Episode:06
「わわわ、ルーフェ泣かないで! ゴメン、ちゃんといっしょにご飯食べるよ!」
苛酷な環境から抜け出したばかりの少女は、まだかなり情緒不安定で、ちょっとしたことで泣き出すのだ。
――単に泣き虫の可能性もあるが。
どちらにせよ、このまま泣かせておくわけにはいかない。
「と、ともかくホラ、いっしょに食堂行こ」
慌てて手を引いて食堂へ向かおうとすると、一瞬ルーフェイアが、クラスメイトのほうに視線を向けた。
(なるほど)
さすがにこんどは、この子の望みがロアにも分かる。
「ほら、そこの3人! キミたちもこっち来て、いっしょにご飯食べなさい」
「へ? オレらっすか?」
そういうつもりはなかったのだろう、彼らが面食らう。
「オレら、食堂までいっしょに来ただけなんスけど……」
「こらこら、先輩の言うことはきかなきゃダメだろ。ルーちゃんとご飯食べられるなんて、うん、大賛成」
このあたりはいっしょにつるんでいても、温度差があるようだ。
「けどなぁ……」
今ひとつ煮え切らないクラスメイトの前で、ルーフェイアが悲しそうに視線を落とした。
―― 一撃必殺。
「あー分かった分かった、いっしょに食うから泣くなっての」
「そそ、ルーちゃんだいじょうぶ、心配しなくていいからね」
エレニアが、やれやれとため息をついた。
「まったく、みんなルーフェイアには弱いわよねぇ」
「そう言われてもさー」
なぜと問われたら困るのだが、この子を見ていると、守ってやらなければならない気がしてくるのだ。年より小柄で、性格も幼いせいかもしれない。
そんなルーフェイアを真ん中に、ぞろぞろと食堂へ移動する。
シエラの食事のメニューはシンプルだ。日替わりで朝は一種類、昼夜は二種類のセット物、あと飲み物がお茶など何種類か。ただおかわりは自由だし、味もけして悪くない。
何よりここに来る子の多くは、満足に食事もできなかった時期がある。そのせいもあって、タダでお腹いっぱい食べられればとりあえず十分、という子がほとんどだった。
「ルーフェはさっぱりセットだね」
「あ、はい」
選んでやり、そろえてやり、席を取ってやり、重そうなら代わりに持つ。孫に甘い祖父母もかくやというほどの、可愛がりぶり過保護ぶりだ。
「ルーちゃん良かったね、先輩にすごく可愛がってもらって」
「いや、なんつーか、可愛がりすぎだろ」
「そうよねぇ、私もちょっと心配で」
うしろでエレニアはじめ、一同のそんなつぶやきが聞こえたが、ロアは気にもしない。