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100回目の転生で精霊になりました  作者: 束白心吏
第四章 精霊達の青春………?
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第180話 第一学年冬期休暇8 【ハギ視点】

 お昼前、私とケイが外に出ると、辺りには雪が積もっていた。


「うわぁ………すごいよケイ!」

「おお………雪かきには拓哉達も呼ぶか──って」


 一面の銀世界。飛び込まない理由はない!

 しかしその野望はケイによって阻止された。


──腰に手を回されて支えられてるんですけどぉぉぉぉ!?


 ちょ、誰か! 調子のってすいませんでした! 助けて!

 そんな私の願いを聞き入れたのか、私の体は前方へと倒れていく………って、今のまま倒れたら女性として色々終わるんだけど!?

 レギンスは履いてるけどさすがにスカートの中見られるというか見せるような行動は嫌なんだけど!?

 最悪の未来に、目尻が熱くなるのがわかる。

 しかしそんな最悪の未来が現実になる前に、私の体は後ろに倒れる。


「──危なっかしいなぁおい」

「ご、ごめんケイ」

「次からは気ぃつけろ。さあ、行くぞ」


 ケイは私の手を引いて森へと入っていく。

 最近になって道を敷いたらしいけど、それも雪に埋もれてしまった。


「うわぁ………雪かき大変そう………」

「拓哉達にも手伝ってもらおうぜ?」

「だねー」


 まだ外は雲っている。

 雪降るのかなぁ………降ってる景色を見る分には幻想的だけど、雪かきをするとなると面倒だなぁという気持ちが強くなる。

 それに靴に雪が入ると気持ち悪くて嫌なんだよね。


「ほれ、そろそろ出ねぇと俺がライアにどやされる」

「はは………じゃあ、早く行こ」


 ケイが魔力を使えなくなった今、この屋敷を管理しているのはライアお姉ちゃんただ一人………一人だよね? 一機かな? いやでも一人だ。私の大切なお姉ちゃんだし。

 ライアお姉ちゃんは「もう一人いれば楽なのですが──ああ、ハギは駄目ですよ」と、私がお手伝いを申し出ようとする前に却下したけど………アテがあるのかな?


「うぅ………寒い」

「だな。靴は良いヤツ履いてよかった………」


 身が震えるほど寒い中、足まで寒いとか嫌だしねぇ………。

 私はケイの言葉に全面的に同意しながら門の外へ出る。


「………相変わらず、なんかボロいというか」

「治安悪そうだよな」


 あ、直球に言っちゃった。

 でも確かに、オブラートに包んでも仕方ないような気もする。

 ここ数ヶ月は人が寄り付かないような気もするし………。


「何でお家ここに建てたの?」

「土地が広い割に安かったから」

「えぇ………」


 お金を使いきれないほど持ってるのに………変なの。

 そんな私の心情を察したのか、ケイは門を閉めながら言う。


「金ってのはあって困ることがねぇのよ」

「………?」

「最低限、庶民として経済を回す一部程度に買い物すりゃあ、大成した冒険者ってのは金が有り余るんだよ」


 まあ大成した冒険者は大半が貴族になるけど。とケイは付け足し、私の頭に手を置いて「まあ、そういうのはこれから知っていけ」と言う。

 ………まあ、うん。

 常識はずれなのは理解してるし、あんまり難しい話はわからないことのほうが多い。


「ほれ、時間は有限だぞ?」

「うん! 早く行こー!」


 自然と私達は手を繋ぎ、王都の繁華街へと足を踏み入れた。


■■■■


「すぅ………はぁ………よし、行くぞ」

「そんな戦場に赴くんじゃないんだから………」


 呆れまじりにそう呟いてみるけど、私もケイと手を繋いでなければそうなってた気がする。


「あー、こんなになるってわかってたのに何故俺はマスクを持ってこなかったんだ………」

「あ、臭いのほう………」


 てっきり人が多いのが駄目なのかなぁって思ってたけど、違うらしい。

 ケイは半目で私を見て言う。


「お前が隣にいるんだから、別に人混みは怖くねぇよ」


 ………。


 ………………。


 ………………………。


「? 反応ないけどどした? おーい?」

「──はっ! ケイがとても男っぽかった」

「おい俺が女とかどういう了見だ?」


 睨んでくるケイ。しかし先ほどの言葉は──

 思い出して、耳が熱くなっていくのを感じた。


「は、はやく行こ!」

「お、おう………」


 疑問符を浮かべるケイの手を引いて、私は賑わう街中へと入っていく。

 大通りともなれば綺麗な飾りだいっぱい施されていて、見ていて飽きない。


「大通り全体にイルミネーションか………綺麗だなぁ」

「ねぇ」


 こうして、街並みを見ながら歩くのも、たまにはいいかなって思う。

 手を繋いで歩いているのもデートみたいで──!


