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100回目の転生で精霊になりました  作者: 束白心吏
第四章 精霊達の青春………?
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第235話 第二学年夏期休暇10

「そんで、その後どうなったんだよ」


 カドゥルー訪問から数日たったある日の真昼。偶々ギルドに行った俺は紆余曲折を経て飲み仲間──ではなく、今は冒険者ギルドのマスターである旧友ことドワーフのギロティと共に昼食を食べていた。さすがのギロティも昼から強い酒の一気という暴挙には出ていないが、ギルドの食堂で働く職員も引くくらいに異常に俺に強い酒を勧めてきている。


「んー、一応アイツに金銀は精製した粗悪品を進呈しておいたし、採取した血は小分けにしてある。後日注射してみる予定」

「“現”人類未踏の龍血投与か………贈呈品が酷いのはさておき、前回はどうだったんだ?」

「知ってるだろ。急激に若返って何百年も生きたの。更に悲しいことに、他に投与した奴は爆発した」

「………相変わらず可笑しなカラダしていやがるなぁ」


 聞いたのお前なのに引くなよ………でもホント、昔は死ぬには不便な体であった。これも『不幸』の効果なのかね? そんな悪運だけで助かってたまるかとは思うが。


「一応、あの頃のは神様に造られたからなぁ。もとより頑丈だったし加護もついてたし………たぶん何もない世界でも寿命で死ねるくらいには逞しい肉体だったよ」

「そりゃあ生きながらに狂えるな」


 長生き同士だからこそか、ギロティはその『何もない世界で数百年生きる』ことを想像出来たのだろう。軽く地獄だ──そう思われがちだが、そもそも『何もない世界』なのだから、何も知れないのだ。文字も文化も何もかもないのだから、記憶さえ引き継いでいなければ問題は皆無である。


「仮定の話だけどな」

「だなぁ………って、そっちじゃねぇよ」


 誰もカドゥルーのその後なんて興味ねぇよ。と何気に酷い──しかし百年以上前の行いを考えれば当然である──ギロティの物言いに、ついつい笑いが零れてしまう。


「お前さんの恋人のほうだ」

「………お前、遂に幻覚でも見るようになったか?」


 空想の友人(イマジナリーフレンド)ならぬ空想の恋人(イマジナリーラヴァー)? とにかく遂に、変なモノでも食ってイカれたかと些か戦慄した。Loverでなくてsweetheartでもいいけど………彼女だしgirlfriendでも適用されるのかね?


「違う違う。儂もまだそこまで老衰しとらんわ………貴様の弟子のことじゃよ」

「………恋人じゃねぇよ」


 俺はギロティによって注がれてあった酒を飲み干し、店員に水を頼む。ギロティは「どうだかなぁ」と言いながら、暖気に追加の酒を頼んで昼飯を食べる。


「じゃがなぁ………お前さんがあそこまで甘い姿、儂は始めてみたぞ」

「別に、甘くしてる気はねぇよ」


 出てきた水を一口飲み答える。酔いが回ってきたのか、脳裏にハギの姿が過った。


「前世でも何か因縁があるんだろ? それこそ家族のように強い縁がよ」

「………何で知ってるんだ?」

「風の噂………と言いたいが、ハギの嬢ちゃんがぼやいてたな。何でも『魂を結ぶ魔法』らしいじゃねえか」

「あんにゃろ覚えてたのか………まあそれはともかく、甘やかしてる気はないぞ?」

「そりゃあお前さんの視点でだろう」


 俺からしてみれば十二分に甘いねと言って、ギロティはついに自分用の酒を頼みだす。


「おい」

「いいんだよ。弱い酒で酔えるような柔な体質はしてねぇんだから」


 そう言って豪快にエールを呷る。


「っかぁ! 昼からの酒は特別美味い!」

「お前もう酔ってね?」

「こんな安酒で酔うかってのよ」


 口も悪くなってらぁ………てか場の雰囲気に酔ってねぇか? まあそれはさておき、だ。


「この話は終わりな。で、今日は依頼したいことがあるから来たんだが」

「無理難題以外なら何でもこい」


 無理難題ならって………コイツは俺を何だと思っているのだろうか。


「別に難題じゃあねぇよ。ただの護衛依頼だ………魔族領までの」

「無理だな」

「即答かよ」


 もう少し冒険者を信頼してやれよ………とは思わなくもないが、ここ一応ギルドに併設されてる酒場なんだぜ? コイツは一応その頂点に立ってるわけだけど、発言には気を付けたほうがいいと思うんだが。


「そもそも人類の魔法技術は衰退してってんだ。魔素が減少しているわけでもなく、だ。ただただ人類の魔法技術だけが衰退している現状、んな危険な依頼を任せられる奴はウチにはおらん」

「お前が行ったらどうだ? 里帰りしてこいよ」

「まあ確かに適任ではあるがなぁ………」


 どこか懐かしむように呟くギロティ。その様子は様にはなっている。


「もう何年と帰ってないし、たぶん忘れられとるぞ?」

「ブラックリストに載ってるの間違いだろ」

「違いない」


 ガハハと他人事のように笑うギロティ。お前のことだと声を大にして言いたいが………。


「まあ、たまには里帰りってのもいいな」

「有給休暇もたまってんだろ」

「9割くらいぱァになってるよ」

「ひでぇ職場だ」


 俺が一杯呷ると共に、ギロティは更に酒を頼む。昼間の飲み会が本格的に始まる。


「………で、報酬はいくらだ?」

「成功できたら金貨2000枚」

「テメェ何運ばせる気だよ!」


 既に場の雰囲気に酔っているギルマスはそう言って笑う。ウザ絡みしてくる未来が見えながらも帰れないのは、俺も酔っているからなのだろう。


──などと言い訳をして二人で飲み、家に帰ったのは夜も更けた頃。とりあえずハギには白い目で見られ、ライアからはきっちり怒られた。

 更新です。いつの間にか日曜日でしたが明日から四日ほど休みな高校生です。月曜日など敵ではない。

 とりあえず直球に言いますが、この回ほど無駄に筆が乗った回ないです。これで啓までジョッキで飲んでたら更に酷くなってた気もします。ちなみに啓は酔うと泣きます。泣き上戸です。


次回はギロティの話です。粗筋はあるのでコミカルに書ければいいなーと思ってます。

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