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100回目の転生で精霊になりました  作者: 束白心吏
第四章 精霊達の青春………?
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第240話 第二学年二学期2

 無事に補習を出すことなく終わったテストの後、俺とハギは一ヶ月後に控えた魔術大会の決勝に備え、自宅で魔法の鍛練をしていた。


「……ケイに当たりそうにない」

「そりゃあお前、速度が足りないからなぁ」


 後は魔力の流れだが……隠蔽くらいすりゃいいのに。


「速度かぁ……んー、他で補えるかなぁ」


 ハギがステータスを開いてうんうん唸り始める。着眼点は良い。それにハギのスキルにはそれを出来るモノがキチンとあるからなぁ。


「『隠蔽』……は不自然だよね。『偽装』も──あ、『近接戦闘』なんてどうかな?」

「肉弾戦しながら魔法打てるか?」

「しょ、初級魔法なら……」


 お前の火力をお前で封じるなや。

 しかし目をそらす所、火力がなくなるのは分かっているらしい。


「じゃあ駄目だろ」

「むー……何だろう。あるとは分かるんだけど、使い方がわからない」

「ほー。じゃあどう使えそうか考えてみ」

「はーい」


 そう返事をして魔法を使う態勢を取るハギ。


「実践で身に付けるってか?」

「だってそれが手っ取り早いじゃん?」


 正論だが……いや間違っちゃないからいいや。

 ほぼ完全に魔力が無くなったハギは、複数の魔法を俺に放つ。


「阿呆か。魔力の反応が突然無くなったら警戒されるに決まってんだろ」

「えー……」


 まあ、そっか。と一人で納得した様子を見せるハギは、また考え込む。


「だが実戦的だ。魔術大会でなければ十分に使えるから忘れんな」

「はーい……じゃあ、これなら!」


 身体強化をするような魔力の流れに偽りながら、ハギは魔法を放った。


「だから何で避けられるのさぁ!?」

「まず狙う所が分かりやすい。魔力の流れに対して構えがおかしい。偽るくらいなら()()()。そのほうが『偽装』のスキルらしい使い方だ」

「かたる? ああ、騙る……属性を偽ったり?」

「それも手だが……お前にゃお前の癖があるだろ?」

「構えのこと?」


 正解。ハギは魔法を放つ時は手のひらを前に向ける癖と、身体強化の時は腰を少し落とし両手を握る癖を持っている。

 そしてその癖は見破られていると考えていいだろう。


「普段なら使えないが、今回は特例だ。ハギの癖は知ってる奴のが多いだろうし、そうしたブラフを使うもよし。又は──」

「ま、または?」



「新しい魔法を覚えるか、だな」

「よし、それに決定!」



 とても快活にハギは返事した。


「……ちなみに、大魔法だぞ」

「上級魔法はあんまり知らないからどんとこいだよ!」


 年相応の──しかし身長は同年代より小さいので若干幼く見える──ハギの反応に、俺の中で些かの迷いが生まれた。

 ハギの性格ではあり得ないとは思うが万が一、ハギがその力を自慢するなり何なりして、それが世界に知れ渡ったら……と思ってしまった。無論これは妄想かもしれないが、どうもその思考が纏わり付いて脳裏から離れない。

 きっとそのような事をする頃には俺は死んでいる。その時ハギがどのような状況であろうとそれはハギの勝手であると言えばそれまでの話だ。

 しかしそれでも、ハギという少女は俺の弟子である。あの世からじゃあ手助けなんて出来ないだろうし……死んでまで弟子の尻拭いをする必要があるのかという話でもある。


「……じゃあ、今日はこれくらいにして、明日から練習するか」

「はーい」


■■■■


「──宜しかったのですか?」


 ハギが部屋から出てすぐ、俺の後ろからライアが話しかけてきた。


「いいんだよ。アイツが望んだことなんだから」

「……また、そうやって一人で全て抱え込む気ですか」

「一人で、か。一人で……」


 どこか諦めの色がうかがえるような声音でライアが呟いた言葉を反芻する。


「たぶん。そうなんだろうな」

「少しは頼ってもいいのですよ」

「ライアも知ってるだろ。俺にそういうのは出来ないんだよ」

「……また、()()()()()()()()()()()()()()()()、ですか?」

「……」


 痛い所を突かれ、意味もないのに視線を明後日の方向に向けた。

 しかし俺にはそういうことが出来ない。いや、言い方が悪かったのかもしれない。()()()()()()()()()()()()()()()


「……アイツはアイツで、ハギはハギだ。一緒にしてやっちゃあ、駄目だ」

「ですが、重ねて見ているでしょう」

「……重なって、見えたんだよ」

「同じことでは?」


 同じことだ。結果だけ見れば、な。


「仕方ないだろ……あんな目されて、思い出すなって方が無理だ」

「……そんなに似ていたのですか」

「ああ」


 ライアは知らないだろうが、とても似ていたのだ。それこそ面影を重ねてしまうくらいには。

 だからこそ、俺の脳は警鐘を鳴らしたのかもしれない。


「アイツもまた魔法が好きな奴だった。新しい魔法と聞いて目を輝かせていた少年だったよ」

「……しかし過ぎた力によって、マスターの弟子になったことによって、少年の人生は狂ってしまった」

「……ああ。そうだな。

 実験動物として捕獲されて、

 実験の最中、発狂して暴走して、それで死んだ」


 そして、人類を滅ぼした。

 きっと歴史に残っていれば、『人類史最大の集団自殺』として記録されていただろう。まあ、そんな人類全員と自殺したわけだから、そんな事を記せる人間は一人もいないわけだが。


「ハギも、そうなるかもしれませんよ」

「ならねぇよ。それにいざというときは、その為にお前は動くんだぞ?」

「……わかっているつもりです」

「身勝手な主でスマンな」

「それくらい身勝手なほうが、まだ人間らしいかと」


 そうかい。なら、よかった。

 俺はそんな感想を抱きながら、ライアと共に部屋を出た。

 必要以上に暗くなった……何故だ。聴いてた音楽が原因か? あ、啓のこの過去はもう少し後に本編で語ります。

 にしても暗いですね。次回はゆるーい雰囲気にしたいから拓哉達を召喚しよう……出来たら。

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