第142話 無駄な知識というものはない………使う場所が限られる知識はあってもな
――何度も何度も思い返してみたが、教えた記憶はなかった。
まあ俺の召喚は世界に漂う魔力に形を与えるだけだしな………空間魔法に適性なくても使える召喚だし。
「――よし、じゃあ今から教えるから一回で覚えろ」
「難易度高い!」
そりゃ冗談だからな。
橋を渡り終えた俺は、ハギに『召喚魔法』と『空間魔法』のことを教えることにした。
「それじゃあまあ………うん。まずは知識だけな」
「えー………聞くだけかぁー」
えー、じゃねえよ。
迎え何時くるかわからねぇってのに実際に使える訳がねえ。
それに『召喚』弾くと色々面倒被るし。
「んじゃあまずは基礎中の基礎。『闇属性』についておさらいしていくぞ」
「はーい。闇属性はあれだよね? 地味でえげつないことが特徴的な属性――」
「誰が外道だ。偏見にも程があるだろ」
いやまあ確かに………対象の移動速度落としたり毒殺したりと正々堂々とは程遠い属性ではあるが、さすがに外道はねぇよ。
………外道じゃないよな? 自信なくなってきた。
「………んじゃあハギよ。お前が知ってる・理解している範囲で闇属性について真面目に答えろ」
「はーい」
うーんとハギは考え込む。
ふわっとした表現を使ってきたら即終了独学で頑張れだ。
数分悩みに悩んだハギは、ついにまとまったのか、口を開く。
「えーと『闇属性』とは『光属性』との相性がすこぶる悪い属性魔法です………」
「………」
「………………」
「………………………それだけか?」
「うん」
………嘘だと思いたい。
俺は真面目な顔で頷くハギを見ながら真摯にそう思った。
「んじゃあ………『闇属性』の基本からやってくぞ。
まず『闇属性』の特徴だな。
ハギの言う通り光との相性が最悪だ。
それは『闇属性』が『光属性』と真逆のせいなんだが………はい。ここで問題。『光属性は回復魔法で肉体の欠損を回復させられるが、光属性とは真逆の性質を持つ闇属性にある回復魔法にはどのような効果があるか』制限時間は迎えがくるまでな」
「え? あ、うーん………」
ハギは深く考え込む。
余談ではあるが、ハギの持つ『破壊魔法』は『光属性』と『闇属性』の複合魔法だ………知らぬ間にハギが魔法を暴発させる前に気づけてよかった。
「ヒント! ヒント一つ!」
「そうだなぁ………光属性でも闇属性でも『破壊』の概念はあるよなぁ………」
何も闇だけが『破壊』を司るわけではない。
光と闇は表裏一体。
ただ効果範囲が異なるだけなのだから。
「………精神? 精神を回復させる回復魔法、とか」
「正解」
まあ光属性は肉体に。
闇属性は精神に効果を表す魔法がある。
少し昔、精神を回復させることそれ即ち人の達してはいけぬ領域の技──とか言った奴がいたけど………まあいい。
「まあ属性分けなんて少し昔の研究者がそれ風にしただけだからなぁ………こう言っちゃなんだが属性を気にしても意味がない。特に光属性と闇属性は、な」
「へぇ………あ、じゃあ『破壊魔法』って──」
「肉体でも精神でも、時間でも空間でも、何でも破壊できるけど魔力消費のでかいハイリスクハイリターンな属性だな」
まあ今のハギは『血属性』への適性の方が高いからそこまで暴走の心配はないんだけどな。
それはまた後で、か。
俺を中心に魔法陣が顕れる。
どうやら迎えが来たらしい。
「よし、続きはまた後日な」
「はーい」
遅れて誠に申し訳ありません。