第141話 トラブルですか? 自業自得ですがなにか?
護衛依頼は滞りなく終わった。
護衛は『パセティック大陸』東端の村まで。
そこから『修好の橋』までは数時間の距離だが、その『修好の橋』から『グリーフ大陸』までは結構距離がある。
まあそこさえ越えれば迎えがくる。
………ん? 魔導具が反応してるな。
俺はポケットに入れていた懐中時計風鏡の魔導具『通話の鏡』を起動させる。
「どうしたライア。家に侵入者かー?」
「? 何その魔導具?」
ハギが興味を寄せる。
しかし、今はこちらだ。
ライアがこれを使うということは、何かしらの問題があったのだろう。
鏡に写るライアが困った表情を作る。
『それがどうやら、迎えは行けないようでございまして』
ん? マジで?
まあ確かにあいつら見つかれば即座に討伐対象になり得るが………冒険者に見つかった可能性は否定できないしな。
「………うん。大体わかった。ゴブリン以外で………いや『時空魔法』を使えるモンスターは?」
『単体で使える個体はおりませんが、儀式魔術としてなら………』
そうか………うん。
いや予想してなかったと言えば嘘になるが………まさか本当にこうなるとは思ってもみなかった。
「ねえ、なんの話をしてるの?」
「あーちょい待ち。後で話す………ライア。『統率』持ちのレベルは?」
『個体最高レベルは五十六。最高レベルの個体の『統率』レベルは四。『統率』スキル自体の最高レベルは八。その個体のレベルは四十です』
へぇ………まあ『統率』持ちが二体以上いることは確認済みだ。
作戦も一応はある。
「ライア。『統率指揮』持ちは?」
『いません。ですが可能性のある個体はおります』
うーむ………基本的に『統率』持ちは群れの長だ。
その横には腰巾着………ではなく『指揮』持ちもいるのだが、さすがに代替わりの時期だったのは痛いな。
「よし、『統率』最高レベルの群れに『王国』外への限定的な『転移魔術』を個体最高の群れに。個体最高の群れには『召喚魔術』を使って俺達を呼び出してもらおう」
『わかりました。今から準備させます』
通話を切り、『通話の鏡』をポケットにしまう。
さて、『橋』渡るか。
「で、何の話だったの?」
「ん? 馬車の迎えが来れなくなったから、ちと俺達を『召喚』で王国近くまで召喚してもらう」
「へぇ………え?」
え? じゃないんだなぁ………あ、隠蔽は………まあいっか。
バレたらバレたでそりゃしゃあない。
ちとギルドとかギルドとかギルドとかの長が胃潰瘍になるだけだし心配は………あー、俺呼び出しとかされそうだな………まあ隠蔽くらいならしよう。
俺は早速『検索魔法』を発動させる。
魔力を王国の方まで薄く伸ばしていって………。
「あのー、すいません? 先ほどの件ですが」
「ああ、はい。暫しお待ち下さ――っておいハギ。何やらせてんだよ」
あっぶねぇ………後少しで社畜時代思い出すとこだった………。
まあそれはさておき。
「説明不足した? まあ答えまっせ」
「何その口調………まあいいけど、さっきのその………『召喚』? のことなんだけど」
………ああそっちな。
そういやハギには『召喚魔法』を教えたが『召喚される側』については教えていなかったな。
「まず『召喚魔法』の手順は覚えているな?」
「うん。魔法陣を使って獣をランダムに目の前に招く魔法だよね」
「たまに喚び招くこともあるんだけどな。
これは基本的に自身より実力が低い者にしか効かない。
効くことも稀にあるが………まあそれは召喚される側の気分にもよるし。
脱線したが、『召喚魔法』には応用で『特定召喚』という使い方があるんだ」
「『特定召喚』?」
「そう。様々な制約があるが、それらをクリアすれば使える特殊な魔法。
まあハギよ。結構面白い経験になるぞ?」
ハギの顔がひきつる。
いやいや、酷いモノじゃないから。
本当にいい経験になるぞ?
まあ積極的に行いたい奴はいないだろうけど。
「そ、それで? その制約って?」
勉強熱心だなぁ………まあ知っていて損はないが。
「まず『召喚した者側の魔力と召喚された者側の魔力の波長』が一致しなければならない。
次に『召喚された者側』の同意を得なければいけない。
以上」
「………へ? 制約緩くない?」
ハギが目を点にして問うてきた。
「何言ってんだ? そもそも魔力の波長を一致させるとかソイツの魔力特性を知っていても無理難題に近い芸当だぞ? それに召喚されたくなければ簡単に拒否れるし」
「………簡単そうとか思ってすいませんでした!」
本当にな。反省しろよ?
まあ失われた技術だし、一人で行っても御陀仏するだけだ。
使うこともそうそうないだろうし。
「それに『空間魔法』への適性も少しは必要だからな?
まあ『全属性適性』を持つハギにはわからんと思うが」
「………なんでここで『空間魔法』がでてくるの?」
………え? 嘘だろハギよ。
もしかして俺………教えてなかった?
俺は少しの間記憶の海に意識を沈めるのだった。
少し魔法の設定には陰陽思想を参考にした部分があったりします。
ちょっと最近ドタバタしているので、週一回の更新とさせていただきます。