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100回目の転生で精霊になりました  作者: 束白心吏
第四章 精霊達の青春………?
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第247話 第二学年二学期 魔術大会7 【三人称視点】

「──始め!」


 審判の合図と共にハギは牽制用の炎の魔法を構築し、啓はロクな予備動作も見せずに地面を蹴る。

 二人の距離は20メートル程。この距離ならば魔法──それも牽制の為の簡易的なモノ──を構築するハギが優位なるのは誰の目から見ても明らかであったが、ハギは魔法を構築している手とは反対の右手に構えた剣で警戒することを忘れない。

 それはそうだ。相手は己の師であり手の内が不明な人外。ハギに分かるのは、彼の外見からは思いもよらない怪物じみた力を持っていること、それを十二分に扱えることくらいだ。故にハギは文字通り全力で──ハギの目的は『啓と戦うこと』だったので当然のことであるが──啓と対峙する。

 対して啓は、魔法が大した脅威ではないと見て、段々と近付いていっているハギの動きを観察している。


「(──今!)」

「(構えは正確……けど、わかりやす過ぎ)」


 牽制で放たれたハギの魔法は意図も容易く啓の剣で斬られる。されどそれこそ、ハギの狙う“隙”でもあった。


「もらった!」

「させねぇっての」


 啓はハギの一撃を返しの刀で受け止め、更にその身に余る人外の力に骨を軋ませながらも剣を押し返す。


「──ま、狙いは悪くないな。てか普通の剣士なら牽制の魔法で終わってるけど」

「普通じゃないじゃん。ケイ」

「お前が言うな」


 軽く観客には伝わらない程度の声音で雑談を交わしながらも、両者は剣を振るう手を止めず、ハギは更に魔法による奇襲を忘れてはいなかった。


「もうちと戦い方を工夫しろっての。魔法士らしいっちゃらしい戦い方だがよ……」

「付け焼き刃も瞭然なのに無理に決まってるじゃん? そもそも『血』が使えないんじゃあ本気も出せないし」

「自分の本領を発揮できないなら、発揮出来るように()()──それが魔法士ってやつだろ?」


 そもそも近接武器の使える時点で、魔法士は凄腕の剣士に勝る可能性が高くなる。何せ剣を受け止めている間に後ろに魔法を撃てば、それで剣士は簡単に殺せるのだから。しかしそれは剣を使いなれた魔法士の特権のようなモノだ。素人が見様見真似でやろうとしても、無惨に殺されるのがオチ。ハギの剣の腕は素人のそれよりかはマシであるが、啓と比べれば天と地程度の実力差はある。魔法だって啓から教わったものだから、ハギが啓の意表を突くのは大変難しい。


「それもそうだ──ね!」


 ハギは土属性の中級魔法で地面を爆破させて姿を眩ます。砂埃が派手に舞い、啓は視界は遮られ、観客や実況も戦いがみれず、されど瞳には隠す気もない好奇心をむき出しに、埃が晴れるのを待つ。


「(制限時間は10秒くらい……かな)」


 爆発を起こした張本人であるハギは啓から少し距離を取り、先ほど行った脳内シミュレートに沿って、自身の手首に噛みつき血を流す。


「(血液操作・凝固化──そして錬成!)」


 砂煙の中、僅か3秒という短時間でハギは赤黒い血のような長剣を作り出す。いや、実際にハギ自身の血を素材に出来た剣だから、ようなは余計かもしれない。ハギは軽く目眩を覚えながら、『偽装』のスキルで『血の剣』を『銅の剣』と誤認させるよう仕向ける。

 魔法を終えたと直感的に捉えた啓は、剣を無造作に振って砂煙を吹き飛ばす。


「……はぁ」

「え、何で唐突にそんなため息つかれたの私」


 啓がハギの姿を──正確にはハギの持つ剣──を見た瞬間に吐いたため息に戦いも忘れかけてついつい突っかかると、啓は「お前は馬鹿か」と呆れた様子で言う。


「確かに『偽装』スキルを使って『血の剣』を『銅の剣』に見せたのはいい手だよ。けどな、ハギ──」

「……?」


 未だに疑問符を浮かべているハギに、啓は二度目のため息を吐く。


「──そんな偽装じゃあ『あれ、どうして『銅の剣』とわかったんだ?』と疑問を与えて看破されるだけだろうが」

「……あ」


 とても小さな声で「やべ」と言いながら、ハギは即座に『偽装』しなおす。


「気ぃ抜けるなぁおい」


 一安心した様子のハギに、啓は思わず残念なモノを見る目線を送った。


「い、いや戦いだって忘れてないですし? うりゃあ!」

「お前魔法使えっての」


 誤魔化すように切りかかってきたハギの剣を受け止めて、啓は最もなツッコミをするのだった。

 決着は次回に持ち越しで……これ以上書くと日を跨ぐと判断した次第。出来るだけ週一更新は維持したいのじゃ。許してください。


 ……さて、どっちを勝たせようかなぁ (決まってない)。

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