第168話 第一学年二学期 体育祭22
小さな祝賀会は食事だけで終わった。
ハギは風呂へ、ライアと女神サマは片付けを。
俺は今回の主役の片割れとのことで、片付けに参加できなかった。
だがら、一人暗い廊下を歩く。
結構つらい。一歩前に進むたび視界が大きく揺れるし、何故か脳裏には辛い記憶が過る。
風邪、なのだろう。俺はそう判断して寝室兼書斎の扉に向かう。
その間も、目眩が凄い………。
「はい。ストップよ啓」
突如、後方から『力ある声』に物理的に動きを止められる。
こんなことできるおかしい奴なんて、今はこの家に二人しかいない。
一人はライア。そして──
「あー、やっぱりそうなったのね」
──創造神の女神サマだ。
「やっぱ………って、どいうこと、だよ………」
「そのまんま。そうなると、私が予想していただけよ──喋りながら行きましょ」
ライアが倒れかけた俺を支える。
………もう、喋る気力も残ってない。
「まあ、アンタの容態はアンタが一番わかってると思うけど………『ソレ』はアンタの『誓約魔法』でも封印は出来ないわ」
「………」
わかってた。内から溢れでる、魔力とは異なるモノ。
これを『封印』は出来ても──
「リソースが莫大すぎて、他スキルを強化すれば、それでもアンタの肉体は爆散するわ」
──マジか。
俺の想像以上の事に、言葉を失う。
それほどまでに『コレ』は凄まじいモノということか。
「だから、アンタには──」
女神は二つの選択肢を与えた。
そして俺は悟る。この選択で、俺は誰かを傷つけることになると。
「さあ、選びなさい。私はアンタがどちらを選んでも──責めはしないわ」
俺は──
女神サマは、俺の『選択』に笑みを浮かべた。
■■■■
──ぼくは人形だ。
──大丈夫、大丈夫………。
誰かが言い聞かせるように呟いている。
寒い………どこか、こことは違う場所で。
──人形は傷つかない。
──人形は泣かない。
──人形はいつも笑顔だ。
──ああ、俺だ。これは。
目を開くと、そこは俺の寝室だった。
月の光が窓から零れている。まだ夜中のようだ。
「………嫌な夢だこと。ホントに風邪ひいたんかね?」
そう呟き、俺は衣服が汗で少し濡れてることを自覚した。
「………風呂入るか」
温くなってるなら、魔法でも使って暖めりゃいい。
俺はそう楽観視して風呂に入り、そして──
「──そういや魔法使えなくなったのか」
俺は掌の中で小さく燃える灯を見ながら、そう笑った。
自分は人形だから、何も感じないし、動じない。
大丈夫………大丈夫。
大丈夫なはずなのになんで、ぼくの胸はこんなにも苦しいのだろう?
はい。更新です。
こっからシリアスを2~3話以上の間続けるので覚悟しておいてください (まあ私が書けるかどうかも問題ですが)。
次回は体育祭最終日。そして魔法を使えなくなった啓は──って感じの内容を予定しております。あくまで予定です。