第241話 第二学年二学期 魔術大会1
最近になって思ったのだが、魔術大会はもう上位三割に入ったのではないだろうか。大まかな計算とかせずとも、もう準決勝にまで進んでいるのだから、確実にもう棄権してもいいと思う。
そんなことを考えながら学校へ向かった魔術大会準決勝の当日、俺はまたもやマツバ女史に職員室まで呼び出された。
「……さて、ここに呼び出したのは他でもない、魔術大会について、だ」
「まーた要望っスか先生」
「お前態度悪くなってないか?」
なった。何ならこれから『優勝しろ』とか言われるんじゃないかと恐々としてるまである。
しかしまあそれもそうかと、マツバ女史はひとつ溜め息を吐き、話を始めた。
「お前のことだから、どうせ『もう上位三割に入ったんだし、棄権してもいいんじゃね?』と思っているのだろう」
「さすが先生。よーくわかってらっしゃる」
「褒めてもそれは許さないと思っとけ」
「………」
解せぬ。
「私としては優勝云々はどうでもいい。しかし棄権するのだけはやめてくれ、ということだけだ」
「意外ですね」
「準決勝まで行けば一応の箔はつくからな。それに年度予算も少し追加で下りるし」
理由が酷い……まあ将来を考えるなら、箔つけも大事だな。うん。予算もより良い勉強の環境を作るには大事だろうね。
「あー、まあ了解ッス。棄権しなけりゃ問題ないッスよね?」
「だからと言って試合開始直後に降参するのもナシだからな?」
「そこまで落ちぶれちゃあないッス」
てか俺の評価酷いな? 内申点どうなってんだか気になってきたわ。
話はそれだけらしいので、俺はさっさと職員室を出ようとしたが、「ああ、そういえばもう一つある」とマツバ女史に止められた。
「校長から君達話があるそうだから、早めに行きなさい」
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早く行けとは言われたが、校長室は職員室の隣にある。早くもなにも歩いて数秒とかからないのだ。
しかしあのマツバ女史の言い方は気になる。元より丁寧な先生ではあるが、あの先生が「早めに行きなさい」急かすということは何かがあるということかもしれない。
「……あとは俺“達”と言っていたことか」
実のところ、あんまり校長については知らない。たぶん家を漁ればライアがいつの間にか調べた情報があるだろうけど、それを見る余力は今のところない。
思考も程々に俺は扉をノックして開ける。
「失礼します」
「あ、ケイ」
「ハギも呼ばれてたのか」
俺たちは並んで無駄に豪華な魔物の皮を使った椅子に腰かける校長の方を向く。
「二人とも揃ったね。では、本題に入ろうか」
「……」
途端、不穏な空気を感じた。経験則からくる勘のようなモノが、これから面倒事が飛び込んでくると強く警鐘を鳴らす。
「まずは今日という君たちも忙しいだろう日に呼び出してすまない。しかし早めに耳に入れておいて欲しかったから、朝から呼び出させてもらった。まず聞いておくが……君たちは、将来の夢とかはあるかな」
「いえ、特にないです」
「私は……まあ、あります」
俺の場合、持つだけ無駄だし。しかしながらハギには夢はあったことには安堵した。
「そうかそうか。まあ深くは追及しないがね、これから話すことは君たちの将来にも確実に影響する事だ。だから私個人としては断ってくれてもかまわない」
「……」
「……?」
俺と疑問符を浮かべるハギに見守るような視線を向けて、校長はそのことを言った。
「君達には卒業後、勇者と共に魔族領へと書簡を届けてもらいたい。そういう依頼が、来ているんだ」
……いや、魔術大会後に言えよ校長!
まあツッコミはさておき更新です。月曜日からテストだぜ嫌だなぁ。
まあ次の章はその内容ですので、少し早いけど宜しくお願いしまーす。物語がやっと少し動くぜ……