第134話 これ私が仕事量増やしているよね………すいません
ハギ視点です
引きずられることおよそ数分。
私は二階のよくわからん場所に寝かされている。
………マジで解剖するの? 頭イカれてるね! まあ元々と言われればそれまでの話だけど。
それに、君たちが準備している間に、私の方も準備万端になったんだからね?
「おい、誰か『隷属の首輪』持ってこい」
リーダーらしき人が指示する。
………うわぁ、またアレ着けることになるの?
………腹、括ろうかな。
誰かが本当に『隷属の首輪』を持ってきたのか、私に近づいてくる足音。
そして首輪が私に嵌められ――
――粉々に壊れた。
正確にいうのなら、『隷属の首輪』の機能がズタズタにされた、かな?
正直私も驚いている。
「おい、何をしているんだ。さっさと嵌めろ」
「し、しかし、急に『首輪』が壊れまして………」
「変えはあるだろ。早く取ってこい」
うわぁ。横暴………これ、あれだよね。ケイとかタクヤさんが言っていた………『ブラック企業』ってやつ?
よく見ると部下さん達の顔やつれてるし………お疲れ様です。
「早くしろ!」
うわっ、怖………私、あそこまで酷い扱いはされなかったなぁ……今も何だかんだで最低限の良い待遇ではあるし。
というか、前世より充実していると言っても過言ではないと思う。
………物思いに耽っている暇があるなら、今の状況をどうにかしたほうがきっといいんだろうね。
だけどね。私、まだ回復してない。
ちょっとは動くようになったけどまだまだ。腕を動かそうとするとすごい震えるし。
………ケイならその有り余る魔力で解毒――そもそもケイに毒なんて効かないか。普通にあの剣で切り捨ててそう。
まあ今回は捕縛だから、切り捨てはしないだろうけど。
あ、部下さん戻ってきた。
上司の顔は怖い。
「遅い!」
「す、すみません!」
うわぁ………ブラック。
『いやいや、あれくらいならまだマシだぜ?』
うわぁ!? ビックリ。
というかケイ。見てたんだ。
『そっちの事はもう終わったの?』
『おお、お陰様でなー。そっちは災難なこって………』
うわぁ………ウザイ。
まあ災難なのは確かだけど、もう少しなんだよね。
………あ、そういえば。
『ケイ、何か私に触れた『隷属の首輪』が壊れるんだけどどうして?』
『………あぁ、あれな。
まあ………俺が原因だな』
『ケイが?』
どゆこと? ケイが原因だとすると………『精霊契約』かな? それしか思いつかない。
『『精霊契約』でハギの魔力と俺の魔力が混ざっているのは知っているよな?』
『うん』
それがどう関係しているのだろう?
あ、また首輪壊れた。
『俺の魔力は今、この世界に漂う魔力――魔素と限りなく近い。
ほとんど一緒なんだな。
そして『隷属の首輪』は周囲の魔力を吸収して用いられる道具………ここまで言えばわかるよな?』
『うん。『隷属の首輪』に異常が起きるんだね』
『端的に言えばそうだな。
『隷属の首輪』は使用者の魔力と周囲の魔力が反発するから拘束具として扱える道具。
そんな道具とほぼ同じ魔力を持つ者なら、反発することがない。
ハギは俺の魔力を持っているから、普通の『隷属の首輪』じゃ意味がないんだ』
へぇ………あ、また壊れた。
人ってあそこまで顔を赤くできるんだね。
『ほれ、もう毒も切れたろ。お前はそいつらに集中しな。
他の事は俺がどうにかするから』
『はーい………バレてたんだ』
『まあな』
私はケイとの会話を止める。
そして内に秘めた大量の魔力を、一気に放出した。
ハギ視点はまだまだ続く。
ケイの視点で書くより楽しいんですよね………。
まあ今の状況は、というだけで、一番書いていて楽しい視点は拓哉視点なんですけど………ツッコミ役で現代の知識があるとツッコミの幅が広がります。
次回までハギ視点………というか次回で終わらせます。
そこからはもう少し『獣人国』での物語を書き、帰還後の話を書けば三章終了となります。