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100回目の転生で精霊になりました  作者: 束白心吏
第三章 長期休暇を使った旅行
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第136話 『時読』

 記憶の改竄やら何やらの面倒な処理を終え、俺は書斎に戻ってきた。

 ちと、気になるモノがあったからな。

 俺は執務机を漁る。

 先ほど部屋を『探査』したとき、俺はとある書物を捉えた。

 それは――あったあった。

 書物のタイトルは『時読(ときよみ)』。

 そしてその『時読』についての考察と論文………あぁ。こりゃ駄目だな。

 確かに『時読』に関しての考察は合っている。


――『時読』とは現在・過去・未来を視る眼を持ち、その身に神を宿す者


 合っている。合っているのだが………少し足りないし間違っている。

 確かに『時読』は過去未来現在の事象を観測することができる。

 しかし、その身に『神』は宿っていない。

 確かに『神』に近い力を持っているが、それはとある理由で『創られた』が故なのだが………まあいい。

 これでコイツらの次の手がわかったんだしな。

 俺は書物を燃やし、その場を後にする。

 これから行くのは呪われた少年の家。

 呪われた少年は当代の『時読』であり、少年の家系は古来より続く『時読』の一家。

 さーて『転移』………あ、もういる。

 一つの建物を囲うように獣人が立っている。

 武装も万全だな。


「さーてと………まあ【眠れ】」


 最近使われていなかった『呪術』という名の『状態異常付与』を施し、家に向かう。

 ………そういや、誤解をそのままにしたら『呪術』で定着したなぁ。

 実際はただの『暗示』とか『催眠術』って表現が適当なんだけど………ま、いっか。

 俺は家に入る。

 玄関に入り、始めに聞こえてきたのは、喧騒。

 大人の男の声と、子供の声。

 ………逃げられねぇよなぁ。

 子供からしたら、体格のいい大人は恐怖の対象になりうる。

 俺もそういう子供の一人だった。

 ………まあ、それが嫌で自殺したんだけど。

 俺はその選択に後悔はなかったが、一つの逃げだとは思う。

 だから、その選択を他の誰かにしてほしいとは思わない。

 できれば救われてほしいとさえ思う。

 ………とはいえ、そりゃあ少し欲張り過ぎな気もするが………人間、それくらい欲深くてもいいのかねぇ。

 ま、俺人間じゃないけど。

 俺は居間に進む。

 言い争いの声は大きく、恫喝まがいの声も聞こえてくる。

 本当、聞いていて嫌になる。

 俺は髪の毛を数本抜く。

 その髪の毛を魔法で鋭く固くし、それを投擲。

 不審者というか侵入者な獣人に見事に当たり気絶させた。


「――っ、誰ですか!」


 まだ声変わりしきれていない少し高い声。

 警戒心を剥き出しに、俺を見ている。


「あー、すまん………通りかかったらなんかトラブってるような気がしてな」

「え? あ、ケイさんじゃないですか!」


 薄暗い部屋から駆け寄ってきたヨミ。

 気配から察するに、親と妹は奥の部屋か。


「すまんな。不法侵入みたいな形になって」

「いえ、窮地を救っていただけたんです。こちらには感謝しかないです」


 本当………子供っぽくねぇなあ。

 まあ生活環境がこういう風にヨミを育てたと言われればそうなのだが………まあいいや。


「まずは転がってるあいつらをどうにかするか」


■■■■


 とはいえ賊の数は本当に少いので、引き渡しはすぐに終わった。

 ヨミが俺に面倒な手続きを押し付けた――言い方悪いな。俺がやらざるを得ない状況だった。

 まあきちんとヨミの為の現金振込先も用意しとかないとだし………よし。

 自警団の詰所からヨミの家までの通りを、一通の手紙を書きながら歩く。

 適当に文章書いて最後に俺の魔力刻印をして………完成。

 そして丁度、ヨミの家付近についた。

 玄関前にはヨミが待っていた。


「ヨミ。手続きはやっておいた」

「ありがとうございます」

「いいのいいの。後、これ」


 俺は一通の手紙を渡す。

 ヨミは首をかしげている。


「これは………?」

「それを冒険者ギルドの職員に渡せば少しは生活が楽になるから、親御さんの体調が戻ってきたらいってみ?

 ………親御さん。大切にしろよ」


 俺は精一杯慈愛をこめて言う。

 出来ていたかはわからないが………まあ大丈夫だろう。

 そのままヨミとは別れ、俺は薬屋に向かう。

 あっちはハギが対処してるけど………あらあら、捕まっとるやないの。

 麻痺毒にやられ捕まったか? ………おい、そりゃねえよ。

 少し『検索魔法(チート)』を使ったら、俺の弟子、毒矢に刺されて拘束されているのが判明したのだが。

 いや、確かに敵を一斉に叩き潰すのなら有効な手立てかもしれないが………ハギ以上の実力者も世の中結構いるからな?

 まあそれは『魔力の質』でハギもわかるか………と、こっちでも『時読』のことでてるじゃん。

 ちょっと見学させてもらおうかな?

 後『時読』の誤解が面白すぎるから訂正もしてやりたいし。

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