第103話 まさか薬草採集がこんな事になるなんて………
「いやー、終わった終わった……………」
俺は安堵の息を吐きながら、採集に精を出す。
まあ、金って大事だよな。
薬草集めの大会で鍛えられた腕が勝手に採集するもんだから、なんか『やっている感』もなく、先ほどのようなハギの補佐をしてしまう。
それでも暇で暇でな…………。
そんな事を考えながら採集していると、俺の『察知』スキルに『何か』が引っかかった。
俺は『隠密』スキルを全て使いながらその場所へ移動する。
「だ……れか………たずけ………くれ………」
そこには瀕死な冒険者がいた。
外見から年齢を想像するが三十代前半だろうか? 冒険者ランクはAだから相当の猛者だとは思うが。
まあ結構鍛えている冒険者だとは思う。結構な実力者だとも。
俺は『隠密』を解き、彼の元に駆け寄る。
「おい。大丈夫か?」
冒険者が顔を上げる。
酷い有り様だった。
顔は原形が分からなくなる程に変形し、歯も数本しか残っていない。
体の方も、切り傷が多く見られる。
噛まれた後や粗雑な切り方は無いので、モンスターではなく人による仕業だろうと用意に想像がつく。
「お、おい………た、たすけてくれ」
それが最後の言葉だった。
俺は無言で魔法を使う。
魔法が、俺にこの冒険者の『過去』を見せてくる。
「――ん。わかった。お前さんの未練はきちんと俺が断ち切ってやる。だから、そのまま眠りな」
俺はもう一度魔法を発動する。
今度は火属性の『火葬』という魔法。
えげつない魔法だが、死体処理に使われる魔法として有名だ。
俺は『火葬』で残った骨を埋め、そこに様々な花の種を植える。
「まあ、何にも無いよりはましだろ?」
俺は花を『成長促進』を使って開花させ『不老』というの闇属性魔法と『輪廻転生』という光属性魔法をかける。
どちらも高難易度魔法だが、死者を。それも最悪な死に方をしちまった奴への俺なりの手向け。
俺は最後に一回拝んで、その場を後にする。
墓の周りには花が所狭しと咲いている。
「さあ、久しぶりじゃねぇか盗賊共………」
皆さん覚えてますか?
第一章のはじめにハギを捕らえていた盗賊団を………。
某精霊神に暗殺されてしまった盗賊団のことを………。
次回は彼らのお仲間vsケイになる予定です。