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葛藤 ルーフェイア・シリーズ04  作者: こっこ
Chapter:04 真相
32/32

Episode:32

 ミルが見透かしたみたいに、また言う。

「どーでもいいじゃん、Bクラスなんて。どうせあの子たち、ルーフェイアにはもう関わらない、ってたもん」

「それはそうだけど……」

 でもたしかに、考えたってキリないかも。どうなるかも分かんないし。


「それにしてもルーフェイア、あんたいったい、どこでそんだけバトル覚えたんだい?」

 シーモアがいちばんの疑問を尋ねたら、ルーフェイアったら下向いた。あんまり、言いたくないことなのかも。

「あー、ルーフェってばね、少年兵あがりだからー」

「ミル、てめっ、何バラしてんだ!」


 イマドの矛先がミルに向いたとこみると、これホントみたい。まぁミルは気にもしないで、きゃぁきゃぁ言いながら逃げ回ってるけど。

「あ、でもでもね、それ以上はナイショだよー」

「当たり前だろバカっ!」

 狭い海岸をミルとイマドったら、二人で追いかけっこ。言ったら怒りそうだけど、子犬のじゃれあいみたい。


 なんかもう、ペース乱されっぱなしかな。

 おかげでなんだかぜんぶどうでもよくなっちゃって、ため息ついて、ルーフェイアに言ってみた。

「ルーフェイアって、どっかのお金持ちのお嬢さんで、遊びでここ来たと思ってたの」

 最初の誤解の出発点、どうみてもここだし。


「え……あたし、そんなじゃ……」

「あ、うん、今は分かる」

 こんなことだなんて、想像もしなかった。でも冷静に考えてみればたしかに、お嬢さんが遊びでとか、ありえないし。


「そのね、その太刀とか見てね、そうかなって。すごくいい物みたいだし。

――それ、どしたの? もらったの?」

 ちょっと気になるから訊いてみたら、ルーフェイアの表情が沈んで、目に涙が浮かんだ。

「兄さんの、形見……」

「え、あ、ごめっ! そういうつもりじゃなかったんだけど、そうなんだ……」

 悪いこと訊いちゃった。でもおかげで、何がどうなってるかはだいたい飲み込めたかも。


 要するにルーフェイアったら、少年兵上がりでお兄さんと前はいっしょで。でもそのお兄さんは亡くなっちゃって、ここへ来たってことみたい。

 本校へ直接来たのも、事情が事情だし、別に成績も悪くないから、ってことなんだと思う。いろいろきちんとしたもの持ってるのは、お兄さんが何か財産みたいの、残してくれてたのかも。たまにそういう子いるし。


 必死に涙拭いてるルーフェイアの前に立って、シーモアが言った。

「ともかく、悪かったよ。あたしらの思い違いで、いろいろさ」

 潔いな、って思った。

 シーモアはけっこう性格キツいけど、悪いと思えばちゃんと謝るし、ふだんはだいたい公平。だから彼女のこと、あたし好きだった。


「許しちゃもらえないかもだけどさ、でも、ごめん」

「あたしもゴメンね。もうヘンなこと言わないから」

 ルーフェイアが顔を上げる。

「みんな、許して、くれるの……?」

『いやそれ反対』

 思わずそこにいたみんなが、突っ込みいれちゃったり。


「こっちが謝ってるのに、なんでそうなるかな、あんたは」

「そうだよねぇ、ルーフェイアが悪いこと、したわけじゃないし」

「ごめん……」

 また泣きそうになるルーフェイア。すっごいこの子、泣き虫かも。


「まぁまぁまぁまぁ、ここは穏便に、ね?」

 ミルが意味不明なこと言い出して。

「誰も争ってねーだろ」

「あ、そぉ?

 ともかくさ、ルーフェもナティもシーモアも、なかなおり!」

 強引にあたしたち三人の手を取って、重ねあわせる。


「よし、仲直りの握手おっけー! ぜんぶばっちり!」

「これ、握手かなぁ……?」

「細かいことは気にしちゃダメー」

 ミルのペースに引きずられて、あたしとシーモアとルーフェイア、互いに顔を見合わせてつい笑った。


「ま、いっか。ちょっとヘンな気もするけど、これ以上めんどうだし」

「だね。これで終わりにしとこう。なんかあったら、ミルの責任ってことでいいじゃないか」

「えー!」

 ブーイングあった気がするけど、それは無視して。


「ヤバいな、暗くなってきた。減点食らったらマズいし、そろそろ引き上げよう」

「そだね。ルーフェイア、一緒にいこ」

「――うん」

 あたしたち、みんなで歩き出した。


◇お知らせ◇

5/21より、第5作「温もり」を連載中です。

このサイトで検索するか、筆者サイトからお入りください。今までと同じく“夜8時過ぎ”の更新です。

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