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100回目の転生で精霊になりました  作者: 束白心吏
第四章 精霊達の青春………?
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第172話 第一学年二学期 体育祭26

~ハギ視点~


「………はい?」


 ケイの呟いた言葉を、私は理解できなかった。

 いや、耳には入った。きちんと聞いていた。

 けれどそれを受け入れることを、私の脳が拒否したと言うのが適切なのかもしれない。


「それは………説明していただけるのですね?」

「ああ。けど、これは他言無用だぜ?」


 ケイの言葉に、私とライアお姉ちゃんは頷く。

 私は口が固い方だと自負してるし、ライアお姉ちゃんも誰かにもらすような事はしないと思う。

 ケイは「念押しするようで悪いな」と言って、話を始めた。


「んじゃあ経緯を話すからなー」


 そう言ってケイはコップの中の水を飲み干す。

 ガタッと音をたてテーブルに置いて、話し始める。


「まず今回の転生はいつもとは異なり『全部』を押し付けられての転生………まあここまではいいな?」


 私はフルフルと首を左右に振る。


「………じゃあそこからな。

 本来俺は女神サマの駒………言い方が悪いな。使徒としてこの世界に転生するんだ。まあ目的がある時、だな。神は現世に干渉するのが難しいから、俺を『端末』のように使って、情勢を見るんだよ」

「? じゃあ今回もその『使徒』としての転生なの?」

「それが違うんだ」


 ケイはコップに水を注ぎイッキ飲みする。

 喉乾くの早すぎじゃない?


「俺はあくまで『端末』。端末を転生させる時、目的に見合った技能を載せて転生させるのが今の常套手段なんだ。まあ俺の使えるスキルしか載せられないが」

「??」


 頭がこんがらがった。

 使えるスキルしか載せられないの? なら、ケイは『端末』として使うには不適当じゃないかな?


「たぶん、ハギが思っていることはわかる。確かに俺は『端末』として使うのには向かない。

 載せられるスキルってのは『端末』が生前持っていたスキルのみ………なら『異世界人』であり『スキル無し』の俺を『端末』にするのは、誰から見ても非効率であり非合理だ。

 けど俺は最初、『端末』としてではなく『異世界人』としてこの世界に転生したんだ」


 ──! そうか! そうなんだ!

 私は理解する。


「ケイは『ケイのいた世界』から『この世界』に転移して、その死後から『端末』として転生してたの?」

「そゆこと。本来なら記憶を消して『聖人』として転生させるんだ」


 まあ残ってんだけどな。と頭をつんつん叩き笑いながら言うケイ。


「んで、今回は記憶を消していなければスキル以外も全部、俺の取得してきたスキル全部を持たせての転生って訳。最初からおかしくはあったんだよ」

「それが、魔力が使えなくなったことにどう繋がるの?」


 確かに、異常であることはわかった。

 でもケイの魔力は無尽蔵と思えるほどに多い。そう簡単に消滅するようなものではない。

 なのに私はケイの魔力の一欠片も感じられない。

 ………念話も、使えなくなっている。


「過去全てのスキルや知識は人の肉体に入れるには大きすぎて、俺は『精霊』として転生した。覚えてるだろ? 俺の姿がうっすらした頃だ」


 覚えてる。忘れるはずもない。私は強く頷いた。

 またケイに会えたあの日、私は今までに忘れたことがないのだ。


「あれから紆余曲折あって肉体を手に入れて、現在の姿になったんだが………駄目だな。本来あり得ない程の力に、肉体は耐えられなかった。そして俺の中で『何か』が生まれた」

「『何か』?」


 私の無意識の呟きに、ケイはうなずく。


「女神サマはそれを『神力(しんりょく)』と呼んでた。神の力と書いて神力………女神サマ曰く、神として覚醒してきたんだと」


 ケイが『精霊神』という種族になっていたのは知ってる。それを『あくまで仮の種族だ』と言っていたのも。


「この力に完全に目覚めれば、俺はこの世にいられなくなる………いや、どこにも居場所がなくなるのかもしれない。俺は『精霊』から外れた存在だからな」

「『精霊神』なんて神様の枠はない………だっけ?」

「そういうことだ」


 私の胸の奥が苦しくなる。

 悲しい記憶が溢れてくるような感覚に、不快感を感じながら、私はケイの言葉の続きに耳を傾ける。


「だから女神サマは、後三年だけ人として生きられるようにしてくれた。その代償が『魔力封印』。体内の魔力で『神力』の完全封印を行い、覚醒までのタイムリミットを延ばす儀式」

