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100回目の転生で精霊になりました  作者: 束白心吏
第四章 精霊達の青春………?
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第246話 第二学年二学期 魔術大会6 【ハギ視点】

 ──ケイが勝った。

 そうなると確信にも似た信頼を持っていたにも関わらず、私の内心からは嬉しさが込み上げてくる。きっと、私は自分で思っている以上にケイと戦うことを望んでいたのだろう。

 しかしそんな歓喜の内心には不安も過っている。理由はわかっている。先ほどのケイと生徒会長の戦いを見たからだ。


 私は、生徒会長のような魔力制御技術も未熟で、剣技もケイのように卓越したものではなく素人に毛が生えた程度の実力しかない。

 それなのに、決勝という舞台に立っていいのか──入場門の前で、思考は私を苛みはじめた。


「はーっ、負けた負けた」


 そんなどこか清々しささえ感じる声が耳に入ってきて、私の意識を現実へと引き戻す。声の主は会長だ。直に聞いたことはないけれど、決勝は準決勝に続いて行われるため、そして舞台上には先ほどまて戦っていたケイと会長しか存在しないため、私は生徒会長の声だとすぐにわかった。


「お疲れ様です。会長」

「そんな堅苦しい喋り方はしないでいいよ」


 一度、私は君にも負けているんだからさ。と会長は笑いながら言う。結構バサバサした性格なんだなぁ……壇上に立っているときは雲の上の存在──タクヤさん風に言えば『高嶺の花』だっけ?──のようにしか思えなかったけど、やっぱり会長も人なんだなぁと実感。


「じゃあ、先輩で」

「いいね。その呼ばれ方は新鮮」


 どういう意味だろう? と思ったら、どうやら会長──もとい先輩は、一年の頃から生徒会に所属していたせいか、役職名で呼ばれることはあっても『先輩』と呼ばれることはなかったのだそうな。

 生徒会、かぁ……ケイも興味なさそうだったし、私も気になるけど入りたいとは思わなかったんだよね。


「──ところで、浮かない顔をしてるけど何か悩み事?」

「──」


 お見通しなのか、そんなに私が顔に出やすいのか……たぶん後者だろうけど、先輩は私の横に座って瞳を覗き込むようにして質問をしてきた。生徒会長ともなるとそういうのも一目で見抜けるようになるのかなぁ。凄い。


「あ、別に話したくなかったら話さなくていいよ。でも、話すと楽になるってこともあるからさ」


 何か性格がイケメンだなって思った。


「えーっと、それじゃあ、聞いてもらってもいいですか?」

「ああ」


 先輩に聞いてもらうことになったけれど、中々言葉が出てこない。嫉妬のような感情を向けている張本人にそれを相談するというのが気の進まないのは仕方ないことだとは思う。

 ……いや、まあ流されたっていうか場のノリで話すことになった感は否めないけどね。言葉の責任は取ります。


「私なんかが、決勝に出ていいのかなって思うんです──」


 きちんと話せた自信はない。伝わったかどうか怪しいし、時間もあまりなかったけれども、一生懸命に伝えられたとは思っている。


「ふむ……答えになるかは分からないけれど、私はその考え方は止したほうが良いと助言だけさせていただこうか」

「考え方……?」

「ああ。要するにハギ、君は『自分には目立った技能がないから決勝に出場できない』と考えているんだろう」


 考える素振りの先輩の言葉がスッと私の胸に入ってくる。私の言葉にし難かった感情を的確にした、と感じる。


「別にその考えを持つことは否定しない。けどね、私はそれを聞いてまず思うのは、これまでハギ君が打倒してきた相手に失礼だろうということさ。彼らだって実力がなかった訳じゃない。確かに勝っている部分もあるだろうけど、それでもハギ君が勝ったという事実は変わらないんだ」

「でも……」


 たぶん、準決勝の組み合わせが先輩対私だったら、きっと私は決勝の舞台にはいなかったのだ。故に──


「“でも”じゃない」


 私の消極的な思考は、先輩の一言で遮られた。

 先輩は私の頬を左右から柔らかい手で挟み、無理やり目を合わせられる。


「『運も実力の内』──折角の決勝なんだから、自分が弱いと思うのなら、彼の胸を借りるつもりで戦えばいいのよ」


 それもそうか。


「そうですよね……ありがとうございます」

「いいよ。私だって似たようなことで悩んだことがあるからね」

「先輩も……ですか?」

「意外かな?」


 私は思わずこくりと頷く。

 その様子が可笑しかったのか嫌だったのかはわからないけれど、先輩は苦笑いを浮かべる。


「私もハギ君と一歳しか変わらないヒトだもの。劣等感の一つや二つは抱いているさ。今だって──」


 先輩の台詞は、私の肩を叩く実行委員の人によって遮られた。どうやらそろそろ始まるらしい。


「──頑張れ。ハギ君」

「はい!」


 先輩の応援に元気に返事して私は入場門を出る。舞台上ではケイが剣を片手に私の入場を待っていた。


「両者、構え!」


 定位置につき、審判の先生の合図で剣を構える。

 ……今さらだけど、これ『魔術大会』なんだよね? なのに私もケイも得物が剣なのってどうなんだろ?

 最近、啓の一人称が少ない希ガス……気のせいじゃないんですよね。ハギが主人公のほうが良いんじゃないの説再浮上か。

 改稿についてはこの話の区切り……まあ来週辺りに一回目の部分削除&文章置換を行おうかなって予定。最近忙しくて執筆できてないのであくまで『予定』であると予めご了承ください。

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