第144話 ジェネレーションギャップ
今回伏字多いです。
久方ぶりに帰ってきた我が家は普通に落ち着く。
こうやって、自室でまったりするのも、なんだか久しぶりだ。
学園に入学してからは、拓哉達といたから騒がしくない時間なんて無かったし、夏休みは旅行に行っていた………うん。大半自業自得だな。
とはいえ、静かな空間も賑やかな空間も、どちらも赴きがあり好みではあるが、今はこの静かな空間が心地良い。
──俺らしくもなく物思いに耽っていると、扉を叩く音がした。
「ライアです。お客様──勇者様ご一行がお越しになられました」
………え? 早くね?
まだ帰ってきて数時間と経って……いるけれどもな? さすがに情報が早すぎる。
ん? 複数の足音が聞こえるぞぉー?
「久しぶりだなぁ! 啓!」
「………あ、お久しぶりでーす」
「反応悪いな!」
そりゃあな………長旅で疲れているんだ。最後は徒歩だぞ徒歩。
まあ客人はもてなさんとな………どこぞのギルド長のようになったらアカンし、ハギの悪い見本になる。
さて………あ、園部と五十嵐もお疲れさん。
「ライア、食堂に行くから、ハギを呼んできてくれ」
「かしこまりました」
ライアは一礼してハギの部屋へと向かう。
俺達は雑談しながら、食堂へと向かっている。
「で、夏休みはどうだったよ?」
「最悪だったな。お姫様は名前呼びにしないと不機嫌になるし啓の所のゴブリンは問題起こすしで」
「まあ低ランクだから問題なくね? 召集とかはなかっただろ?」
「そういう問題じゃねえんだよ………」
拓哉はため息をつく。
うわー………んー、まあ………わかるけどね? 別にため息つかなくてもよくね? 確かに精神的にはくるだろうけどさ。
………まあ原因の一端は俺にあるわけだ。少しは労ったほうがいいよな?
「あー、それじゃあ労いとして何か作るぞ?」
「よし言質は取ったからな」
おっと、拓哉の野郎嵌めたな?
まあ別にいいや………菓子系ならハギとかモンスター達にもお裾分けできるしな。
「あ、じゃあ私タピオカミルクティー作ってほしい」
「…………………は? ミルクティーにとろみつけてどうするんだよ?」
「………え?」
「え?」
園部よ………若者の流行に疎い俺にはわからん趣味をしてるんだな………。
もしかして若者は………と思い、五十嵐の方を向くと、何故か首を横に振った。
あ、園部がおかしいだけか。
「おい啓、勘違いしているようだが、タピオカミルクティーはミルクティーにとろみをつけたものじゃない………らしい」
「というか何故タピオカ? オシャンティーかもしれないが片栗粉でよくね?」
片栗粉ミルクティー………それも嫌だな。
デンプンミルクティー………なんかもういいや。
というか人気なのかよタピオカミルクティー。
とろみのあるミルクティーとか………うん。嫌だな。
「それじゃあそのデンプンミルクティー以外で………」
「いやタピオカミルクティーというのはな──」
拓哉から説明を受けた。
どうやら根本から間違っていたようで………というかタピオカパールって作るの面倒なんだけど? 後詳しいな拓哉………もしかして娘さんとかがあれか? 自由研究かなんかの課題にでもしたのか?
