第161話 第一学年二学期 体育祭15
「あら、遅かったじゃない」
帰ってきてすぐ、女神はそう言って俺達を出迎えた。
優雅に紅茶を飲みながら。
「ただいまー………なあ? さっきの親子っぽくね?」
「そうね」
「それ根に持ってたんだ………」
いや根には持ってないぞ? そもそも恨んでもないし。
それに家族っぽい会話って俺達してないのよ。
………日常的に魔法の話をしているのはおかしいからな? 特にその話題に持っていくハギ。『御伽話に出てくる魔法が~』とか『将来大魔法使いになる!』とかじゃなくて普通に『この魔法のここなんだけど~』とか普通の家庭じゃそんな話食事中にしないぞ?
「まあいいじゃない。私も久々に子供達の姿を見れて嬉しいし」
「え? 天から覗けるんじゃないの?」
「神様視点で見ているのと実際に見るのは違うのよ」
はぁ~、とため息をつく女神サマ。
しゃーないだろ。そもそも俺そんなこと知らんからな? 子孫残したこともないし天から地上を見下ろしたことも………ないし?
「それに、ただ見ているだけじゃ気づけないことだってあるのよ」
「………そっか」
そりゃそうか。女神サマとはいえ全知全能でもなければ万能でもない。
ただ少し『創造』が得意なだけの神でしかない。
………けれでもそれ故に、万物の母である女神サマはどこか達観した表情で続ける。
「子供の成長とか、変化とか。私が創りだした子供達の子孫が今この瞬間、人生を謳歌してる姿はやはり生で見た方が良いわね。活気が違うわ」
んー、視点が創造神。さっぱりわからん。
つーかわかったらわかったでアレだけど。
「それに私の才能を見てもらえるってのも最高だわ」
「あー、やっぱソレ創り直してたんだ」
俺が女神サマを指差しながら言うと、女神サマは満足気に頷く。
普段から女神サマは本体を人前に出さない。
まあ色々な事情があるんだろうけど………実は女神サマの本体は俺も見たことがない。
ライアが知っているかもしれないが、今のところ聞く予定はない。
「??」
「あー、スマン。ハギが追い付いてない」
その後、ハギに必要最低限女神サマのことを教えた。
ハギ自身『へぇ~』と遠い目をしていたので、そこまで深くは教えていないが………まあ気になったら調べるだろ。
「マスター。夕飯の準備が整いました」
「ん、はいy「あら、それじゃあ啓。そしてハギちゃんも着替えてきなさい」………へーい」
んー? ちょい待ちや。この家の主人一応俺なんだけど?
■■■■
「──さて、真面目な話をしましょう」
夕食を終え、ほっと一息つくと、女神サマは唐突に切り出してきた。
「今回は何? また世界をどーにかしろとか?」
「違うわ。今回はね………」
女神サマは優雅に紅茶を飲む。
………なあ、それ一応ウチで取れる最高級の茶葉なんですけど? つーかどんだけ飲んでるんだよ。
ちなみにライアによると一割は消費したらしい。
「今回はアンタのことよ。ケイ」
「………は? 俺?」
想定もしていなかった事に、俺は素っ頓狂な声を上げてしまう。
いや本当何?
「この世界──ケイが名付けた名称でいうなら『デファレント』だったかしら? に転生させ続けて早百回目。百一回目の人生は楽しいかしら?」
「………『人生』じゃなくね? まあぼちぼちって感じだけど」
一応人の形をしてる訳だし? まあ数回別の生き物にもなったから百一回目の『人』生かと言われるとあれだけど………。
「まあ不便はしてないのね。じゃあ、言ってもいいかな」
「ん? 女神サマって『百面相』持ちだったか?」
「私が持ってなくてどうするのよ」
そりゃそうか。
俺は話を続けるよう促す。
「別に続けるわよ普通に………まあ普通の『人生』ではないわね。私自身、あなたには昔から無茶をさせたし」
あ、自覚あったんすね。
「まあ、その理由も話してしまいましょう………ああ、勿論ハギちゃんは一緒にいて良いわよ」
「え? ………それじゃあ」
なんとか事態を飲み込ませ、まだ多少の疑問があるはずのハギを呼び止め、女神サマは話を続ける。
「まずケイの今の状態からね。
ケイ、あなたは今便宜上の都合で『精霊神』という種族になってるわね?」
「最近ステータス見てないけど?」
「じゃあ見なさい」
────────────────────
名前:黒谷啓
種族:精霊神
Lv隗」隱ュ荳崎?
職業:学生、冒険者
繧ケ繝??繧ソ繧ケ
逕溷多蜉?荳肴?
鬲泌鴨縲?:隗」隱ュ荳崎?
蜉帙??縲?:貂ャ螳壻ク崎?
遏・蜉帙??:譛ェ遏・謨ー
謨乗差蜉?謨ー蛟、蛹紋ク榊庄閭ス
驕九??縲?:隗」譫蝉ク崎?
