Episode:28
「嘘言ってんじゃないよ。あんたが持ってるものなんて、どれも高級品ばっかじゃないか。
――特にその太刀!」
「え?」
また意味が分からない。
「だって、そうじゃなきゃ……」
きちんとした武器や装備を携行しなかったら、生き延びることさえ怪しくなる。自分の装備に責任を持つのは、初歩の初歩だ。
けどシーモアの考え方は、少し違うみたいだった。
「だからお嬢さんだってんだよ!!」
激昂した彼女が、あたしに手を伸ばしてくる。
そこから先は、考えるより早く身体が動いた。
身体を入れ替えてかわしながら、一瞬のちには、あたしはシーモアの首に太刀を押し付けてた。
動けなくなった彼女を見て、泣きたくなる。
「お願い、こういうの、やめて……。とっさだとあたし……殺しちゃうかも、しれない」
太刀を納めながら、やっとそれだけ言った。
泣かないように奥歯をかみ締めて、でもやっぱり、涙がこぼれる。
「あんた、いったい……」
シーモアの問いに答えようとしたけど、上手く声が出せなくて、答えられない。
そのとき、感じた。
思考回路が切り替わる。五感が研ぎ澄まされる。
ひさびさの、『戦う』感覚。
「あんたさ――」
言いかけたシーモアを手で制す。
洞窟の奥から、気配の質が変わったのを感じる。
――逃げ場は?
ダメだ、海と崖とに囲まれてて、行き場がない。
唯一の逃げ道は上だけど……あの足場を伝って登るのに、どれだけの時間がかかるか。
なら、方法はひとつ。
そのとき洞窟の奥から、くぐもった音が響いた。
「な……」
中から、“それ”が姿を現す。
「飛竜……!」
彼女の様子に、今初めて敵の正体を知ったのだと気がつく。
――これが、ふつうの同い年の子なんだ。
そんな驚きを感じながら、出てきた飛竜を睨んだ。
竜にしては、かなり小さい。それにたしかこれは、知能もそんなに高くない。でも人間を捕食する、獰猛な種類のはずだった。
よく見ると、翼が折れてる。だからこの洞窟で、治るまで潜んでるつもりだったんだろう。しばらく食べてないみたいで、気が立ってる感じだった。
それを知らずに縄張りに入り込んだあたしたちも、迂闊だったとは思うけど――エサにはなりたくない。
浮き足立ったシーモアに、言う。
「先に、戻って」
「なんだって?」
彼女から返ってきたのは同意じゃなくて、疑問だった。
「だから……今のうちに、逃げて」
「冗談言うんじゃない、あたしだって戦えるよ!」
「バカ言わないで!」
思わず言い返す。状況が分からないにもホドがある。