Episode:07
「これでだいじょぶ? 椅子遠くない?」
「だいじょぶです」
そんなやり取りを横目に、ほかのメンバーもテーブルに着く。
「イマド、そんなに……食べるの?」
同級生の昼食の量を見て、ルーフェイアが目を丸くした。おそらく二人前は、ゆうにあるだろう。
「ふつうだろ。てか、これじゃたぶん足りねーし」
「え……」
同年代の子をあまり知らない少女には、かなりのインパクトだったようだ。
「つか、お前が食わなすぎだって。そんなんで夕メシまで持つのかよ」
「イマド、お前とルーちゃんを同じにするなよ。かわいそうじゃないか」
すかさず外野が茶々を入れる。
「オマエ図体デカいから、そのぶん食うもんなー」
「るっせ」
軽快なやり取りのあいだで、少女は楽しそうだ。ロアが見るかぎり、ルーフェイアはこの男子たちとは、上手くやれている。
しゃべりながらの、昼食の時間が始まった。つまらない話でしらけてみんなから突っ込まれてみたり、おかわりをしに行ったりと、なかなかにぎやかだ。
「あー、オレ今学期のテスト、ヤバかったんだよな。マジ勉強しないと」
たあいない会話の中から、唐突に深刻なものが飛び出す。
「たいへんだな、頑張れよ」
イマドは他人事だ。たしか彼は入学してからずっと、学年のトップを独走している。だからテストなど、どうということもないのだろう。
「テスト……悪いと、ダメなの?」
ルーフェイアが、不思議そうな顔をした。
「あーそっか、ルーフェは知らないか」
学院へ来て日の浅いこの子に、ロアは説明する。
「こないだテストやったでしょ? あの成績の総合で、翌年のクラス分けが決まるんだよ」
この学院は全体的に、生徒の自主性を重んじる。だがそれは同時に、生徒たちに相応の責任も負わせるものだ。
勉強しろとは一言も言わないが、成績が落ちれば容赦なく降格する。規律も守れとは言わないが、破れば即ペナルティーが課される。
しかもこれらが積み重ねれば、強制退学だってあり得るのだ。だから、どの生徒も必死だった。
だがこの少女は、まだよく分からないようだ。
「クラス、分け……?」
きょとんとした表情で、首をかしげている。
「えーっと、これでダメだと、どう説明すればいいのかなぁ」
「先輩、放っといたってそのうち、イヤでも覚えますって」
「それもそうか」
この子が学院へ来てから、まだいくらも経っていないのだ。焦ることもないだろう。