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100回目の転生で精霊になりました  作者: 束白心吏
第三章 長期休暇を使った旅行
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第114話 観光したいなぁ…………普通な観光が…………はぁ

 泊まった宿は案外良い場所だった。

 そのボロそうな外見に反して料理はいいし布団もよい。

 俺はあまりベッドとか好まない人間………訂正。精霊だから、結構好みな宿だ。

 まあハギは不満があったらしいが。

 料金ももう少し上げていいと思うが、それを宿屋の主人に言ってみたところ――


「そりゃできねえよ兄ちゃん。こんなボロっちい宿に泊まってくれる奴に失礼だぜ」


 と申した。確かに外見ボロいけど、結構しっかりした建物だぜ? ってか、外見をボロくしてるよな?

 そんな感想は胸の内に留めて、俺は提示された料金より数倍多く金を払った。

 ついでに少し傷んでいた場所をこっそり治しておいた。

 満足したので、俺とハギはこの宿――『古色蒼然』を出ていった。


 時刻は午前八時。結構寒い。

 しかし獣人達の朝は早いので、この『獣人国』においては普通の時間だろう。


「………寒いねぇ………」

「言うなハギ。もっと寒くなる気がするから………それにもう少し待てば暖かくなる」


 この『獣人国』の季節は冬。

 朝が寒いのはどの国でも同じだが、獣人の国の首都である『ディグニティー』は大陸の中でも北の方面にある。

 そして『修好の橋』はその『ディグニティー』に向かって伸びているから、獣人国に向かって橋を渡っていると、だんだん寒くなっていく。


 ちなみに獣人――獣人(じゅうじん)獣人(けものびと)も暑さは苦手だが、寒さは得意らしい。

 まあそうだよな。獣人(じゅうじん)は少ないかもだけど、獣人(けものびと)は毛深いし、暑がりで寒さに強いににはなんか納得したわ。

 ちなみに一部の獣人は寒さに弱いらしい。


 俺とハギはそんな朝の『獣人国』の朝の街を歩く。

 ハギは寒さで肩が震えていたが、俺は『耐性』スキルのお陰で寒さも暑さも感じない。

 やっぱ何事も程々が一番だなぁと、最近思ったわ。だからこその『制約魔法』なんだけどさ。


「うー、寒い」

「目的の店まで後少しだ。耐えろ」


 ちなみに目的の店は昨日冷やかし――じゃなくて宿探し中に出会った雑貨屋のことだ。

 ここら辺の建築は昔とそれほど変わりなく、今も俺達の伝えた建築技術が使われている。

 そして屋根も瓦屋根という………うん。建築技術に進展はないけど文化は進化したんだな。


 ハギは目的地である雑貨屋――『お土産処 繚乱』に駆け込むように入っていく。


「あー、暖かいよ………」

「そうだなー」


 部屋の中は魔道具で暖かくなっていた。

 この魔道具は魔族の作ったものだ。獣人は人族や魔族との交流が多いからな。

 人族と魔族がもう少し交流してくれたらなぁ…………まあ無理かな。


「いらっしゃい。こんな早くに珍しいねぇ」


 店の奥から店主らしき獣人(けものびと)が現れた。

 多分狼の先祖返りで、種族までは特定できない。

 この世界は結構様々な動物いるからなー。まあ『精霊眼』使ったらわかるけど、さすがにプライバシーの侵害は元日本人としては出来ない所業だからな。


 俺とハギは店主に一礼し、陳列棚に視線を落とす。

 陳列棚には商品が綺麗に並んでおり、棚本体も店主が毎日綺麗に掃除していて、店を大切にしていることが分かる。

 うん。ここで正解だったな。

 俺とハギはライアの土産を選ぶ。

 一応土産は鞠でいいかと思っているが、鞠にも様々な模様や色があるからな。俺もハギもライアに似合いそうな色合いと模様を探している。


「――ケイ、こんなのどう?」


 ハギが一つの鞠を陳列棚から取る。

 紫色の七宝文様の鞠だ。確かにライアはそういう雰囲気があるかもなぁ。


「いいと思うぞ。じゃあ買うか」


 ついでに個人的に数種類鞠を買って雑貨屋を出た。

 うん。なんか普通に観光してる。


「なんか普通の観光客みたいだねー」

「おい。観光だぞ。今旅行中だし」

「でも普通な観光はあまり出来てなかったよねー」


 言い返す言葉も無く、ただ確かにと頷く。

 でもまあ『獣人国』では平和に終わるでs――


 後方から轟音がした。


「…………」

「…………」


 俺もハギも、顔を見合せ、同時に音の方向を向く。

 しかし、煙も何もなく、ただ単に音がしただけ――


「退け退けー! アザイン様のお通りだぜ!」


 さて、逃げようか。

 声に出さずとも、俺達師弟の思考は一致し、近くの路地裏に急いで飛び込んだ。

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