第162話 第一学年二学期 体育祭16
サブタイトル詐欺
──『魂の色』。
本来『魂』に色はない。
しかしこの女神サマには『魂を色として識別』する力があるのだ。
「『魂の色』ねぇ………俺の魂真っ黒そ」
「あ、それ私も思った」
「この師弟ホント似てきたわね………」
女神サマは呆れ半分の表情で呟く。
ちょい女神サマ。口に出てますぜ?
「はいはい。脱線はさせないわよ。
──啓は知ってると思うけど、魂に色はないの」
ハギの頭上にクエッションマークが浮かぶのが見えた。もちろん幻想だけど。
「私はあくまで『魂に色つけて識別』してるだけ。他の見方もしようと思えばできるの………まあ、一番簡単な見方がそれだっだけの話なのよ」
「………?」
「後で啓にでも説明を聞きなさい。今は話を続けるわよ。
私が惹かれた啓の魂の色──真面目な質問だけど、啓。あなたは何色だと思う?」
唐突に女神サマが質問を投げ掛けてきた。
いや真面目にて………色々押し付けられて色々考えていたと言うのにか?
「………灰色?」
「惜しくもなければ掠りもしなかったわね。
あなたの魂は『透明』だったわ。
本来、魂にはその人の個性が出るものなの。例えば赤ければ情熱的だったり、青なら冷徹だったり」
「俺にはその『個性』がなかったってか?」
「………正確に言えば『個性のないことが個性』だったのよ」
個性、ねぇ………。
詳しく聞くと、魂の色とは個性の強さと性格によって色合いや濃さが決まるのだとか。
その色が透明、ねぇ………。
「………あー、俺何やっても否定されて結構精神的にアレだった時期だからなぁ」
「そうだったわね。まあ、あれは酷いと思うけど………ああそういえば、地球は面白いことになってるわよ」
「興味ないんで。つーか無気力虚ろ状態だと魂の色とやらも変わるん?」
「普通は変わらないわよ」
………ん? 違うのか。
女神サマは説明を再開する。
「魂の色自体は変化していくものよ。特に子供は。
子供は様々な世界に触れるから、一日で何回も魂の色が変わることだってあるの。色も濃いわ。
啓の場合は………幼い頃からやることなすこと全てを否定され続けた結果、個性といえるほどのモノが無かった………そう考えられるわ」
なるほどなぁ………そりゃしゃーない。
親から同級生から、同僚や上司からも否定され続けた俺。
今思うとそうなってもしゃーないことしかなかった。
「………こんな暗い話が本題じゃないのよ。
けれどそんな啓の魂は特殊だったの。
生への渇望はないクセに平穏を望み、ある程度の知識も持ってるし一応若い………『黒谷啓』という器はこの世界の発展にはとても適していたのよ」
「というか発展しなさ過ぎだったろこの世界………」
「それもまた一つの運命………そう言われたらそれまでだけど、私は人間を創造したんだから。子供達により良い暮らしをしてもらいたいという願望もあるわけよ」
「『神は神に似せて人を創った』ってヤツか?」
「聖書の一節だけど………まあそうね。
私は私に似せて人類を創った。けれど、それも失敗だったわね」
女神サマは遠い昔のことでも思い出しているのか、どこか遠い目をしていた。
………ああ。けれどアイツらは、確かに失敗だった。
「欲望も薄く、野心もなく………ただ快楽と恐怖には敏感だったな」
「故に人類は滅ぼされた。そして新たな生命が生まれた」
神が創った人間はこの世にもういない。
懐かしい………けれど、やはり俺という存在は許容されなかった。
「次の人類は啓を神と拝んだ」
「そしていつの間にか、魔法を使い俺を殺そうとしてきた」
そして次の人類は──
「マスター。湯浴みの準備ができました」
「──そう。じゃあ、また明日。話しましょう」
「………だな」
どうもこういう雰囲気は好きじゃない。
ハギも暗い雰囲気を纏いはじめていたし、時間的にもいいころだ。
「ハギ、女神サマと入ってこい」
「あ、うん」
どこか返事も上の空だ。
「それじゃあ、一番風呂はいただくわ」
「ほいよ」
「準備はこちらで済ませております」
「そう。ありがとう」
ハギと女神サマは浴槽へと向かう。
ライアが紅茶を淹れながら、俺に質問してきた。
「過去の話ですか?」
「女神サマが何故俺を転生させようとしてたかの話だ。まあ、脱線しまくってたけど」
少し無理矢理ですが一旦区切りましょう。
いや、これ以上書くと時間がですね………。
さて更新です。ギリギリだぁ………。
次回は普通に体育祭です。
ちなみに啓の通っている学園は小中高一貫校という設定なのですが、作者自身がどんなところか知らない為、結構大雑把です。そして体育祭は初等部、中等部、高等部でそれぞれ別々に行われており、高等部は特に豪華という設定です。