「それで魔力が使えなくなったの?」

「まあな」


 そう言って、ケイはまた水を飲む。


「まあ『体外魔力操作』って魔法もあるし、日常生活に問題はないんだが………まずハギよ。お前さん。何か異常はないか?」


 突然話を振られて困惑したけど、私は自分の姿をパッと見る。

 背丈に変わりはないし、肌の色が変わったこともない。

 あと………あ。


「髪の色が変わってる!」

「今気づいたんかい! まあいいけど。それも『魔力封印』の影響だ………ちと待て」


 そう言って、ケイは虚空から物を取り出す。

 ………?? 魔法、使えないんじゃないの?

 けれど私の予想と裏腹に、ケイは腕輪を取り出した。

 これにはライアお姉ちゃんも驚いてる。


「ほれ、この腕輪を使え。それを使えば髪の色は戻るし、有り余る魔力も多少は抑えられる」

「? 私別に魔力は──!?」


 魔力に意識を向けて気づいた。

 私の中で『何か』が魔力を吸収し、私の魔力を安定させていることに。


「まだ俺の魔力が残っているからいいが………まあ腕輪だ。デザインもシンプルだし、お守り代わりに持っておけ」

「はーい」


 私はケイから腕輪を受け取り、左腕につける。

 真っ白な腕輪は、少し違和感を感じるけど、それはアクセサリーをつけた時のような感覚。だからすぐ慣れるような気がした。


「これからは更に魔力操作を極めてもらうからな?」

「………はーい」


 私は渋々頷く。

 魔力操作は苦手。魔法を暴走させかけるから一応頑張っているけど、やはり得意ではない。

 ………けど、今以上に魔力量が増えるなら、しょうがないね。自分の魔力量を初めて鬱陶しく思った。


「まあ他にも色々やったが………国王も改心はしたようだし、空間も魔導具で代替は可能だ。まあ『精霊契約』はやり直す………いや、ハギに見合う精霊を用意するか?」

「やり直して欲しいです」


 やり直してください (真顔)。

 ケイとの強い繋がりだし、私はケイと契約したい………駄洒落じゃないのに駄洒落になることってあるよね。


「ん? まあいいけど」


 じゃあ後でな。と言い、ケイは再び水を飲む。


「………マスター。疑問なのですが、それは魔法ではないのですか?」


 ライアお姉ちゃんが突然質問する。

 ? 何かおかしい所、あった?

 私が疑問符を浮かべていると、ライアお姉ちゃんは続ける。


「水入れは確かに容量が大きいですが、水の勢いに衰えがないのはさすがにおかしいかと………」

「そこに気づくとは流石よのう………まあ、それくらいなら」


 ケイは人差し指を立てる。

 すると水色の光が顕れ、空のコップに水が注がれる。


「………は?」

「精霊だよ。俺の新しい力」


 そう言って、ケイは笑った。


■■■■


 振替休日明けの私達のクラスは、どこかいつもより明るいような気がした。

 きっと体育祭で準優勝できたからだろう。

 私はそれをどこか遠い世界のことのように感じていた。


「おはようハギさん………あれ? 啓は休み?」

「おはようタクヤさん。うん。体調が優れないんだって」


 実際は『今日は学校もとい外に出られない』だけど、そこは些細なことだと思う。

 だって今、ケイは──


「おー、静かにしろー」


 教室のドアが開かれ、担任が入ってきた。

 私はこれからの学園生活に一抹の不安を抱えながら、担任の話に耳を傾けた。

零れ話


日由「あらあら拓哉さん。ハギさん、どこか悲しげよ?」

拓哉「そうね日由さん。啓がいないから、あの子黄昏ているのよ」

二人「「青春ねぇ……」」


露「(………井戸端会議みたい)」








はい。更新です。

体育祭編はこれにて終了! 次回から一気に二、三ヶ月くらい時間がとびます。

冬かぁ………色々書きたいけど、まずはどうしようかなぁ。

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