第182話 第一学年冬期休暇10
昼食後もハギと共に王都を散策して時間を潰し、夕刻になったので帰宅。
途中、雑貨屋とかで拓哉に言われた………エスコート術? とやらをしたらハギがおかしくなったりしたが………やっぱ臭かったか? 自分でも慣れないことやってる自覚はあったけどさ。
「ただいまーっと、五十嵐と園部は帰ってたのか」
「おかえりー。拓哉は正妻のところ」
あー、そういやアイツ、朝「性夜は回避されたぜ………」とか呟いてたなぁ………。
「おかえりハギちゃん。デート………ごほん。散策はどうだった?」
「あ、あの、えと………」
ハギはハギで何故か困惑してる。
………というかあれ、やはりデートと呼ばれる類いのやつだったのな。
………え?
「すまん。先部屋戻るわ」
「んー、何かライアさんが呼んでたよ?」
「着替えたら行くって伝えておいてくれ」
俺はさっさと自室に向かう。
熱を帯びた顔を隠すように。
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「──ふぅ」
部屋着に着替え、ベッドを支えに床に座り込む。
ドッドッドッ………そんな音が聞こえてくるほどに、心臓が早く動いている。
心なしか、耳まで暑い。
「はぁ………」
デートと意識してしまった瞬間、何かが弾けたような感覚に襲われた。
未だ感じたことのない、未知の感覚。
自分でもわからない、何か。
「長く生きてみるもんだなぁ………」
長すぎるけど。そう付け加えて部屋の灯りをつける。
周囲に漂う灯の精霊『へーロー』………死後、神に魂を拾われた少女の精霊は道標としても有名だ。
「………なら、俺の道も照らしてくれんかねぇ」
無理なこととはわかっていながら、そう呟いてしまう自分に笑ってしまう。
自分の運命は自分で決めてこそ──いや、切り拓いてこそ人類というものなのだ。
神頼みは切り拓くための願掛け………失敗した時の責任の転嫁先にすぎない。俺はそれをよく知っている。けれど弱いから、やっぱり神にすがりつく。
………この肉体とて、それ故にある。
「………偶像に頼らず………やれること、やってみるか?」
とりあえず、俺はまだ生きていたいようだ。
俺として『黒谷啓』という一人の人間として。
ならば、俺がやることは一つ。
──長く生きる為、尽力する。
今までのように、未知を既知に変えていく。
出来ないわけがない。これまでやって来たことだ。
新たな決意と共に、心なしかいつもより軽い腰を上げた。
決意の話になってる………何故。