「? どうしたハギ?」

「な、なんでもない!」


 意識しすぎないよう、私はお店の展示物を見る。

 今日は神様の誕生日だから、神様の司る太陽をモチーフにした飾りが多い。

 輝かしいイルミネーションも、そういうのを意識しているのかもしれない。


「………ハギ、お前ホント大丈夫か?」

「だ、大丈夫だよ?」


 ………ケイと話すと、これがまるでデートみたいだと意識してしまう。

 もちろんケイはそんなこと考えてないだろうし、そう思ってもないと思う。

 けれど好きな人と一緒にいたいと思うのは普通のことじゃん? でもこれをデートだと思ってるのバレたら確実に引かれるじゃん? 私とてどこぞの師匠に似て超がつくほどの臆病者になったし? え? 人のせいにするな………すいませんでしたね!


「まあいいや。王都散策でもしようぜ」


 ──あ、そういえばケイってこういう人でしたね。

 鈍感なのは仕方ないとしても、何かケイって所々抜けてるというかさぁなんかさぁ………いや別に不満という訳じゃないし? けど不満ではないわけでもないし………。


「あのさ、睨むのはやめてくんない?」

「えぇ………」


 とりあえず、私達はお洒落な外観の飲食店に入る。

 ライアお姉ちゃんにお昼は外食にしてと言われたのだ。

 お店はそれなりに繁盛していて、満席とまではいかないけど、結構な賑わいを見せている。


「──そういえば、冒険者ギルドには行かないの?」

「ああ? 今時か? やだやだ。だってあそこ酒場併設してんだもん」


 絡み酒と誘いがうざったいのよ。特に現ギルドマスターは………そんなケイの愚痴を聞いていると、おしぼりと水がやってきた。


「さて、何食う?」

「決まったよ」


 ケイが店員を呼んで、注文を伝える。私の分も。

 外では少しだけ雪が降ってきているようだ。空を見上げてる人も多い。

 窓際の席ということもあり外の景色は良く見えて、お昼なのにお昼じゃないような幻想的な感覚も、どこか心地いい。


「あー、軽く降るだけでいいんだけどなぁ」

「あんまり強いと幻想的もなにも無いよねー」


 雪かきがなぁ………と二人嘆く。

 外の雪かきはどうしても三人でしかできない。

 というか魔物が街中で雪かきしてたら憲兵モノだし。


「てか何か魔導具創るか? ブルーシートのような魔導具」

「魔法陣の応用だっけ? それ使ったやつ?」

「それそれ。火魔法ぶちこんどきゃ溶かせるだろ」


 雪の話からいつのまにか魔導具の話になっていたけど、ついに料理が運ばれてきた。

 店員さんは「ごゆっくりお過ごしください」と言ってさがっていく。


「………はぁ。麺ってするする食えていいよなぁ」

「えー、私は食感とかも楽しみたいんだけど」


 血は液体だから『味わう』ことを優先するけど、普通の食べ物なら食感を楽しみたいとは思ってる。

 ケイは「わからんでもねぇけどなぁ」とフォークでパスタを巻きながら言う。


「時間の無い時のお友達だ。朝はパンだが」

「遅刻ギリギリに食べながら走るんだっけ?」

「それで曲がり角で運命の出会い──って、お前も染まってきたなぁ」


 そりゃあ私以外別の世界からの転生者ですから! あれ? ツユちゃんとヒヨリちゃんは違うんだっけ? まあいいや。


「だって女子会すると大体『こんな出会いしてみたい──』みたいな話になるし?」

「さらっと言われたけどお前ら女子会とかするのな」

「え? 女の子が集まって恋バナすれば女子会って聞いたよ?」

「そりゃねぇな」


 笑って否定された。酷くない?

