第173話 第一学年冬季休暇
夏にあれほど緑の生い茂った木々も葉の全てを落とし、夜風が冷たく朝もとてつもなく寒い朝。
冬というのはとても嫌になる。俺はあっつい緑茶を飲みながらそれを強く思う。
そして──
「ハギよ。暖炉の前で寝るな。風邪ひくぞ」
「大丈夫だよー」
──暖炉から離れないし、目蓋も九割がた閉じかかってる。
まだ朝早く、いくら寒いからといってここで寝られるもの困る。
………しゃーない。
「………すぅ」
「寝てるじゃねえか」
俺は手刀をハギの頭に落とす。
するとハギはハッとして、それに一瞬遅れて頭を押さえる。
「………」
「いや睨むなよ」
自業自得だろうが。風邪ひくぞ?
「ほれ、眠いならもう少し寝てこい。最近夜更かししてるからそうなるんだよ………」
「………ケイ、後数年で死ぬんだから、今は一緒にいさせてくれてもじゃん」
「………」
それを言われると何も言い返せない。
確かに、俺は後五年とせずに人としての寿命を迎える。
だが別に死ぬ訳ではないし、延命の目処も立ってはいるのだ。
………まあ。まだハギや拓哉には秘密だけど。
そんな事情もあり、下手に言い返せない。
「ねえケイ。ホントに死んじゃうの?」
「まあ、この身体は壊れるな」
今でもボロボロだ。近接戦闘はほぼ不可能。
右手だけなら………という感じもするのだが、あんまり無理はしたくない。
………無理して早死にしたんじゃ、意味ないからな。
「死なないよね? また………精霊になるだけだよね?」
「だなぁ………」
いやまあ、もともと人間じゃないけども。
何度も──あの日、俺がそのことを話した日から毎朝毎晩、儀式のように繰り返されるこの問答。
実際ハギは、本当に心配してくれているのだろう。
これでハギが凄い成果でも挙げてくれれば、俺は安心して逝けるのだが………。
「肉体が尽きても、また…まほ、お………」
何事が呟きかけ、突然ハギが倒れる。
貧血と寝不足が祟ったのだろう。俺はハギを抱え、ソファーに寝かす。
「貧血は俺の血を使ってどうにかしないと何だが………」
参った。素直に降参だ。
………俺以外の血、コイツ嫌がるんだよな。
でも今の俺の血はたぶん、ハギにとって『毒』だろうし、ライアはそもそも血が流れてないし………。
「クッソ………魔術も使えない今の身体が憎いなぁ」
魔力は封印され、魔導具も魔道具も使えなくなった。
………いや。
「無いなら創ればいいじゃないか」
俺は『精霊創造』を発動させた。
毎度のことながら更新遅れました。
さて一気に時間は進みました。冬って一日中寒いですよね。
いや年がら年中朝は寒いです。寒いの苦手なんですよねぇ。
冬休み、毎回私は炬燵に入ってずっとダラダラしてるなぁ (友達が少なく積極性皆無なのでSNS上でも誰とも絡めない人)。