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100回目の転生で精霊になりました  作者: 束白心吏
第三章 長期休暇を使った旅行
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第107話 あの光景、冒険者でなければトラウマものだぞ…………

「――っつう……」


 目が覚めた。

 地面にうつ伏せで、それも毛布一枚も羽織らずに防具を着けたまま寝ていたのがあまりに衝撃的すぎて、すぐに意識は覚醒し周囲の状況を把握するまでに至った。

 普通は防具を脱ぎ布団で寝るというのに。


 まずわかったのは、私と今日一緒に冒険者としてパーティーを組んでいたハギがモンスター達と戦っていることと、私がモンスターに追いかけられて失神してしまったことだ。

 そして不思議な事に、戦闘しているのに音は聞こえない。

 不審に思い周囲を見渡すと、少し離れた場所に『ケイ』と呼ばれた青年がいた。

 彼は、ただハギの戦いを見ているだけだ。


 私はハギの方に近寄る。

 しかし、ある一定の場所までしか行けず、そこからは一気に奥まで行ってしまった。

 不思議に思い、もう一度ハギに向かって歩く。

 するとまた、ハギのいる場所を通りぬけた。

 これは魔法なのだろうか? 私はハギの戦闘を観ながら、そんな事を思った。



 ハギの戦い方。それを一言で言うなら、本当に血で血を洗う戦い方だろう。

 なんとハギは他者の血を操り攻撃してる。

 後に伝承等にある吸血鬼(ヴァンパイア)の一人だと聞いたが、それでも驚きだし、結構ショックも大きい。

 ハギは血を凝縮して槍のように鋭くし飛ばしたり、血で剣を象り切り裂いたりと、様々な使い方をしているので、流石の私でも結構ビビった。

 それに攻撃を受けても逆に自身の血を使って反撃していく様は結構グロい。

 子供が見たらトラウマものだろう。私も進んで思い出したくはない。

 そして傷口は強制的に血で固められた止血というなんとも強引なものだった。



 戦闘は私が目覚めてからほんの数分で終わり、そのまま野宿となった。

 ハギの怪我はケイと呼ばれた青年がほぼ一瞬で治し、彼は寝床や夕食も用意してくれた。

 ご馳走になったが、普通のそこらの店より美味く、店が出せるのでは? と思ったが、彼にその気は無いらしい。

 寝床も豪華で、ふかふかな布団で寝ることが出来た。


 朝食も出してもらい、その後解散。結構な不思議体験だったと、私は思う。


■■■■


「首尾はどうだね?」


 ある酒場で、また数人の怪しい魔族が集っていた。


「『未知の魔法』を使う少女・青年については名前まではわかった」

「………ほう」


 一人の報告に、興味津々な反応をする。

 彼はこの集まりの最年長であり、まとめ役でもある。

 報告者である青年は、二枚の紙を机に上に取りだす。


「少女の方はハギ・スカビオサ」


 その声と共に、片方の紙に長い黒髪と赤目を持つ少女が描かれる。


「青年はケイ・クロヤ」


 もう片方の紙に、黒髪黒目の青年が描かれる。

 これが報告者である彼の得意魔法であり、実戦には向かないながらも、様々な情報を入手できる魔法だ。


「少女はどうやら吸血鬼(ヴァンパイア)の生き残りであり、青年の方は――不明です」


 彼の報告に、その場に集まった全員が息を呑む。

 それは当然だろう。彼の魔法でほぼ何も解らないという事は一切無かったのだから。


「青年――ケイ・クロヤと言ったな…………そして少女は吸血鬼ときたか………」

「はい」

「まだ残っていたのね」


 報告者は自身の未熟さを悔やむように答える。

 彼らは吸血鬼(ヴァンパイア)がまだいた事に驚いているが、それを脅威と思わず、ただケイを危険と認識した。


「青年の方は、名前しか分かりませんでした。その実力さえも」

「貴様でも名前しか分からない………ケイ・クロヤは人間なのか?」

「はい。人間だと()()()()()


 その言葉で、さらにケイへの警戒は高まり、彼らの中で『危険人物』として認識された。


「ちょっといいかしら」


 一人の女が、会話に入ってくる。


「なんだ」

「そのハギって子だけど………強いわよ」


 女は鋭い口調で言う。

 普段の彼女を知る彼らの緊張感が上がる。


「彼女、一人で私の魔獣(ペット)全員を殺しちゃったもの。それにケイって子も、結構恐ろしい魔法の使い手よ…………」


 女の言葉に、一同は困惑する。

 彼らの中で女は一、二を争うほどの自信家だ。

 いつも弱音を吐かない姿は部下にも有名で、実は結構有名だったり憧れを抱かれたりしているが、本人の知ったことではない。


「………貴様の『魔獣』が殺られたのか?」

「ええ、お古の子だったから在庫処分にはなったけど………けど、十分強い子達だったのに。ね………」


 女の顔にも陰りが窺える。そうとう自信があったのだろう。

 だが、それ以上に『恐怖』している気も、彼らはしていた。


「………では、『ハギ・スカビオサ』と『ケイ・クロヤ』を最優先暗殺対象に決定する」

()()()までに?」

「そうだ。()()()までに始末しろ」

「居場所は?」


 一人が決定を下し、一人が報告者に聞く。

 報告者は少しため息をついて、上を指さす。


「……先ほどの叫び声……というか大声を上げたのがハギ・スカビオサ。きっとケイ・クロヤも近くにいると思われます」


 なんとも言えない雰囲気が満ちる。

 それでも、まだまだ彼らの雑談は続く。

更新しました。

次回は――長いです。本文が。

これ書いてる時には書ききっており、明日投稿の予定なのですが…………なんか四千文字いってるんですね。夢かな? 夢なのかな?……………現実でした。

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