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100回目の転生で精霊になりました  作者: 束白心吏
第三章 長期休暇を使った旅行
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第140話 出会いがあるから別れがある

 薬屋が自首した翌日。

 街は昨晩の事件で大騒ぎだ。

 宿屋でもそのような話をしているのが、少しきこえた。

 ………さて、と。


「ハギ。準備は終わったかー?」

「うん! カレンちゃん達に会いにいくんでしょ?」


 そういうこと。

 俺とハギは宿を出て、ヨミ達の家に向かう。


「――ねぇケイ。疑問なんだけど………」

「? 何だ?」


 ハギから疑問とは珍しい。

 こりゃあしっかり答えてやらんと。


「昨日ケイが言ってた『時詠み』って、人類への『抑止力』なんだよね?」

「ああ」

「じゃあさ………魔族にもいるよね?」

「いるな」

「人族にも?」

「………ああ」


 世の中、知らなくていいことはある。

 知って得することもあれば、損することだってある。

 ハギはまだ知らなくていい。


 俺が人族の『時詠み』の事を少し言い淀んだ理由を。


■■■■


「あ、ケイさん。ハギさんも来てくださったんですね」

「昨日ぶりだな」

「私とは数日ぶりだね」


 ヨミは今日も朝からご苦労さん。

 洗濯干してる時にすまんな。


「もしよかったら上がっていてくれませんか? 母もケイさんとハギさんにお礼がしたいらしいですから」

「そうか。それじゃあ失礼して」


 俺とハギは家に上がる。

 ………そういや、昨日は勝手に上がったな。


「おじゃましまーす」

「あ、ハギお姉ちゃんだ!」


 おー、カレンは今日も元気そうで。

 ハギ。お前はそのにやけ面をどうにかしろ。


「久しぶりカレンちゃん。元気してた?」

「うん! お母さんもね! 前より元気になったんだよ!」


 おー、やっぱ若い子は元気が一番だねぇ………。

 ああいう光景は、見ていて微笑ましい。

 ほっこりとしていると、奥の襖が開く音がした。


「どうしたのカレン。お客様? ――あら」

「あ、おかあさん!」


 カレンがマユリさんのもとにかけていく。

 さすが獣人。その回復力は異常だな。

 まあステータス的にもタフなのは分かるが………『自己回復』スキルが発現してたか。

 もしかしたら霊薬療法は『自己回復』スキルの発現を促す効果ぎあるのかもしれないな………いや、『霊薬』が『自己回復』スキルを無理矢理引き出したか………。


「お久しぶりです。マユリさん」

「お久しぶりねぇ。ケイさんも、昨日は助かりました」

「いえいえ、人として当然のことをしたまでですよ」


 おいハギ。何驚いた顔してんだ。

 俺、一応は高校一年設定だから。年上に敬語使うのは当然だからな。


「ふふっ、今日この街を出るんですか?」

「――ああ………今日は別れの挨拶にな………」


 驚いてしまったが、普通に想像できるわな。

 旅人って伝えていたはずだし。


「嬉しいですよ。この子達もあなた方を気に入っているようですから」


 マユリさんはカレンの頭を撫でる。

 カレンは心地良さそうに目を細めた。


「すいません。今お茶をお出ししますね」

「あー、いいよいいよ。今日は別れの挨拶に来ただけだから」


 家に上がる気は無かったからな。

 未だに玄関にいるのもそういう理由だし。

 ヨミは表情を曇らせる。


「そうなんですか………少し寂しくなりますね」

「そういうな………ほれ」


 俺は一冊の本を取り出す。

 文庫本サイズのそれは、二、三百ページ程度の指南書だ。


「これは………」

「指南書だ。『時読み』になろうがなるまいが、それは読んでおけ」

「――! ケイさん。なんで『時読み』のことを………」

「そりゃ秘密だ。こっちはカレンにな」


 俺は獣人国で入手できる食材で作れる料理のレシピ集をカレンに渡す。


「何これー………わー! 凄い! どれも美味しそう!」

「はは、どれも簡単な食材でできるからな。それとこれも」

「? 何これー?」


 俺はカレンにもう一冊本を与える。

 分厚いから、ヨミに渡したが。

 渡されたヨミは戸惑っていたが、マユリさんは何かわかったようで、驚いている。


「これは………魔法書じゃないですか! こんな高価なものまで………」

「いいのいいの。ハギのお下げみたいなもんだけど使えるから」


 本だって読まれなければ手元に置いておく意味がないように、魔法書も使われなければ手元に置く意味がない。

 魔法使いの卵には魔法書を与えよ。

 例え魔法師の原石がいても、その原石は磨かれなければ光ることはない。

 独学で魔法を修得する魔法使いもいるにはいるが、それは体系化された今の魔法には『使用者に最適』である一点でしか勝てない。

 まあ、今渡した魔法書は俺が体系化した魔法が描かれているから、今の魔法体系とは異なるのだが。


「何から何まで………本当、ありがとうございます」


 マユリさんが深々と頭を下げる。

 ヨミとカレンも、マユリさんに倣って頭を下げる。


「いいのいいの。ただのお節介なんだから。まあそれらは有効利用してください」


 俺達は家を出る。

 少し名残惜しくなるが、そろそろ帰宅しなければならない。


「ヨミくんカレンちゃん! またねー!」


 ハギが手を振る。

 見送りに出てきたヨミとカレンが、手を振る。

 いいねぇ………だけどギルドで受注した護衛依頼の集合時間がそろそろだからな?

更新遅くなりました。

いや本当にすいません。

出ないと二学期強制赤点になる行事があったり体調不良になったりと色々な災難が重なり執筆時間がなかったんです。

まあ無理すればもう少し早く更新できたのも確か。

次回はもう少し早く更新する予定です。

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