第115話 関わってはいけない関わってはいけない関わっては…………
轟音は数秒間隔で鳴る。
それも近づいてきてるし………マジで近所迷惑なんですけど。
いや、本当に早く通りすぎてくれませんかね?
しかし、現実は非情だった。
「ん? なんか知らねぇニオイがするなぁ………!」
訂正しよう。
現実は無情だ。
暴走族を彷彿とさせる樋熊な獣人が、俺とハギの隠れている路地に入ってきた。
最悪だ。せめて俺だけでも――あ、サーセン。はいはい一人じゃあ逃げないからジト目で俺の服を引っ張るの止めて? ――ダメか。信用ねえな。俺。
「ん? ここら辺かぁ~?」
俺、思うんだけど、信用ないならいっそのことハギを身代わり――なんでハギは自身の危機を敏感に感じとるの? あとつねるの止めろ。
ハギに睨まているのをスルーして、少しずつ近づいてくる獣人を見る。
明らかに存在には気づいており、しかし俺達がどこにいるのかわからない状況なのだろう。まあ壁をガンガン叩いても近所迷惑なだけだしそれ当たったら洒落にならないほどの魔力を強制的に使うことになるので止めていただけ――ないですよねー。はぁ。
俺は『隠密魔法』『消音魔法』『清浄魔法』を俺とハギを囲うように展開し、ついでに『隠蔽』スキルで俺達の臭いを隠す。
ちなみに魔力や臭いは『偽装』または『隠蔽』スキルで消去可能だが、どちらのスキルも俺のスキル効果範囲から外れると解除されてしまうので俺達は脱兎の如く逃げなければいけない。
なお、この作戦はハギに言うつもりもないので、ハギにはアドリブで頑張ってもらいます。少ない言葉のヒントで、ハギはどれくらい理解できるかな?
『三秒後に走り始めます』
「急すぎ!? あ」
声がでかいな。『消音魔法』が無かったら俺達見つかってたぞ…………なんで犯罪者でもないのに俺達は隠れているのだろうか。不思議だな。
『んじゃあ行きまーす』
俺は『疾走』を開始する。スキルって便利だよな。
ちなみにハギは俺の服の袖を握りしめていたので、俺が腕を引っ張って走ってます。
そして数秒後、あの樋熊野郎が走ってくる音が聞こえてきた。
「なんで追われてるのかなぁ?」
「それを俺に聞くな」
俺はハギを脇に抱えて大きく跳び上がる。
やっほう。やっぱり『跳躍』スキルって使えるな。スカイダイビングできるし。
ちなみに俺は『跳躍』スキルと『調薬』スキル。同じ読みを持つスキルがある所に女神様もスキルの名前選び大変なんだな。と思った。
まあ知ったこっちゃないし、使えれば名前なんぞ気にしないけど。
「………ねえ、なんで『転移』しないの?」
「いや、少しだけ空の旅を楽しもうかと」
「じゃあ私も飛ぶね――『飛行』」
おお、習得しておったか――じゃあ早く魔法書の魔法を習得しようぜ? 魔法大全集くらいなら買うから。
ハギは魔法で空を飛び、俺はスキルで空を飛ぶ――いやまあ未熟な俺にとって『飛行』スキルはまだ『跳ぶ』の方が正しい表現なんだけど。
「そろそろ降りるぞー」
「逃げきった?」
「追いかけては来れねぇよな」
だから何で俺達は犯罪者のように逃げてるの? 本音を言えば関わりたくないからだけどさ。
俺とハギは近くの展望台に着地して、魔法やらスキルやら全てを解除する。
「お疲れー」
「災難だったねー………あ、そういえばケイ。羽生えてるよ? 魔力の」
「え、マジ?」
俺は背中を見る。
確かに半透明な緑色の羽があるな。
これが『飛行』スキル使ったあれか? 跳んでるのに? これをどうにかしてしまえないかなぁ………あ、しまえた。やっぱ想像力って大事だな。
「ついでに言うけど、ケイが『精霊眼』? っていうのを使ってる時、左目光ってるよ? 緑色に」
「………もう精霊の力使うの止めようか」
俺、端から見れば痛い奴だったの? あ、おかしな環境で育てばおかしな人間になる――もはや人間でもなかったな。俺精霊じゃんそれも神。
「んまあ逃げきったし、観光再開」
「おー!」
俺達は再び観光を再開した。
執筆時間が足りないです。
ですけど一週間に一回は投稿できるよう頑張っていきたいと思っております。