第217話 第二学年一学期 魔術大会14
三回戦目──もとい準決勝ともなると、観客席の熱気も凄いものである。フィールドにいる俺達にも、その熱気が伝わってくるように思えるのは何故だろう。
「………何か、プレッシャーから逃げたくなってくるな」
「部活の件が無ければ、私達絶対に逃げてたね」
入場門を背に二人、歓迎しているこの大歓声に憂鬱としながら、素直な感想を述べ合う。
若干ながらも人見知りの気がある俺達だ。憂鬱な気分になりかけるのも仕方ないことである。
というかハギの言う通り、部活の件が無ければ逃げてた。そもそも出場すらしてなかったが。
「よーし、次も強い人と当たりませんよーに」
「ケイより強い人はいないと思う………」
というか準決勝なのに弱い人いるわけないじゃん……と続いた言葉は聞かなかったことにして、俺は相手と真面目に対峙する。
一人は『風魔法』の名門、ブリーズ家の令嬢スロカム。
一人は『火魔法』の名門、フレム家の令嬢プルメリア………か。
「意外だな。貴族同士で手を組むのって」
「そうかな? 二人はとても仲良しだよ?」
ほーん………魔法の相性的にか? まあ確かになのだが、一つだけ、すげー気になることがある。
「ハギよ。何故二人は顔をひきつらせているんだ?」
「ケイと当たったからじゃない?」
「二人が組んでるからよ………」
プルメリア嬢がげっそりとした様子でそう呟く。というかスロカム嬢と何かをひそひそと話しているんだが。たまにこちらを真顔で見るのも止めてくんね? 会話の内容からして不穏だから。俺は怪物じゃねえ。
「………では、両者位置に」
決闘前の礼と握手をして、俺達は開始位置まで下がる。
ハギは納刀状態の剣の柄に手をかけ、すぐにでも抜ける体勢で。
俺は正眼の構えで。
「──始めっ!」
開幕の合図と共に無詠唱の炎と風の初級魔法の雨が降り注ぐ。容赦ねー。
容赦ない猛攻を、俺は剣を一つ振るい、風圧で魔法を霧散させる。
「相変わらずの化物な止め方ー」
「こんくらいで消える魔法のが駄目なんだって──のっ!」
二振り目は鋭く二回。紛うことなき本物の『殺気』を込めた一撃を二人の真横に放つ。
ちなみに当たったら御愁傷様ってことで。
ハギも「ひえっ」と情けない声を出したような………気のせいだろう。一歩も動かなかった令嬢二人組も、何故か冷や汗が見えそうな雰囲気を醸しだしている。
「「こ、降参で………」」
震え声で双子のように完璧に一致した言動に、俺は少し感嘆を覚えた。とりあえず、準決勝終わり。
8話ぶりに参上したプルメリア嬢……もう眠い。私寝ます。