第1話 プロローグ
「──で? お前何回『使命』を果たさずに死ねば気がすむのワケ? 教えてみ? ん?」
俺、黒谷啓は神殿っぽい神々しさだけしかない真っ白な部屋で、女神サマっぽい人──っていうか、女神サマに怒られていた。
あ、女神サマって言ってもなんか銀の銅像から声が聞こえているだけだぜ? まれに実体? 本体っていうのかね? らしきモノも来るけど。
今回は銅像なのに威圧感が凄いなー。
いつもは温厚な人……神なのになー。
現実逃避もそこそこにして、真面目に言い訳考えますかね──んで『使命』を果たさず死んだ理由だっけ? なんでだろ。昔は忠実に従ってたけど……それに飽きたから? 自分でも分からん。ってか飽きたよこの話。何回目よ?
「あの……俺、なんで怒られているんですか? 理由を教えて頂けると嬉しいのですが……」
俺は不思議そうな顔をして、そんでなんか嫌らしい悪徳商人のように女神サマ(自称)に聞いてみた。
女神サマ(自称)は、ため息をつき言った。
「……私達が何回貴方を転生させたと思っているの?」
「ん~と…………50回くらい?」
俺は何回死んだか思いだしながら、女神サマ(自称)の問に答えた。
いや、数えてなかったから覚えてないけど。
そもそも数えている人いるの? 数えられるのは神様だけだろう。
ちなみに神様って言っても主に信仰されてるのは三柱だけだぞこの世界。
そして俺はこのヒト? にしか会ったことないんですが? 会社なの? この女神サマ部下なの? 上司連れてこいよ。
「ケイ……アンタそれ、本気で言ってる?」
「あれ? もしかしてもっと死んでた?」
俺が不思議そうにいうと、女神サマは呆れ顔になっていた。
何故だ? 俺は本当の事を――あ、早く答え教えてくれんかね?
「キミさぁ、本当に覚えてないの?」
「俺、過去は振り替えらない奴なんで」
「あぁ?」
どうやら、女神サマを怒らせてしまったようです。
すげー怖い。今の、マジで怖かった。外見銅像なのに……銅像なのに雰囲気が。
数千年生きている俺をビビらせるとは……まあ神様はもっと生きているからそうだよな。できるよな。
一瞬、悲鳴を上げそうになりながも、順調に女神サマの説教タイムが始まった。
ああ、ちなみに俺達もうこのやり取りを何千回? 何万? 何億? ……まあ結構やってるからもうなれたよ。
■■■■■
数日後……
女神サマの世界にきて数日が過ぎた。
どうでもいいことだけど、女神サマの世界で食事などは必要ないらしい。
いい世界だわー。永住したい。
説教は数日続いたりしたが、女神サマは怒るの諦めて何処かへ行っちまった。銅像が宙に浮いてどこかに……思い出すと中々に奇妙な光景だな。
蛇足だが「もうお前嫌だ。ガチで、もう本当に……」ってぶつぶつ言いながら消えてった。どこに消えて、次に何が起こるのかはわかるが、面倒だなぁ。
この部屋に戻ってきた時点でわかってはいたけど、あの女神サマはまた俺の事を「強制転生」させるっぽい。また人生やり直せとかもう嫌なんですけど。
あ、ちなみに俺の転生回数はもう99回いっていたんだって。もう百回は死んでるのな。更に十倍くらい死んだら仙人の領域に一歩くらい踏み入れられるんじゃないかなって。精神的に。
時間もわからずに思考に耽っていると、遂に女神サマが俺の前に現れる。
今回は実態だし、何かお疲れのようですが……どうしたのでしょうね? (すっとぼけ)
「お前をもう一度転生させるわ。すごーく疲れるけど、お前の意識改善のため転生させるわ(笑)」
おい、何だよその(笑)って。それに俺は至極真面目で一般常識のある人間であることを自負しているぞ。
っていうかなんか魔法唱え始めたぞ。あとこの魔法陣知ってるからな。『転生陣』じゃねぇか。
あの女神本気だ。てか俺を何度も何度も転生させてどうするつもりなん? ってかもう転生やめてよ……割とガチで飽きた。
「ああ、貴方が過去に習得したスキル、全て返すわ。もう、ここにくるんじゃないわよー、死ぬなよ~」
「え? は、ちょ――」
俺の意識はその言葉を聞いた瞬間、ツッコミを入れる事もできずに、闇に落ちていった。
2021.6/12 内容修正