まあ子供の顔は見たことないし、俺の生前は恋人がいたかも定かではないが………あ、これ少し前に流行ってたやつじゃね? 全く知らないけど。
「よし、面倒だからお前達が作れ。材料はあるから──さて他は」
「あ、じゃ、じゃあパンナコッタでお願いします………」
「採用。拓哉はどうする?」
「そうだなぁ………」
何もないのならそれに越したことはないんだけど………まあ食べ物なら簡単だし別に意味不明なモノ以外なら何でもいい──
「よし、宇宙戦艦──」
「OKパンナコッタ作ってくるわ」
今日は新設したダイニングキッチンで調理するか。
俺は手を洗い、ボウルやら泡立てやらの調理器具を取り出し、我が家共有食材ボックスの中身を確認。
よし、材料揃ったり。
「んで? その………なんだっけ? 水溶き片栗粉ミルクティーだっけ?」
「「タピオカミルクティーね」」
「あ、うん。それそれ。そんな有名なん?」
今日は抹茶味のパンナコッタにするか………さて、粉類を全部混ぜて、と。
「ああ、若者の間では有名だぞ」
「インスタ映えもするからね」
「インスタ? インスタントの略語か?」
「「「違う違う」」」
おっと五十嵐からも違うと言われた。
本当に違うんだな。
「インスタはInstag○amの略語だよ」
「もっと知らん。何それ?」
「SNSの一種だよ」
へー、SNSなんてTwit○erとFac○bookしか知らないからなぁ。
俺が死んでから色々変わったんだなぁ………。
「あー、最近はTi○Tokも流行っているわよ」
「「なんじゃそりゃ」」
──【悲報】おじさん二人、時代の荒波には乗れなかった。
まあおじさんだからな。女子の流行なんかわかりませんっての。
牛乳と生クリームを中火で熱して………と。
「………私はあのアプリ、卑怯だと思うけどね」
「んー、そお?」
お、五十嵐が反応した。
………なんか、負のオーラが漂っていますけどね?
………そろそろ火止めるか。
「じゃあ日由ちゃん『懺○参り』は誰の曲?」
「Ti○Tokの曲でしょ?」
「………日由ちゃん。戦争を始めよう」
「急にどうしたの!?」
その声冷淡すぎて怖いな。
もう老人二人は若者のスキンシップを微笑ましく見させていただこう。
「日由ちゃん、いいですか? Ti○Tokのあの歌達は有名な作曲家さん達がいっぱい時間を費やして作った立派な歌なんです! それを無断で用いていた彼らのせいでボカロ曲がTi○Tokの曲という変な解釈をされたのにボカロ勢は非難されていたんだよ!」
「………なんかごめん」
おー、五十嵐がそんなに喋るの始めてみた。
それにしてもボカロ曲か………。
「ボカロならわかるけどなぁ………」
「啓お前………実は流行に乗っていたのか?」
いや、動画サイト巡ってたら見つけただけ。
とはいえ神曲と言えるものも多くあった。
………粉類と熱した牛乳と生クリームを少しずつ混ぜ合わせてっと。
「最近のは知らんが………みくみ○にしてあげる♪とかメ○トとかブ○ック★ロックシュー○ーとかワールドイ○マイン………個人的にはワールド○ンド・ダンスホールとTHE WORLD E○D UMBRELLAが好きだった」
「………うん。俺は千○桜しか知らん」
逆に知らん。
いつの奴? 俺、平成二十三年六月以降の動画は知らんぞ?
「え? 啓さんもボカロ聴いていたんですか?」
「あぁ………少しは」
滅茶苦茶聴いてた。
本並みに好きだった。
もともと音楽は好きだからな。
個人的好みは失恋系なんだけど、ボカロだけは異なってたな。
「そうなんですか!? では、十周年──」
「あー、VOCALOID発表十周年の半年前には死んでる」
まあ辛かったからな。
死んでも死にきれなかったわけだけど。
そろそろこすか。
「そうなんですか………」
「落ち込まないでくれ」
「いや、落ち込まない奴はいないだろ?」
まあ人の死に関してはな。
さて、器に注いで………魔法で冷やすか。
「ほれ、パンナコッタ完成」
「おお、うまそう………」
「期待できそう………」
「おいおい日由、啓は自炊してたくらいだぜ? うまくて当然だろ?」
「ハードル上げるなよ」
まあいいけど………お、ハギも丁度来たようだ。
「皆久しぶりー、あ、何それ? 美味しそう」
「手を洗ってきんさい。パンナコッタは逃げないからな」
「おや、見たことないですね………」
「あ、ライアには後でレシピあげるんで、他の奴らにも食べさせてみてくれ」
「わかりました」
少し変なところもあると思いますが…まあ自分でも思います。今回長いなって。
作中にでてきた抹茶パンナコッタのレシピはそこらのサイトを漁ればでてくるはずです。
甘いもの好きの方は是非ともお試しください。
そして啓の死んだ年と月が大体判明してきましたねぇ。
ちなみにVOCALOIDは平成十五年に発表されたモノらしいです。
後個人的意見多めなので偏見も多いかもしれませんがお許しください。