Episode:26
「なんでいきなりそうなるんだ!」
「だって。あのおねえちゃんといると、たのしそうだもん。コイビトでしょ?」
とんでもないガキだ。
「だから、別にそういうワケじゃなくてな……」
「うそだー」
きゃっきゃっと騒ぎながら、空になった皿を持ってリティーナが駆けてく。
そのリティーナが、窓の外を見ながら立ち止まった。
「あ、きれいなおねえちゃんだ」
「え?」
コイツがそう呼ぶのは、ルーフェイアだけだ。
「どこだ?」
「ほら、あそこー!」
ちいさな手で指差すほうを見ると、たしかにあの金髪姿があった。思ってた時間より、だいぶ早い。
どっちにしてもこれから、シーモアのヤツと会う可能性が高かった。
「リティーナ悪りぃ、アーマルとヴィオレイ来たら、俺がルーフェイアのとこ行ったってくれ」
「ルーフェイア……?」
「『きれいなおねえちゃん』のことだ」
「あ、うん、わかった!」
リティーナに伝言頼んで、部屋を飛び出す。
たしか奥のほうへ行ったから、考えられる場所ってぇと……。
だいたいの見当つけて向かうと、ナティエスの姿が視界に飛び込んできた。
けど、ルーフェイアとシーモアはいない。校舎から出てくる間に、どっか移動されちまったっぽい。
「おい、ナティエス! ルーフェイアとシーモアどこだ」
「あれ、イマド?」
危機感ゼロの表情だ。
「どこだって訊いてんだよ」
「それ、あたしもよく訊いてなくて。でも、たしか“秘密の場所”って」
その一言で場所が分かった。
「あそこ行ったのか。ナティエス、行くぞ」
「はーい、ミルちゃんも行きまーす」
予想もしなかった声がとつぜん聞こえて、頭っから冷水ぶっ掛けられた気分になる。
「ミル……てめぇどっから湧いた」
「んー、どこだろー?」
会話が成り立たねぇし。
「あれ、行かないのー?」
「おまえも来んのかよ……」
「うん♪」
行く場所はもともと安全とはいえねぇけど、最悪の場所にランクアップした気がしてくる。
「てかさ、二人とも、準備だいじょぶー? なんか危険な魔獣が来ちゃったからって、訓練施設ってば閉鎖だよ?
そこ行くんだから、用意はちゃんとしないとねー」
ミルがすげー楽しそうに、さらっと言った物騒な話に、思わずナティエスと顔を見合わせる。
「ナティエス、おまえ、武器ちゃんとあるな?」
「うん。イマドも平気?」
「ああ」
互いにうなずいてから俺ら二人+一人、その“秘密の場所”へ続く道へ、足を踏み入れた。