Episode:05
◇Loa side
「ルーフェ遅いな、何してんのかな、教室まで見に行こうかな」
「落ち着きなさいよロア」
うろうろと歩き回る同級生を、エレニアがたしなめる。
午前のカリキュラムが終わった昼休み、広いはずの食堂はこの外から見える部分だけでも、かなり数の生徒たちでごった返していた。
「そもそもクラスの子と仲良くなって、私たちと食べなくなるなら、そのほうがいいって言ってたじゃない」
「それはそうなんだけどさ……」
そのあいだもロアは、しきりに低学年の校舎へと視線をめぐらせる。
「それにしても、変われば変わるものねぇ。あんなに後輩と相部屋になるの、嫌がってたのに」
「だってあのコ、カワイイんだよ」
ロアとルーフェイアはクラスはもちろん、学年も校舎も違うので、朝部屋を出ると夕方まで顔を合わせることがない。だが年度途中の入学では、何かと慣れずに困るだろうと、ロアはルーフェイアといっしょに昼食をとるようにしていた。
もちろん当の本人には、「友だちに誘われたらそっちを優先」と、きちんと言い渡してある。
だが引っ込み思案なルーフェイアは、まだそこまで行かないようだ。だいたい同じ時間に、いつもここへ来て、ロアたちといっしょに食べていた。
「あ、ほら、来たわよ」
エレニアが指差すほうを慌てて見ると、たしかにあの目立つ金髪があった。
「あら、今日はクラスの子といっしょみたいね」
「ほんとだ」
ただ、顔ぶれはロアも見知ったものだ。
「おとなしいのに男子と仲いいとか、ルーフェも面白いなぁ」
たしかあの子の話では、イマドという同じAクラスの男子に、シエラへ誘われたと言っていた。いっしょに居る中で、いちばん大柄の子がそうだ。
手を振ると、ルーフェイアが嬉しそうに早足になって、目の前まで来る。
「今日はみんなと来たんだね」
「はい」
にこにことうなずく――この子のこういう顔はそう多くない――少女に、ロアは少し考えてから言った。
「エライエライ。
そしたら今日は、ボクたちいないほうがイイね。ルーフェ、みんなとゆっくり食べておいで」
「え……」
そんなことを言われるとは思ってもみなかった、そういう表情だ。
「先輩、コイツ先輩とメシ食うって、ここまで来たんですよ?」
「けどせっかく友だちと来たんだよ、やっぱりここは、クラスメイトといっしょに食べなきゃ」
ルーフェイアがクラスの子と馴染めないのは、こうして自分がいっしょに昼食を食べているせいではないか、そんな気がしてならない。
と、エレニアにつつかれた。
「ちょっとロアってば」
「え? あ!」
やり取りが悪かったのだろう、ルーフェイアが下を向いて泣きそうになっている。