第212話 第二学年一学期 魔術大会9
始まった………のは良いのだが、とりあえずこれだけは言わせろ拓哉よ。
「あれは痛い。いや正論だけどさ」
ぶっちゃけ背筋がブルッとした。
ちなみに隣でハギもブルッと震えていた。
「あれは………言う側も言われた側も恥ずかしいよね」
というか聞いてるこっちが恥ずかしくなってくる………とのこと。ホントそれな。とりあえず薗部にいじられないことを願う。
そんな拓哉の戦い方は極めてシンプル。ただ相手の剣撃を受け流す。それだけ。
一歩も動かず、剣だけを受け流す。蹴りが来そうになれば即座に離れ、それ以外は拓哉が使う剣を治す程度しか行わない。
それを巧妙に激しい戦いに見せるから、会場の盛り上がりは最高潮。もはや一種の芸術だな。
………というか拓哉の相手、真剣使ってね?
「………ま、なるようになるだろ」
「? 何かあった?」
疑問符を浮かべるハギに、俺は拓哉と戦う相手の剣を指さす。
「拓哉の相手の使ってる剣な………真剣だわ」
「へぇ………?」
早速『鑑定魔法』でも使ってみたのだろう。しかし思うような結果は見れなかった様子。
再び怪訝の視線を送ってきたので、とりあえず。
「『鑑定魔法』は遠目からじゃ使えねえっての。あとハギに知識がないから、近場で見たとしても判断できねぇよ」
「………なんか損した気分。というかそれヤバくない?」
まあヤバいな。けど慌てる必要はそこまでない。
「拓哉なら大丈夫だろ。ほれ、今も元気に剣を流してるんだから」
「なんか薄情すぎない?」
確かに客観的で他人事のような感想だが………ハギ、お前もどこか納得した様子だし、中々に薄情者の素質はあるぞ。それを口に出したら拗ねそうなので言わなかったが──っと、もう決着か。
フィールド上では、息切れをしている貴族の青年と、余裕のある真剣な表情をする拓哉の姿。
そういや拓哉の集中力もすげぇよな。アレ、スキルなしで長時間集中してんだもん。その分、飽き性ではあるが………。
拓哉が再び貴族さんの剣を受け流し、魔力を込めた一撃を放つ。
──その時、俺達は捉えた。
「何………あの魔力」
「………」
拓哉の身体を、持つ剣を、赤黒い魔力が一瞬だけ染め上げた。
あれは………。
「──さて、帰るぞハギ。今日の試合はこれで終了だ」
終了のホイッスルが鳴る前に俺は席を立つ。
ハギもどこか不満げな様子だが、席を立ち、椅子を元に戻す。これでもう帰るだけ。幸い荷物は持ってきていない。どうせ今日一日授業はないから、持ってくるだけ無駄なのだ。
「明日はタッグ戦だー、とりあえずお前どうする?」
「ケイを肉壁に魔法乱打とか?」
「ひでぇけど現実的なんだよなぁ………」
サブタイトル変えてみた (唐突)。
鬱陶しいようですがカクヨムのほうの新作もよろしくです。URL↓
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