第224話 第二学年一学期 魔術大会21 【ハギ視点】
「──始め!」
審判の合図で第二回戦の幕が上がる。私の対戦相手は──ケイの親友のタクヤさん。得意な魔法は『錬成魔法』で、一回戦は剣を用いた持久戦で勝ったのは記憶に新しい。
まだこの世界に来て数年ほどのタクヤさんと、長い年月を過ごした記憶・戦闘経験を持っている私とでは、私のほうが有利だとは思う。使う魔法の種類の多さも、その内の一つ。
けれど絶対に勝てるかを問われると『否』と答えざるを得ない。
私は、自分でいうことでもないけれど、体力はないほうだ。ケイのような人外な力もないし、ライアお姉ちゃんのような冷静さも持っていない。
だから近づかれたらそれで試合終了五秒前になるし、想定外の攻撃をくらえば、たぶんそれでも詰む。それくらい私の実戦経験──特に対人戦の経験は少ない。
まず私は、小手調べに風の魔弾を飛ばす。不可視の魔弾は扱いにくいけれど、それでも先制攻撃や奇襲には十二分に使えるからと、ケイも重点的に指導してくれた。しかしその魔弾は、奇しくもタクヤさんの剣に弾かれた。
二発目、三発目………何度も弾かれてしまい、一歩、また一歩と、近づくことを許してしまう。けれどタクヤさんは風の魔弾にばかり注意を向けるものだから、足下を疎かにしてしまう。
──そこに勝機を見た。
故に私は風の魔弾を撃ち続ける。有り余る魔力の一部を、惜しみ無く魔法に変換していく。
そして時間が経てば経つほどに、状況的には私が不利に見えてくる。そんな頃、遂にその時が訪れた。
「あ、ヤベっ………」
グチャリと、重たい泥に足を入れたような音と共に、タクヤさんのそんな呟きが聞こえる。
そして私の放っていた一発の風の魔弾が、バランスを崩したタクヤさんの剣を吹き飛ばした。
「………チェックメイト?」
「確かに使い所としては合ってるので、そういうのは自信もって言ってください」
タクヤさんの目の前に剣先を突き付けてそう言ったら、そんな返事が返ってきた。
そのあとに降参したタクヤさんの様子は、どこか楽しそうであった。
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「よ、お疲れ様」
「ただいまー………これで後は準決勝と決勝だけかー」
「気が早いっての………てかまだまだ先のことだからな?」
控え室にて。試合が終わった私は、椅子を二つ並べて横になる。
あー、もう動きたくないー。
「準決勝進出おめでとさん。俺も頑張ってくるか」
「んー、頑張ってー」
獣人族の儀式用の衣装を着たケイを見送って、私はだらだらと気を抜く。
結局、今回は使われなかった魔力………あれが何だったのか、疑問に思いながら。
明日が休日だと知り歓喜する学生Aです。
最近はFG○とか東方○ストワードとかに熱中していて執筆が捗っていなかったので、色々な作品の執筆を進められたらなーって。