に撮ってて若干引かれているが。


「ほら、露も言ってやんなよ」

「えぇっ!? あ、そ、その……」


 突然振られて動揺しながらも五十嵐は言葉を紡ぐ。



「黒髪にエルフ耳は似合わないかな……って」

「ぐはぁ!」

「あ、でもハギちゃんのイヌミミは可愛いよ!」

「本当!」

「扱いのさよ……」


 無念なり拓哉……出来れば復活してくれ。

 魔道具の尻尾を結構な勢いで振るハギと燃え尽きかけてる拓哉が並んでる姿に笑いを堪えていると、横からライアが耳打ちしてきた。


「(マスター、ハギの衣装はどうです?)」

「似合ってるな」

「(……もしやそれだけとは言いませんよね?)」

「……」


 まあ……似合ってる以上に思ってることもある。

 しかしそれを言うのは何か恥ずいし、謎の敗北感があるので言わない。たぶん意地だろうなぁ……面倒くせぇな。人間。


「言っておけば後悔も軽いと思いますよ?」

「言ったほうが後悔するから言わねぇよ」

「……そうですか」


 そうですよ。

 さて、俺はそろそろ自室に戻るか──と車椅子を動かそうとした時、ハギがトコトコと寄ってきた。


「ケイ、トリック・オア・トリート!」

「じゃあトリートメントで」

「お菓子じゃないの!?」

「冗談だ……ちと待ってろ」


 さて、何か作るか……てかハロウィンやるなよって思ったけどツッコミ入れるタイミングなくなったな。思わず乗っちゃたし。


「あ、押してくよ」

「すまんな」

「厨房でいいんだよね?」

「ああ」


 俺はハギに押されて厨房へと向かう。

 ……まさか誰かにこうして車椅子を押してもらう日が来るとはなぁ。


「……なんかケイ、老けた?」

「老けたもなにも余裕で一万年分の記憶あるんだ。そこらのジジイよりジジイだよ」

「……そうだね」

「?」


 どこか元気のないような……気のせいなのか?



「じゃ、作るか……精霊」


 厨房に入り、俺は『風の精霊』『重力の精霊』『水の精霊』『火の精霊』『土の精霊』を呼び出す。


「え? ケイが作るんじゃないの?」

「俺の操ってる『精霊』が作る……つまり俺が作ってるも同然だよ」

「なるほどぉ……」


 まあ体が動かないからこうするしかないんだけどな。


■■■■


「さて、完成だ」

「おお……普通のクッキーだ」


 悪かったな普通で。つーか何に期待してたんだよ。

 調理開始から一時間半。慣れない精霊複数体の同時操作に疲労を感じながらも、どうにか完成させた。後はラッピングでもして……。


「ほれ、ハギの分」

「あ、ありがと……他は?」

「来たらやる。来ないなら身内で分ける」

「それ更にいっぱい焼くことになるよね……」


 そんくらいしても罰は当たらねぇよ。色々世話になってるし。

 まあ日頃の感謝を伝える日ではない──どちらかというと無病息災を祝う風潮がある──ので、俺達で食うのもアリ。


「そんときはそんときだ……ハギも手伝ってみるか?」

「うん。私もお世話になってるからね」


 いい心掛けだ。

 そう思ってハギの頭を撫でると、犬みたいに尻尾振って目を細める。こういうところは変わらないっていうかな……。

 その後、痺れをきらした──と言う拓哉が厨房に突撃してきて、クッキーは丸ごともっていかれた。皿返せ。


 そしてハギの成長──元々の可能性もある──に感動したら、俺の中で何かがなくなって軽くなるような気分を抱いた。

 250話越えましたか……ハロウィン回、もう少しケイに葛藤させようか迷いましたがこれくらいがケイらしいかな? まあ疑問に思ったときにでも直すんでいっか。

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