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葛藤 ルーフェイア・シリーズ04  作者: こっこ
Chapter:01 誤解
9/32

Episode:09

◇Imad

 ロア先輩の「予感」は当たってた。

 おとなしくて引っ込み思案なのもあって、ルーフェイアのヤツは前から女子と馴染めねぇだけと思ってたけど、どうも違ったみてぇだ。

 つか、ここんとこもっとあからさまで、聞こえよがしにいろいろ言うヤツまでいるし。


 仕切ってんのは、シーモアのヤツだろう。スラムあがりのあいつは性格がキツいうえ、良くも悪くも統率力はある。

 ただ幸い、いまんとこ持ち物に手出されたりはしてないっぽい。むしろヤバいのは、クラスの雰囲気のほうだ。


 このクラスは女子は少なめだけど、そんでも数人はいる。これがツルむとすげぇうるせぇし、口じゃまずかなわねぇ。しかも中心にいるシーモアのヤツは、ケンカもハンパなく強かったりする。


 このせいでAクラスの男子連中も最近は、ルーフェイアに近づかなくなってた。シーモアたちにからまれたらヤバい、ってんだろう。

 ただ当のルーフェイアのほうは、まだ状況を理解してない。自分が簡単には馴染めないと思ってるから、そういうもんだとヘンなとこで納得してる。


「数学と理科、どうしよう……」

 ルーフェイアのヤツが心配そうに言う。テストの点が、この二つはこいつ、イマイチだった。

――あれで「どうしよう」とか言われたら、怒るヤツ山盛りだろうけど。

 そんでも当人に取っちゃ、大問題だ。


「おまえ、難しく考え過ぎなんだよ。単純に公式だけ当てはめてけって」

「だって……」 

 ちょっと視線落として、困りきった表情しやがる。


「ったくしょうがねぇな、教えてやるよ。移動すっぞ、自習室な」

「いいの?」

 ひさびさに、こいつの表情がほころんだ。


「いいって。つか、荷物取ってこいよ」

「うん」

 ルーフェイアが荷物を取りに、自分の席へ行く。シエラは成績順で席が決まるから、ホントならあいつは前のほうだけど、途中入学の関係でいまはいちばん後ろだ。


――って、なんだ?

 たむろってる女子のあいだを通り抜けるルーフェイアに、足出してるヤツがいる。どうも引っ掛けて、転ばせようって魂胆らしい。

 まぁやられてんのがルーフェイアだから、ほとんど無意識に避けちまって、意味ねぇんだけど。


 ただ状況は、俺が思ってたよりさらに悪りぃってことだ。

 気になってそのまんまルーフェイアのやること見てっと、こいつが机の上に手を伸ばした瞬間、かすかに空気がふるえた。

 けど、そんだけだ。つか空気がふるえたのだって、ほかの連中は気づいてねぇだろう。


 ルーフェイアのヤツが、教科書だの抱えて戻ってくる。

「おまえさ、机んとこ、なんかしてあんのか?」

「えっと……結界のこと?」

 よく訊いてみっとこいつ机だのなんだの、ともかく自分だけが使う場所ならそこらじゅうに、簡単な結界張ってるらしい。


「なんでそんな、面倒なマネすんだ?」

「え? 持ち物って、放置……しないでしょ?」

 なんか激しくズレた答えが返ってきやがった。

「盗まれたり、攻撃で壊されたら、困るし」

「ここで攻撃はねぇだろ……」

 危機管理って意味じゃ間違ってねぇけど、ちと行きすぎだ。


 けど、それを言うつもりはなかった。なんせ状況が状況だから、このまんまにしといたほうが、ぜったい被害が少ねぇはずだ。

 なるたけ手を出されねぇ状態を保って、そのあいだにどうにかする。自分でもモヤモヤすっけど、こんくらいしかテが思いつかない。



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