 しかしケイが言うにはスイーツの話などもするのだとか。中にはそのグループにはいない女子の悪口を──うわ酷すぎる。知りたくなかった。


「………それってお茶会みたいなモノ?」

「だなぁ………」


 ほぼ同時に食べ終わり、食後の雑談を始める。

 とりとめのない、本当の雑談を数分して、私達は会計することにした。


「いや、俺払うからいいって」

「いーや。ここは私が!」


 しかし会計前、どっちが払うかで少し揉めた。

 折半? そんな言葉私の都合のいい脳内辞書にはない。けれどそれはケイも同じな訳で。


「あのなぁ………今日は楽しかったし、お前さんとて買いたい物の一つや二つあるだろ? それに使え」

「ぐぅ! で、でも? 欲しい物ないし?」

「これから出るだろ。それに──」


 ケイが少し言い淀む。

 あれ? 心なしか顔赤くない?


「………花飾りとかネックレスとか、似合ってるのにそれだけしかないのもアレだろ? お洒落に使ってくれよ」


 ………。


 ………………。


 ………………………ふぁい?


「と、とにかく、ここは俺が──って、どうしたハギ?」


 お、おおヤバい。ヤバすぎる!

 ケイがイケメンに見える! いやもともと格好いい──って私何考えてるの!?

 いやいやいやそれにしてもケイがおかしいじゃん? あのケイが容姿というか服装を褒めるとか………はっ! これは夢か! 私が夢想してる夢なんだ! 早くこんな幸福な夢から覚めてよぉー!


「………何してるかわからんが、会計行くぞ?」

「え? ちょ、は、はーい!」


 とりあえず、これは夢ではないらしい。

 私はコートのきちんと着なおし、ケイの後を追う。


「………何でコート着ないの?」

「まず俺、最初フード付きパーカーだけでいこうとして拓哉に止められていてだな?」


 あー、パーカーにジーパンっていうアレ? 見たかったなぁ。

 でもそれじゃあ──


「ぶっちゃけすげー暑かった」

「ケイって結構厚着するもんねぇ」

「パーカーの下に結構着てるからなぁ」


 ちなみに私も厚着します。今回はライアお姉ちゃんとツユちゃんとヒヨリちゃんに止められました。

 ………いやだって暖かいじゃん。


「私も厚着したかったなぁ」

「お前はもう少し外見に頓着しなさい」


 チョップされた。軽いやつ。

 それから私とケイは近くの雑貨屋さんや服屋さんを見て回った。

 そこでもケイはいつものような軽く流すようなことはせず、きちんと感想をくれた。


 ………もしかして、これはクリスマスの魔法なのかな?

 きっとそうなんだと思う。けれど、私は花飾りとネックレスをケイから貰えただけでも嬉しいのに………これ以上幸せな気分を味わっていいのかな?

 というか朝ツユちゃんから言われたことが甦ってきたんだけど………いやきっと、ケイにそんな気はないんだろうけど………何故かにやけてしまう。

 それをケイに冷たい目で見られたけど、別に気にしたらいけないのだ。きっと。

とても難産だった………けど書ききったぞぉ!

(※満足してないので後程書き直します。書き足すとも言う)

更新です! まさか一週間かかるとは………!

ちなみに序盤の文章に三日かけました。そっからも悩みに悩みまくりました (※この後書きの大半が無駄話なので読み飛ばして大丈夫です)。


やはりこの空気は私無理です。もっとぐだぐだしようそうしよう。

というかやはり啓とハギは『ボケる師匠とツッコミを入れる弟子』が一番私の中でしっくりきます。

そういうのは拓哉達に任せましょう。

なお余談ですがこの物語のクリスマスはイエスの誕生日ではありません。というかイエスの誕生日になったのは四世紀頃だとか (詳しく知りたい方はググってみてください。キーワードは『ミトラ教 主神』とか?)。

サンタクロースも北欧の妖精とかが由来とか聞きますよね。そういうのめっちゃ好きです。関係ないですけど。


次回も啓の視点ではないのです。

さて、誰の視点にしようかな?

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