ス繧ュル
『叡智LvMAX』『魔法創造LvMAX』
称号『霆「逕者』『雜エツ者』
────────────────────
スキルが統合されたりしてもうわけわからん。
つーか大半が文字化けしてるし。
「文字化けは仕方ないわ。
それより種族は見れたわね? ステータスの表記きは『精霊神』とあるけどあくまでもそれは便宜上のしかたのない表記なのよ。簡単に言えばケイ。あなたは本物の神様ではないの。
今のケイは私の使徒ってところかしら?」
「昔と変わんなくね?」
「そうね。けれど………」
女神サマが掌をこちらに向ける。
魔法を、人知を超えた何かを放ったのがわかった。
「もう一度、ステータスを見てみなさい」
────────────────────
名前:黒谷啓
種族:精霊神
総合能力:S
技能:『叡智』『複製技能:魔法創造』
権能:『精霊創生』
────────────────────
めちゃくちゃ簡略化された。
何これ見るの楽だわー。
「成功したようね。
それは『神様専用』のステータスよ。細かいことはわからなくした分、文字化けとか不明という文言は出なくなったわ。そして総合力も神様基準だから、あなた位の力なら測れるわ」
「ありがてぇ………」
けどまあ色々気になるとこもある。
まず『魔法創造』が複製技能だったところか。
複製技能とは名の通り『複製された技能』。
スキル『複製』の派生の一つ『技能複製』によって創られる『特殊技能』。
まあ『複製』故に効果が数段落ちてるし、モノによっては回数制限だって課される。
「まあ私くらいの神が『複製』を使えば、この程度の性能にはなるわ」
ほぼオリジナルと同じ性能なんですがね?
回数制限なし。性能低下もほぼなし。そして使い勝手はまあまあだから………やっぱ釣り合い取れてねぇよ。
「話を戻すけど………私は今、あなたを正式に『神』として認めたわ」
「それは感覚的にわかる」
何というか………感覚が違う。
今、俺の感覚は万能感に支配されかけている。
感覚は鋭敏になり、感じ取れる情報も多くなり、やる気になれば世界全体を技能を使わずに把握できそうなほどの万能感。
これが『神』と呼ばれる者達の領域なんかねぇ………疲れそ。
そして俺の内側には何か『違和感』も生まれていた。
「そして神になったが故に『固有技能』も生まれた」
「『精霊創生』ってやつ?」
「ええ。内容まではわからないけど、強力なのは確かね」
なるほど。
まあそういうのは自分で確かめてみるものだ。
それもまた一興、ってな。
「あのー、少し………いいですか?」
「ええ、何でも聞きなさい」
ハギは少し躊躇いながら質問を口にした。
「そのー………なんでケイを、そんなに転生させていたんですか?」
………確かに気にはなる。
まあどうせ偶然だろ。と勝手に解釈していたが、案外そう言われると気になってくる。
「あー、そうねぇ………強いて言えば『魂の色』に惹かれてかしら」
体育祭とは (まああくまで体育祭の時期の話だし? セーフセーフ全然セーフ)。
はい。更新です。遅刻とか言わないでください私豆腐以下ですからね? メンタルが。スライム以下なんで。メンタル。
さて余分なことをどっさり書いて、当初書こう書こうと楽しみにしていたことが全然書けていない。
つーか忘れて楽しんでた………最近忙しくて記憶が飛んでることもあります。不思議ですね。
何はともあれ衝撃的な事実が発覚ですね。まあこの作品のモチーフの一つとなった神話では水の精霊はいましたが『精霊神』なるものはいなかった………はずですがうろ覚えなので誰かヒンドゥー教について教えてください。
さて次回の更新も滅茶苦茶遅れますよ? というか最近学業が忙しいんですね (私事なのですっ飛ばして構いませんよ?)。
今、簿記検定を頑張っているのですが………まあ今年度から習い始めて現在二級ですね。それがまた面倒なんです。もちろん後の執筆の糧になるので頑張れますが………ぶっちゃけ同じ問題ばかり解かせるので問題覚えちゃったという非常にヤバい案件が発生してます。まあほぼ完璧ですし、後の二年の学生生活を楽するため何としても今年度で取得しておきたい資格なんですが………どうしよう。今回はご縁がなかったということで諦めるか (誰目線だよ)。
まあそこにバイトとかも入っているので大変ですって話です。
次回も引き続き体育祭要素皆無の予定です。いやホントすんませんサブタイトル詐欺で………。
あ、神話伝承に関する考察について「こんなの知ってるよー」という方は是非感想欄や私のTwitterまでお願いします。どんな神話のどんな伝承でも構いません。むしろ神話伝承以外にも特定の地域でのみ受け継がれている民話とかでもぜんぜんOKです!
ユーザー名は@Tukashiroのはずです (うろ覚え)………まあその垢で小説の宣伝なんて一回もやったことありませんが。
蛇足ですが本文中の文字化けは『文字化けテスター』を使わせていただきました。楽しかったです (小並感)。