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100回目の転生で精霊になりました  作者: 束白心吏
第四章 精霊達の青春………?
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第233話 第二学年夏期休暇8

【タクシャカ視点】


 近付いてくる二つの気配が、我の微睡む意識を急速に覚醒させていく。

 片方は小さき、簡単にあしらえるであろう、矮小な存在。もう片方の存在感は、何百年もの歳月を生きる我が警戒するに値すると、本能が大警鐘を鳴らすほどであった。


『………何者だ?』


 そう呟くも、答えは聞こえず。対話の意思がないのか、はたまた対話が出来ないのかはわからない。しかし本能的に、かつてないほどの命の危機に晒されているのだけはわかる。


『答えよ。小さき英雄よ』

「「………」」


 答えはやはり返ってこない。変わりと言わんばかりに、ただただ二つの存在が、我の眠る広間へと向かってきている。

 ここまでの危機感を覚えたことは過去に二度しかない。7000年前の神代に敵対したジャナメージャナ………奴の復讐の炎と、もう一つ。神代は神代であるが、我を正々堂々真正面から叩き潰そうとした『悪魔』がいた。我の本能は、後者のような死を覚悟しなければならないと警鐘を鳴らす。


『目的は、なんだ』

「お前の血をコップ一杯分貰うことだ。タクシャカ」


 故に、我は驚きを禁じ得なかった。二度と忘れぬであろう、小さきながらも強大な力を振るい我を幾度となく退け、我を殺す所にまで至りかけた人物と全く同じ声の男が現れたことが。


■■■■

【黒谷啓視点】


 いくら神殿と言えども、内部が広いと正直なところ面倒なだけであり、我が儘を言わせてもらうとすると、もっと部屋と部屋の距離近くてよくねとは思う。そもそも一部屋一部屋が広大過ぎるのだ。無論、ナーガの住居であるから、それも当然ではあるが。

 俺は愚痴のような思考に割く意識を現実に戻し、神殿の最奥で寝ていた『カドゥルー』ことタクシャカと対面する。


『………まだ、生きていたか』

「また、生き返ったんだよ。ブラフマーに気に入られてな」


 残念なことにな。と内心でだけ付け足しておく。何だかんだでタクシャカとは知り合いレベルの関係ではある。まあ仲は良くないし、基本敵対していたが。


『それで血と言ったか………』

「ああ、対価くらいなら支払うぜ? お前の寿命を延ばす、とかな」

『貴様に言われると冗談とは捉えられぬな………まあよい。血くらいならくれてやる。ただし──』


 無償でとは言っていないが………まあ無駄に時間をかけずに出来たことを幸運に思おうかね? まあ──


『──そこの娘は喰わせてもらうが』

「──テメェ。いつから対等な立場にいると誤解してんだ?」


 ──ハギを喰らおうと口を開けたタクシャカの右目に跳び移り、拳を突き刺し抉る。

 勢いよく殴ると、タクシャカはバランスを崩し、声にならない悲鳴を上げて顔面を壁にめりこませる。


「いくらテメェが『死と再生』を司る蛇であろうと、力までは変わらねぇんだよ阿呆」

『ぐ………対価を払うと………言うたではないか』

「対等な対価を払うと思ってんのか?」


 まあ金銀財宝程度ならいくらでもくれてやるが………ハギを喰らおうとするなら殺す。

 俺はどこか諦念を感じさせるタクシャカの腹を切り裂き、適当な量の血液を採取し、治癒の精霊で傷を塞いだ。


「で、いくら金銀財宝が欲しい? いくらでもくれてやる」

『………それより、その娘は、貴様にとってのなんだ?』

「弟子だよ」

『………そうか、良かったな』


 何言ってんだコイツ? そう思いハギの方に視線を向けると、端正な顔立ちを何ともだらしなく歪めた気持ちの悪い笑みを浮かべていた。


「ハギ………お前の笑い方ってそんなにキモかったか?」

「………失礼じゃないかな。それ」


 そう拗ねたように言いながらも、その数秒後には、また気持ちの悪い笑みを浮かべていた。


「………まあいいわ。すまんなタクシャカ。お陰で助かった」

『おい待て。金銀財宝の話はどうなった!?』

「さっきの質問の答えが対価だ。不満があるなら俺を殺してみろ」

『諸悪の根元めが………っ』


 そう苛立たしげに低い声を出すタクシャカに、少し弄りすぎたと反省しながら、俺はハギと共に神殿を後にする。

 時間としてはそんなに経っていない。神殿の往復に片道一時間かかった程度で、余裕で今日中には帰れるだろう。


「じゃ、帰るぞ──ん? どした」

「いやぁ………歩きで帰らない?」

「却下だな」


 俺はハギを右手で抱える。血液の入った複数の試験管は別の空間に入れておいたから、後はあれを飲むだけ。後でのんびり飲もうと決めて、俺はこの不自由な体で最後の馬鹿騒ぎをするために助走をつける。


「あ、あのー? 何かイヤ~な予感が………」

「いい直感だ──な!」

「え、嘘!? もう地面が彼方ってきゃあああああああああ!」


 右脇でハギが暴れる。それ、余計に怖くならんのかね?


「少しは心の準備をさせろ! この馬鹿ししょおおおおおおおお!」


 そんなハギの悲鳴が、遠くに見える人族の(グリーフ)大陸の一部にまで聞こえていたとかいなかったとか。

 まあ取り敢えず………うん。騒ぐなら、一人の方がいいな。迷惑にならないし。

 巻くぜ。だってもう学生編で魔族領に啓達が向かう予定なかったんだよ? 巻くのは道理。

 そんな訳でタクシャカとの邂逅から帰還まででした。うん。改めて読み返すと内容薄いなー。けど満足。

 第二学年夏期休暇は後2話くらいで終わり……だと思います。私が何か思い付かない限り、は。

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