第137話 果たしてこれ、俺が来た意味あったのだろうか………
ヨミの家から薬屋まで徒歩で数分。
夜の街はそこまで栄えてないな。
まあ屋台も閉まってるし、皆居酒屋で飲んでるんだろ。
俺は夜の街並みを眺めながら歩く。
お陰で普通に歩くより遅くなった。
反省? してないけど何か?
というかハギよ、何でお前はこの数分で頭まで無力化しないの?
雑魚だけ倒すとか………あ、お頭さん魔剣取り出したよ。
ちなみに『魔剣』と『聖剣』は対なす武器ではない。
そして『聖剣』は魔族にとっても人族にとっても獣人にとっても『希望』の剣となっている。
まあ武器の最高峰が『聖剣』。
特殊な能力を持つのが『魔剣』なのだ。
お頭さんが持ってる『魔剣』は『魔力を吸収する』能力を持つ魔剣。
ちなみにあの『魔剣』は一般的な『魔剣』とは製造方法が異なる『魔剣』であり、『魔法付与剣』が正式名称。
その『魔法付与剣』にも様々な形があるのだが………今は関係ないな。
俺は薬屋に急ぐ。
流石にあの魔剣はヤバい。
特に魔力を吸収するその性質が。
魔力を吸収する。それは空間魔力体内魔力問わず喰らい尽くす性質。
確かに『魔剣』としては簡単に付与できる部類に入る魔法陣がふされている。
だがそれ故に、その定義が曖昧であるが故に、全ての魔力を喰らい尽くす『魔法付与剣』となった。
俺はハギの結界を『透過』し、薬屋の中に入る。
さーて………うん。面倒。『転移』。
景色が歪む。
あー、昔は『転移』の度に酔っていたなぁ………懐かし。
転移した先は中々に汚かった。
いや、特に人が多く倒れていてな。
思わず顔に出てしまった。
「――誰だ!」
ん? あ、忘れてた。
俺は死体………じゃないな。気絶している奴らを無視して向き直る。
ハギは………うん。何故そんな驚いているんだよ。
「………あー、ハギ。無事か?」
「無視するんじゃねえ!」
大男? が剣を振りかぶる。
あー、ガチの魔剣ですやん。
恐ろしや恐ろしや。
「!? テメェ、中々やるじゃねえか」
大男? が独り言ちる。
いや、回避しただけでなんじゃその物言い。
「………で、ハギ無事?」
「うん………いい加減相手してあげなよ」
へいへい………お、顔真っ赤じゃん。
「………ここまで我を蔑ろにした者はお前が始めてだ」
「えー、何その一人称………『我』とか今時の悪役でも言わないよな?」
いや、別に悪いとは言わないぞ? そういう一人称もアリだとは思うし………いや、リアルにその一人称はないと思うけど。
そして――あ、大男さん………長い。大さんでいいよな。王ちゃん思い出すけど。
………あれ? 大さん。ちょっと噴火寸前?
えー、どうしよう。
「き、貴様ぁぁぁぁ!」
大さん。いきなりブチ切れて襲い掛かってくる。
いや怖っ! 急にキレる最近の若者怖っ!
『いや、自業自得でしょ………』
ハギ、確かにその通りだが急な『念話』は止めてくれ?