第152話 第一学年二学期 体育祭6
初日ということもあってか、今日は基礎知識の復習だった。
魔法抵抗とは、一種のスキルだ。
だが『水魔法耐性』等というスキルはない。
普通の『魔法耐性』はあれど、特定の属性に対しての耐性はない。
………それに『魔法耐性』は魔力への耐性もつくから、魔力暴走の危険性も少なくなる。
今後のハギには必要なスキルであろう。
「──じゃ、『魔法維持走』の練習を始めるぞ」
「………やっぱ意味なかったんだ。あれ」
ハギが呆れた表情で呟く。
場所は我が家の一室。
見渡す限り草原と青空しかない、手抜き感満載の『創造空間』。
「ま、競技には関係ねぇなぁ………」
でも一応やる意味はあるぞ?
魔法抵抗力は一度スキルとなってしまえば、操作も容易い。
魔法抵抗が身に付き、『魔法耐性』スキルとなれば、いざという時だけ魔力を解放することもできるのだ。
そうすれば、俺の『制約魔法』も必要なくなる。
「で? 練習方法って?」
「結構乗り気だな………これを使うんだよ」
俺はリストバンドを取り出す。
そしてそれを放り投げる。
「何これ?」
「まあ………着けてみ?」
あえて何も教えずに着けるよう促す。
怪訝そうな表情をしながらも着けるハギ。
………信用はされてるのな。
あんまそういうモノは向けられなかったから、ちとくすぐったい気分だ。
リストバンドを着けた直後、その変化は起こった。
「………うわっ、これ──!」
「おー、魔力で抑え込むな。逆効果だから」
外見に変化はない。
だが、魔法の才がある者ならわかるだろう変化をしている。
ハギの魔力が暴風を作り出す。
その魔力光は赤、白、青、黄、紫………刻々とその『性質』を変化させていく。
幻想的であるが………『制約』してこれとか、本来の魔力量精霊並みかよ。
「じゃあ………どうしろって………」
「魔力を放出すんのよ………こうやってな」
俺は深呼吸して、己の魔力を体外に吐き出す。
コツとしては、己の体を切り離すような感覚なんだが………まあ、コツとか感覚は人それぞれだからなぁ。うまく説明できる自信がない。
だからこそ実物を見せたのだが………まあそれでできたら苦労しないわな。
「すぅー、はぁー」
「別に深呼吸は必要ないぞ?」
「………いや、息整えただけだから」
人の行動に茶々をいれたくなるのは俺だけなのかね?
まあそれはさておき、苦戦している。
俺から教わった技術を駆使して、どうにかして魔力を吐こうとしているが、違うんだよなぁ。
「ハギよ。魔力には『魔素』を引き付ける効果があるのを忘れてないか?」
「………体外には、吐き出せないね」
これが難点だ。
魔素………体外魔力と体内魔力は、引き付け合う性質がある。
磁石みたいなものだ。
魔法とは『体内魔力』に指示された形と『法力』という力を用い、『体外魔力』が形を具現化させるもの。
故に魔力は触媒。
魔素を喚起するための唯一の手段。
本来なら体外にでることはない、人の命の源から溢れ出ているエネルギーの塊でもある。
そんな魔力の変化・暴走させる魔道具。
それがリストバンドの正体だ。
だからこそ魔力を『放出』するのではなく『切り離す』感覚なのだが………。
「まあな。始めて初日でできたら俺いらねぇし」
「もう外していいの?」
「おう。今日は試しに、って感じだし」
ハギは即座にリストバンドを外し、何度も深呼吸をする。
………魔力に酔ってたのかよ。
まあ無理もないか。
「………ところで、ケイが本気で魔力吐いたらどうなるの?」
「………空間壊れるんじゃね?」
「マジか」
マジだ。
一応、実践済みです。
魔法の設定がややこしい。
まあ一応『魔力』と『法力』を使うから『魔法』と呼ばれてる。みたいな感じの設定なんですが………なんか少しずつ魔法の設定変わってる気がするので、後で昔の設定を変えていきます (主に説明の仕方とか)。
ちなみに『法力』は仏教的な『法力』ではないので、読み方も『ほうりき』ではなく『ほうりょく』とさせていただきます。
『法力』の細かい説明などは、本文内でいつか………早くて今の章で紹介しますので、そちらに期待していただければ幸いです。