Episode:30
◇Nattiess
信じられなかった。
イマドとかといっしょに、危ないって知らせるために、シーモアたちを追いかけて。
途中でイマドがいきなりスピード上げて、あたしも慌ててくっついてって、崖を降りたの。けど降りきらないうちに、洞窟から飛竜が出てきちゃって、修羅場になった。
なのに……倒されたのは、飛竜のほうだなんて。
たしかに連係プレーで、ルーフェイアったら後ろからの不意打ちだったけど、それでも。
あの魔法、たしかふつうに覚えられるやつの中じゃ、最上級クラス。しかも、威力だってハンパじゃない。
飛竜が倒れてから少しして、やっとルーフェイアが緊張を解いた。
――寂しい横顔。
誇らしげとか、そういうのはまったくナシ。むしろ、悲しそう。自分のしたこと、嫌がってるみたいにも見える。
だからなんとなく、分かった気がした。
ルーフェイアがここへ来た理由、たぶん……これだよね。
その辺のMeSなんかじゃ、手に負えない。それどころか、このシエラの本校でだって、ずば抜けちゃってる。
あたしから見たら、それってすごく羨ましいけど。でもルーフェイアにとってはそれ、すごく嫌なことみたいだった。
「ルーフェイア、あのね……」
崖から降りて、なんて言っていいかわかんなくて、でも話しかけようとして。けど、できなかった。
「このバカっ!!」
いきなりイマドの怒鳴り声。ルーフェイアの胸倉掴んでる。
「な、なに?」
「また平気で、ひとつ間違えば死ぬようなマネしやがって!!」
すごく怒ってるし。まぁ、分からないでもないけど。
「でも! それに、倒さなきゃみんな、死んじゃう」
「そういう問題じゃねえだろうがっ!!」
あたしとシーモア、顔を見合わて。だっていきなり、痴話喧嘩見せられるとは思ってなかったし。
「ねぇ、止めたほうがいいのかな?」
「多分そのほうが、いいんだろうけどさ……」
シーモアも呆れ顔。
「放してっ!!」
ルーフェイアも、たしかに嫌がってるんだけど。
でもあの子が本気なら、イマドあっさり倒されちゃってそうだし。それしないんだから、手加減してるんだろうな、なんても思うし。
そうは言ってもこのまま放っておくわけにもいかないから、とりあえず2人を引き離してみた。
でも剥がしてみたら、怒ってたのはイマドだけみたい。