Episode:04
「ムカツクな〜。お遊びじゃないんだよね」
ぼそっとシーモアが言った。
「だよね」
思わず同意しちゃう。
あたしたちほとんどみんな、帰るとこもない。だから気合の入り方だってハンパじゃないんだから。
ちなみにあたしは両親がいない。八歳の時に死んじゃった……はず。
じっさいは、いったい何がどうなったのか説明してくれる大人がいなかったから、今だにわかんない。ただたぶん、自殺したんじゃないかって思ってる。
だってあたしが小さい頃は会社やっててけっこうお金があったけど、そのうちよく「お金がない」って言うようになったから。
ともかくある日突然両親が死んだって言われて、家を追い出されて、親戚のところへ連れてかれて。
でもそこ、どうやってもいいところじゃなくて。たまりかねてその家を抜け出して街をうろうろしてたとき、シーモアに会った。
彼女のほうはスラムの生まれで、あたしと会った頃にはしっかりストリートキッズしてた。
家出したあたしがどうにか路上生活できたのは、彼女のおかげ。同い年だけど、巡り巡ってこの学院へ来るまで、ずいぶんいろいろ面倒みてもらった。
我ながら、苦労してるかなって思う。けどこれあたしだけじゃなくって、学院に居る子って、だいたいそんな感じ。
でもあの子ったら、そんな雰囲気ない。いつもすっごく楽しそうにしてる。
きっと帰る家もあって両親もいて、お金にだって困ったことないんだろうな。
「なんか……バカにしてるよね」
「へぇ、ナティエスでもそう思うんだ?」
あたしがぽろっと言った言葉に、誰かが相槌をうった。
「でもさ、ほんとそうだよね。なんかあの子、チャラチャラしてるし」
「お嬢さんだから、しょうがないって?」
「でもさぁ、もうちょっと考えたっていいんじゃない?」
「そうそう。いっくらカワイくたって、あの性格じゃね」
みんな、おんなじことを思っているみたい。
「シカトしちゃう?」
「シカトって、いまだって似たようなもんじゃん」
「あ、そうか」
広がるクスクス笑い。
「そういえばこれ、ミルにも言っとく?」
誰かが言った。
「ミル? 放置でいいんじゃない? どうせあの子、メチャクチャだし」
「そっか」
名前の出たミルって子は、すっごい変わり者。悪い子じゃないんだけど、やること成すこととんでもなく常識外れで、周りを振り回す天才。
だからこういうコトには、さいしょっから人数に入れないほうがイイと思うし。
「世間知らずのお嬢さんには、思い知ってもらうさ。ここがどんなとこかっての」
シーモアの言葉に、みんなうなずいた。