第112話 いざ、入国
俺とハギは数時間かけて、やっと『獣人領』の一番でかい国である『ディグニティー』の近くの村に到着した。現在は『マジェスティー』の国境近くの村である。
ここで一夜過ごし、目指すのは『ディグニティー獣人帝国』という笑えるような名前の長さを持つ国。
ちなみにこの帝国は結構過激思想。『魔族領』の一番でかい国である『オデット』もここまでじゃない。
まあ獣人が短気だと言ってしまうとそこでその話は終わりだが。
そんな帝国には厳重な検問が毎日敷いてある。
何故か? 奴隷狩りがいるからだ。
この奴隷狩りという人種は『人族』『魔族』『獣族』問わずおり、検問する兵士も同族だろうが心を鬼にして調べなければならない。
まあ比較的に同族を狙う奴隷狩りはいないが。
そんな奴隷狩りという悪しき風習は何千年も前からある忌々しい風習だ。
そもそもなんだ? 人間ってのは何故そんな上に立ちたがるんだ? ってか乱獲して文化を継承する者が居なくなったらどうするつもりだ人類。主に『人族』! お前らが一番奴隷狩りしてんだぞ!
――ふぅ、いったん落ち着こう。魔力を放つな冷静になろう。
思考をクリアに。そして普通に『憤怒耐性』超えたな。
自分自身が相当奴隷狩りに怒りを感じていることを自覚し、後で奴隷狩りを絶滅させようと心に誓っていると、ついに『ディグニティー』が見えてきた。
ちなみに『ディグニティー』の特徴はあまり大きな建造物が無いところだ。
獣人の国民にはみっちりと『和』の心と風習を叩き込んだからな。
あまり高い建物が無いところを見るに、まだ『和』の文化は生きているのだろう。きっと。
まあ高い建物を建てないことが主流で、もう『和』の文化が無くなっていてもいい。また広め直す。そしてついでに拓哉も巻き込んでやろう。
面倒な時は全て勇者に押し付けよう。うん。後で王女様にお茶菓子とか買っとこ。
俺は最低だと自覚しながら最低な算段をたて終えた所で、検問に捕まる。
「止まれ! そこの馬車よ!」
俺は馬を止める。
ちなみに捕まえた馬は普通だぞ? ハギのようにおかしい魔物ではない。
兵士は数人で御者台に乗っている俺に近づいてきて、一枚のカードを取り出す。
「騎士だが、手荷物検査を行っても大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だ。後ろには連れがいる。寝ているから静かに頼む」
俺は兵士に検査を行わせる。
兵士の手には金属探知機モドキな魔道具探知機がある。
それを使って『奴隷紋』やら『奴隷の首輪』の持ち込みを禁止しようということなのだろう。
まあないけど。
そもそも荷台には一ヶ月分くらいの食料と金、寝具が入っており、普通に『旅人』を名乗れる。
「………『ディグニティー』にはどういう用件で?」
「観光。やっぱ『芸術の国』の姿はこの目で実際に観たいしな」
「おお、今時珍しい観光客か。まあ気をつけな、最近は『奴隷狩り』も活発だから」
兵士の口からポロッと情報が出てきた。
マジか。またやってるのか。
「『奴隷狩り』? まだそんなことする奴いるのか」
「大半は人族だけどな」
「違いない………よし、検査は終了だ。行っていいぞ」
俺は雑談状態な騎士達に謝辞を述べて『ディグニティー』の街に入っていった。
…………ストーリーを書くのは楽しいけど時間がない……………