第19話 入試当日3
試験官を驚かせてしまった実技試験が無事に終わり、遂に最後の試験――模擬戦の時間になった。
ちなみにこの模擬戦、魔法で戦うか剣で戦うかなど、色々試験内容が選べる。
模擬試験は、2つだけ選択可能。
俺は『魔法戦闘:総合』と『近接戦闘:総合』を選んだ。
『魔法戦闘:総合』は、Cランクまでの魔法しか使わずに戦うという試験のしかただ。
ちなみに、魔法のランクは下からE<D<C<B<A<S<SSの7ランクにわけられており、その中でBランクは、ちょうど中間くらいの魔法だ。
……俺が実技試験で使ったのは、Eランク魔法だからな? ……こめた魔力はBくらいだけど。
余談だが、ハギは、『魔法戦闘:総合』のみを受けるらしい。
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さて、俺は先ほどの校庭から徒歩で数分もかからない闘技場にいる。
っていうか、俺は、『近接戦闘:総合』しか受ける事が出来なかった。
理由? 知らねぇよ。ただ、試験官に「君は魔法試験止めてくれ」と、懇願されてしまい、このようなことになった。
まあ気持ちは分かるしいいけどさ。
「受験者番組85番、前へ」
「はい」
ちなみに、すごくどうでもいい事だが、『近接戦闘:総合』は、俺以外受けていない。
まあ、これは『総合』じゃなくても、いっぱいあるから。
「ふむ、小僧、武器は何を使う?」
「素手で」
………そういえば武器は殺傷力がなければ何でもいいんだよな。
俺は手をヒラヒラと振りながら言う。
………本気は出せねぇけどな。俺は素手でも。
そもそも『精霊』が人殴るのにも結構魔力――ああ、俺今精霊だったか。そりゃあ魔法が強いわけだ。
俺が先ほどの魔法の威力のおかしかった理由を出したのと、闘技場の客席から老人が跳んできたのはほぼ同時だった。
ってか真っ白くて長いお髭が邪魔そうだなぁおい。
「ほう、儂に素手で挑むとは」
「?」
え? この試験官有名人か何か?
ちなみに、対戦者も素手らしい。
「儂を知らぬのか? 儂はのぅ、若い頃は『拳闘士』として有名だったんじゃが……」
……突然何か長話が始まった。
俺はその話に適当に聞き流していたが――ってか老人が誰かと話したいと思う気持ちが強いのは知っているし俺にも分かるし共感できるからと放置していたら、数分後に審判長の試験官がおじさんの長話を止めた。
ああ、この試験官は苦労人なんだな…………何はともあれやっと始まるか。
「そ、それでは、模擬戦。………初め!」
おじさんは、審判の合図と共に、俺目掛けて跳んで来た。
こりゃあ、早すぎてみえねぇはなぁ。
………普通の受験者なら。
俺は横へ避け、そのままカウンターでおじさんの腹に蹴り、背中に肘打ちをくらわした。
「グフォ!」
………おじさんは倒れた。
………ちょっと弱すぎね?
俺はおじさんを呆れた目で見ていた。