第153話 第一学年二学期 体育祭7
あの後も放課後練習の後、ハギは特製空間内で『魔力放出』の練習をしていた。
そんな日々を過ごし………いつの間にか体育祭二日前。
俺達は『魔法維持走』の放課後練習をしていた。
「はぁ………これ、結構きついね」
「そりゃな………」
体は鉛みたいに重たくなるし後ろからのプレッシャーし………先頭を走る者の宿命だよな。
俺も一回はあったもんよ。
あれは小学生の時だったけな………。
連想ゲームのように黒歴史へと直行した思考を遮るように、パチパチという拍手が聞こえてきた。
「さすがだね! まさかここまでやれるとは!」
そう言うのは『魔法維持走』練習初日に俺達に話しかけてきた『魔法抵抗を上げよう!』の人。名前はレイジ。
ちなみに『筋肉を鍛えよう!』の人はマルスで、『魔力を鍛えよう!』の人はマギルという名前らしい。
「いえ、先輩の教えのお陰です!」
「ははっ、そう言ってくれると嬉しいね」
レイジ先輩とハギはそのまま会話に花を咲かせていく。
………ん? ハギお主、俺の同類ではなかったか?
まあハギも成長しているのだ………俺とは違うな。うん。若い奴らの笑顔を見るだけで俺は満足だ。
いや話が変わっとるっての変わりすぎだってのよ………話を戻すが本当どうしたんだハギ。まさか『話術』スキルで習得したんか!? 俺なんて習得しても駄目だったけど。
「──それじゃあケイ君も、今日はお疲れ。明日からは大変だから、しっかりと疲れをとってね」
「はい! ………え? 明日から?」
笑顔で帰路につく先輩にふと昔、準備に苦労した記憶が甦る。
あー、うん。今日は特訓も無しにしたほうがいいな。というかさせる。
ライアにも言っておかんとな。
「………え? どゆこと?」
「まあ帰ろうぜ? 説明もするから」
■■■■
「──なるほど。では、ハギは先に風呂に」
準備はできています。と、ライアはハギと共に風呂場へ向かう。
さて………食器洗いを終えた俺は、更に記憶を辿る。
んー、まあ三年に一度ってこともあり、結構前から準備は進んではいたんだよな。生徒会主導で。
それを前日に全て設置するからなぁ………どれだけ魔力があっても足りない。
「──ところでマスター。本当に、当日は私も見に行ってよろしいのですか?」
「おう。ハギの勇姿をしっかり撮ってやれ」
戻ってきたライアと、三度目となる問答を行う。
………こいつもこいつで、ハギのこととなると途端にとても慎重になるよな。
「………それにしても、噂には聞いた『アレ』ですか」
「面白いよな。生徒と教員全員で客席を運ぶなんて」
まあ疲れはするが、結束力や団結力というものは育まれるな。疲れと釣り合いがとれているかはさておいて。
「確か前、マスターは『ありゃあ魔力によるごり押しだ』と申しておりましたね」
「事実なんだなぁ………」
準備中、作業は二手に別れる。
片方は客席を運ぶ係で、もう片方は魔法で補助する係だ。
手順としては、運ぶ係が魔力で身体を強化し、そこに補助が付与魔法の『筋力増強』で更に強化。そのパワーで無理やり客席を運ぶのだが………。
「筋肉って確かに必要だけど、この場合はある種の思考停止なんだよな」
というか、何故キャスターをつけない。
まあ俺もそういうモノは伝えてないが………頑張れよ。お前達も人間だろ。その知性を魔法の発展以外にも使えよ………。
「とはいえ、農民の技術は進化しております」
「そりゃまあな………」
どうせ作物育てるなら、良品質の作物を育てたいだろ?
俺達はこっちの世界で何百年もの年月賭けてきたんだ。
その伝統が、今も受け継がれている………よろこばしい。
「まあなにはともあれ、ライアは来い。『妹』の勇姿、目に焼き付けてやれよ」
「──ええ、永久保存の可能な高性能魔導具を用い、全身全霊を賭してハギの勇姿を捉えましょう」
「おう。んじゃあ、当日の家事は………」
ライアは一人で色々やりすぎだ。
本来数人から十数人で管理するような………もしかしたら、百人いても管理が大変なこの屋敷の家事を一人で全てやっているのだ。
………そろそろ、新しい魔導具でも作ろうかね。
そんな思考をしながら、当日の家事担当を決めるのだった。
やっと次の次くらいの話 (の最後らへん)であのキャラ出せる…
すごい嬉しい。まあうまく書けるかは疑問ですがねぇ。
ちなみに今後のストーリー的に重要なキャラが登場したからと行って、体育祭終了後すぐに新章開幕はありません。
私がこいつらの学園生活を書きたいので!
というか書き足りないので。まだまだ一波乱も二波乱もありますから。まあ戦闘シーンはあまりないですが。